49 / 155
第一章
絶叫説教
しおりを挟む
サトはカウンターの椅子に縮こまって座っていた。
いや、座らされていたと言うほどが正しいだろう。
自身の前に仁王立ちする美女の威圧感でサトは動けなくなっていたのだから。
「まったく! こんな若くて可愛い娘を見て『お婆ちゃん』ですって!? 貴方! そんなデリカシーのない事でどうするんですかっ!」
「いや、その……すいません……」
説教はループし、その度にサトの謝罪もループしていた。
絶世の美女がすぐ側にいる事は男としては嬉しい限りだが、しかし説教となると話は別である。
サトには怒られて喜ぶ趣味はないし、どちらかと言えば怒られるのが好きではなかった。
そんな彼に救いの手を差し伸べるのはいつも嗄れた声の持ち主だった。
「お嬢さんや。そのくらいにしといてやってくれんかのぅ。仮にも貴女の呪いを解いたのは此奴じゃ。それを加味してもらえんか?」
「あっ……そ、そうですね。つい、カッとなってしまって、失礼しました。その……助けていただいてありがとうございます」
ロンメルの仲裁で我を取り戻したのか、美女は一歩下がってから深々とサトに礼をした。
その不自然なほどの優雅な様は、先程まで怒られて萎んでいたサトすらも魅了した。
「…………」
「これ、サトや。何をボケッとしておる。お前さんが謝罪を受け入れねば、お嬢さんは頭を上げられんじゃないか」
「ハッ! す、すいません! あまりにも綺麗で少し見惚れてました。謝罪を受け入れます。どうかお顔をあげてください」
美女はスッと頭を上げるとその美貌に相応しい微笑をたたえた。
「ありがとうございます。恩人に対して叱責するなど、本当に申し訳ありませんでした。私の名はエレンと申します。恩人に対して真名を名乗らぬ無作法を重ねてお詫び致します」
「真名……ですか?」
「真名とは魔族の魂の名前じゃ。それを知る事はその魔族を支配する事を意味するのじゃよ……絶対に口に出すな」
ロンメルは最後の言葉は小声で話した。
それはサトが鑑定により既に真名を知っている事を悟られぬためである。
例え真名を知ろうともサトがエレンに対して何の命令をしない限り、その効果は発動しない。
だから知らぬフリをしろとのロンメルの忠告である。
「本当に申し訳ありません。本来であれば貴方様の生が終えるまでこの御恩に報いて当然なのですが、暫しの猶予をいただきたいのです。私に呪いをかけた男に復讐するまで」
「ふ、復讐って……」
「私に呪いをかけた男は遠くジラノフ帝国の宮廷魔術師の1人です。もう既にこの世の者ではないかもしれませんが、必ずや奴の正体を暴き、魂に永劫の呪いをかけてやるのです!」
エレンの抑えきれない怒りにサトは気圧された。
そして気圧された心はサトの意識を緩ませ、余計な事を口にさせた。
「ネストログナが死んでいても呪いをかけられるものなのですか?」
「えっ? な、何故貴方がその名前を……」
「あっ……」
ロンメル商店内にまた穏やかならざる空気が流れ始めた。
いや、座らされていたと言うほどが正しいだろう。
自身の前に仁王立ちする美女の威圧感でサトは動けなくなっていたのだから。
「まったく! こんな若くて可愛い娘を見て『お婆ちゃん』ですって!? 貴方! そんなデリカシーのない事でどうするんですかっ!」
「いや、その……すいません……」
説教はループし、その度にサトの謝罪もループしていた。
絶世の美女がすぐ側にいる事は男としては嬉しい限りだが、しかし説教となると話は別である。
サトには怒られて喜ぶ趣味はないし、どちらかと言えば怒られるのが好きではなかった。
そんな彼に救いの手を差し伸べるのはいつも嗄れた声の持ち主だった。
「お嬢さんや。そのくらいにしといてやってくれんかのぅ。仮にも貴女の呪いを解いたのは此奴じゃ。それを加味してもらえんか?」
「あっ……そ、そうですね。つい、カッとなってしまって、失礼しました。その……助けていただいてありがとうございます」
ロンメルの仲裁で我を取り戻したのか、美女は一歩下がってから深々とサトに礼をした。
その不自然なほどの優雅な様は、先程まで怒られて萎んでいたサトすらも魅了した。
「…………」
「これ、サトや。何をボケッとしておる。お前さんが謝罪を受け入れねば、お嬢さんは頭を上げられんじゃないか」
「ハッ! す、すいません! あまりにも綺麗で少し見惚れてました。謝罪を受け入れます。どうかお顔をあげてください」
美女はスッと頭を上げるとその美貌に相応しい微笑をたたえた。
「ありがとうございます。恩人に対して叱責するなど、本当に申し訳ありませんでした。私の名はエレンと申します。恩人に対して真名を名乗らぬ無作法を重ねてお詫び致します」
「真名……ですか?」
「真名とは魔族の魂の名前じゃ。それを知る事はその魔族を支配する事を意味するのじゃよ……絶対に口に出すな」
ロンメルは最後の言葉は小声で話した。
それはサトが鑑定により既に真名を知っている事を悟られぬためである。
例え真名を知ろうともサトがエレンに対して何の命令をしない限り、その効果は発動しない。
だから知らぬフリをしろとのロンメルの忠告である。
「本当に申し訳ありません。本来であれば貴方様の生が終えるまでこの御恩に報いて当然なのですが、暫しの猶予をいただきたいのです。私に呪いをかけた男に復讐するまで」
「ふ、復讐って……」
「私に呪いをかけた男は遠くジラノフ帝国の宮廷魔術師の1人です。もう既にこの世の者ではないかもしれませんが、必ずや奴の正体を暴き、魂に永劫の呪いをかけてやるのです!」
エレンの抑えきれない怒りにサトは気圧された。
そして気圧された心はサトの意識を緩ませ、余計な事を口にさせた。
「ネストログナが死んでいても呪いをかけられるものなのですか?」
「えっ? な、何故貴方がその名前を……」
「あっ……」
ロンメル商店内にまた穏やかならざる空気が流れ始めた。
19
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
異世界転移! 幼女の女神が世界を救う!?
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
アイは鮎川 愛って言うの
お父さんとお母さんがアイを置いて、何処かに行ってしまったの。
真っ白なお人形さんがお父さん、お母さんがいるって言ったからついていったの。
気付いたら知らない所にいたの。
とてもこまったの。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる