鑑定能力で恩を返す

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第一章

試験

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 突然のオリーヴィアの捕らえる発言にその場は凍りついていた。
 全員が動揺する中でもっとも慌てていたのはサトではなく、リハルトだった。

「オリーヴィア! なんて失礼な事を言うんだっ! サト殿、エレン殿。妹が申し訳ない!」

「お兄様。謝る必要はありませんわ。だって、当然のことですもの」

 慌てて謝る兄を尻目に妹は強気の姿勢を崩さず、サトとエレンをジッと睨んだ。

「商人なんて所詮は金儲けしか頭にない連中ですわ。今日だってどれだけ騙し取ろうとするか判ったものではありません。それに王宮鑑定士ならともかく、平民の鑑定士なんて信用できませんわ」

「やめないか! オリーヴィア! サト殿はシュタイエール公爵閣下とアルヴォード伯爵家のカミル様の推薦された方だ! それにサト殿は名誉騎士で、ただの平民じゃない!」

「公爵様だって失敗はありますわ。それは陛下であっても同じこと。誰が推薦しようと私は私の目で見たものしか信用出来ませんわ」

 オリーヴィアは自信たっぷりに言ったが、今の発言はかなり危険なものであった。
 今の発言が公になされたもので、万が一にも王宮に届けば、不敬罪に問われてもおかしくない。
 リハルトは全身の血の気が引くのを感じていた。

「オリーヴィア! 今の発言を撤回しろ! 今のは……」

「ちゃんと弁えていますわ。それに我が家には告げ口する人すらもういませんもの……」

 オリーヴィアはスッと辺りを見回した。
 マイヤーハイム家は伯爵家であり、屋敷もそれなり大きい。
 しかし、それに比して人の気配は少なく、この場にいる者たちが黙れば、不気味なほど静寂が広がった。

「オリーヴィア……」

「……お兄様。私、サリーナから美術品や骨董品について学んだ事がありますの」

「サリーナって、家庭教師のかい?」

家庭教師ですわ。まぁ、今ではどうでもいいことですけど。私だって公爵様やカミル様を頭ごなしに否定する気はありませんの。だから、この者達を試験テストさせてください」

 オリーヴィアはサトの眼を見つめながら言った。

試験テスト?」

「そうですわ。サト、でしたわね? あそこにある絵画、あれが誰の作品で、どれくらいの価値があるかわかるかしら?」

 オリーヴィアの指差す先には壁に掛けられた一枚の絵画があった。
 鎧を纏った2人の男が描かれていた。

「私、あの絵画についてはとても詳しいんですの。さぁ、当ててごらんなさい。名誉騎士サト。そうね、ヒントくらいは……」

「《友との別れ》。今から167年前にディアンジェロによって描かれた物ですが、ディアンジェロの突然の死によって未完成となっていました。それをディアンジェロの死から3年後、弟子のマルセロが完成させた作品で、ディアンジェロ派唯一の師弟合作としてかなり価値の高いものです。今でしたら相場は6000万くらいですね」

 サトの言葉にオリーヴィアは唖然とし、言葉を失った。
 
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