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第一章
褒美は何がいい?
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サトは周りをキョロキョロしないように意識していたが、それでも視線は彷徨っていた。
自分が置かれている状況が全く理解できないからだ。
会社勤めしていた時の大会議室、それより大きな部屋の中で豪華であり高価なソファに座っている。
それだけはわかっていた。
壁に掛けられた絵画や棚に置かれた調度品の数々がサトに無言のプレッシャーを与えるように厳かな気配を放っていた。
サトは商売柄、鑑定してみようかと思ったがそれは止めた。
下手に価値を知ってしまうと鑑定能力を持っていることがバレる恐れがあるからだ。
「サトとやら、改めて礼を言う。大義であったな」
シュタイエール公爵の口調は尊大なものだったが、本当の大物だからか、嫌な感じはしなかった。
サトの脳裏に勤めていた頃の嫌なやつの顔が浮かぶ。
立場が上の者には阿ねて、下の者には偉そうにする小物上司。
それと比べると本当の大物とはどういうものかよくわかった。
「も、勿体無いお言葉です。私は臣民として当然の事をしたまででして」
「そうか。これからも頼むぞ」
「は、はいっ!」
まるで大会社の社長に出会った新卒社員のような感じだった。
「さて、では褒美は何がいい?」
「はっ? えっと、それは……」
公爵の唐突な申し出にサトは戸惑いを隠せず、つい素で返してしまったが、公爵は気にした様子もなかった。
「あの指輪は私の息子が特別に作らせた物でな。世界に一つしかない物だ。それ故に値段以上に価値がある。君はそれを盗賊から取り戻してくれたのだから礼をせぬ訳にはいかん」
褒美をもらえる事はありがたい事だったし、断る理由もない。
だが、サトには困った事がある。
何を貰えばいいかわからないのだ。
金銭にすればどれくらいが妥当なのか、品物であれば何がいいのか。
つまり相場がわからないのである。
相手は公爵の地位にある大貴族である。
下手な要求をすれば不敬となり、その結果として褒美ではなく、罰を受ける可能性すらある。
しかもサトは商人として生活しているから、物の価値を知らないと言うわけにはいかない。
言えばロンメル商店の株を下げる事になるからだ。
高く見積もれば傲慢、安く見積もれば軽視となる。
貴族に対する作法を知らないサトに取ってはかなりの問題である。
「どうした? 遠慮はいらん。好きに言うがいい」
公爵の優しい言葉がサトには恐怖でしかなかった。
自分が置かれている状況が全く理解できないからだ。
会社勤めしていた時の大会議室、それより大きな部屋の中で豪華であり高価なソファに座っている。
それだけはわかっていた。
壁に掛けられた絵画や棚に置かれた調度品の数々がサトに無言のプレッシャーを与えるように厳かな気配を放っていた。
サトは商売柄、鑑定してみようかと思ったがそれは止めた。
下手に価値を知ってしまうと鑑定能力を持っていることがバレる恐れがあるからだ。
「サトとやら、改めて礼を言う。大義であったな」
シュタイエール公爵の口調は尊大なものだったが、本当の大物だからか、嫌な感じはしなかった。
サトの脳裏に勤めていた頃の嫌なやつの顔が浮かぶ。
立場が上の者には阿ねて、下の者には偉そうにする小物上司。
それと比べると本当の大物とはどういうものかよくわかった。
「も、勿体無いお言葉です。私は臣民として当然の事をしたまででして」
「そうか。これからも頼むぞ」
「は、はいっ!」
まるで大会社の社長に出会った新卒社員のような感じだった。
「さて、では褒美は何がいい?」
「はっ? えっと、それは……」
公爵の唐突な申し出にサトは戸惑いを隠せず、つい素で返してしまったが、公爵は気にした様子もなかった。
「あの指輪は私の息子が特別に作らせた物でな。世界に一つしかない物だ。それ故に値段以上に価値がある。君はそれを盗賊から取り戻してくれたのだから礼をせぬ訳にはいかん」
褒美をもらえる事はありがたい事だったし、断る理由もない。
だが、サトには困った事がある。
何を貰えばいいかわからないのだ。
金銭にすればどれくらいが妥当なのか、品物であれば何がいいのか。
つまり相場がわからないのである。
相手は公爵の地位にある大貴族である。
下手な要求をすれば不敬となり、その結果として褒美ではなく、罰を受ける可能性すらある。
しかもサトは商人として生活しているから、物の価値を知らないと言うわけにはいかない。
言えばロンメル商店の株を下げる事になるからだ。
高く見積もれば傲慢、安く見積もれば軽視となる。
貴族に対する作法を知らないサトに取ってはかなりの問題である。
「どうした? 遠慮はいらん。好きに言うがいい」
公爵の優しい言葉がサトには恐怖でしかなかった。
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