鑑定能力で恩を返す

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第一章

ダンジョン侵入

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 ミネルバァの誘いを受けてから三日後、8人の男女がダンジョンの前に立っていた。

「よく集まってくれたな。礼を言う」

「構わないですよ。アルヴォード伯。俺達も仕事としてここに来ているんですからね」

「うむ。公務だからな。きっちり依頼料を払ってやる。だからサト、そんな顔をするな」

 ミネルバァの視線の先にどんよりとした顔をしたサトがいた。
 市で手に入れた装備を纏い、格好だけなら一流の出立であったが、残念ながら中身が伴っていなかった。

「ううぅ……今からでも帰りたいんですけど」

「そうはいかん。お前の鑑定眼はダンジョンでは役に立つのだ。手に入れた品は余程のものでない限り持ち帰って構わんから頼んだぞ」

 そう言われてもサトのやる気は出てこなかった。
 相変わらずの青ざめた顔をしている。
 そこにヘンリーが声をかけてこようとした。

「サト、そんなに心配しなくてもだいじょ……ぐへっ!」

 突き飛ばされたヘンリーが地面を転がっていく。

「旦那様! 大丈夫にゃよ! 私が側にいてあげるにゃ!」

「サト様、何も心配はごさいません。私が必ずお守りしますから」

 アメリアとエレンが満面の笑みを浮かべながらサトに寄り添う。
 サトは困惑しながらも愛想笑いを返すしか無かった。

「アメリアさんもエレンさんもそれぐらいにしておいた方がええぞ。ダンジョン内でこんな事をしておったら命が幾つあっても足りんわい」

 ロンメルがやや憮然とした顔で2人を嗜める。
 ダンジョンには素材や宝物が眠っているが、罠や魔物が跋扈する危険地帯でもある。
 一瞬の油断がパーティーの全滅にも繋がりかねない。
 元ハンターのロンメルからすれば行楽気分のアメリアとエレンの行動は感心できなかった。
 その言葉にアメリアとエレンは項垂れ、サトから離れる。

「うにゃ……」

「も、申し訳ありません。ロンメル様……」

「わかればええ。ミネルバァ様、隊列はどうなさいますかな?」

「そうだな。ジュリアンとロンメルの意見を聞こう。私はダンジョンには不慣れだからな」

 暫し思案をめぐられたミネルバァだったが、ここは経験者の意見を聞くことにした。
 それにジュリアンが答える。

「では、先頭は俺とアメリアさん、後ろはオーバンとエレンさん。真ん中のヘンリーとロンメルさんがサトを挟むような形で行こう。サトは鑑定の際には必ずロンメルさんと行動を共にしてくれ」

「ふむ、的確じゃな。それで行くとしよう。それと今回の行動目的じゃが、ダンジョン内を根城にする犯罪者の拿捕、もしくは討伐。それと魔物の出現状況と危険な魔物がいないかの調査、でよろしいですかな?」

「それでいい。ダンジョン改の期間は3日から5日、最大でも7日以内に戻ることとなっている。これを超えると公都警備部隊がダンジョンを閉鎖してしまうからな。では、行くぞ!」

 8人の男女は隊列を組んで内部に侵入していった。
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