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第二章
絶叫二重奏
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「うーん、これなら……この値段でどうかな?」
サトは指で数字を表して目の前の男に見せた。
「おっ! 本当にその値段でいいのか? 助かるぜ! 勿論売るぞ」
「毎度あり」
サトは男に何枚かの硬貨を支払い、男はそれを受け取ると笑みを浮かべながら帰っていった。
一連のやりとりを横で見ていたエレンの表情は暗かった。
「サト様……その……よろしいかったのですか? 少し高い値段だったのではありませんか?」
エレンは表情を曇らせながらカウンターの上の品物に視線を落とした。
痩せた草に何かの割れた角、どす黒い粉の入った袋に、何かの毛皮。
およそまともな品は見つからなかった。
「大丈夫だよ。さっきの人もロクな物はないって言ってたけど、適正価格で買い取ったからね」
「そうなんですか? でも……」
サトの言葉でもエレンの不安そうな表情は晴れなかった。
そこに別の女性の声が入ってくる。
「ふーん、やっぱり鑑定能力って便利なのね。これの価値を見抜くなんて流石ね」
「……お母さん、本当にこれがなんなのかわかるの?」
エレンはリサを軽く疑いの目で見ながらそう言った。
「人をそんな目で見るもんじゃないわよ。まぁ、薬学の知識がないと何の価値も見出せないでしょうから無理もないでしょうけどね」
「薬学? これって薬なの?」
「リサさんはご存知でしたか。その通り、ここにある物は全部薬の材料になるんだよ」
サトはリサを尊敬の念を込めた目で見ながら言った。
リサはにっこり笑ってサトの側に寄ろうとするが、エレンが間に入って阻止した。
「サト様。これは何の草なんですか?」
「えっ? あ、ああ……これは《冷消夏草》を乾燥させた物だよ。熱冷ましの材料になるんだ。こっちの黒い粉は《黒色蜥蜴の粉末》。結構珍しい物でね、《火耐性魔法薬》の主原料なんだよ。火属性の魔物と戦う時の必須アイテムだね」
「そ、そんな貴重な物なんですか? 私にはそんな凄いものには見えないんですが……」
「だろうね。ハンターは特にだけど、どうしても『新鮮な物=良い物』ってイメージがあるから乾燥したものって良いイメージがないんだよ。でも、魔法薬の原料は乾燥した物を使う事が多いんだよ」
「そうそう。ちなみにこの角は『八枝白鹿》の角よ。警戒心が強くて、すぐに姿をくらませる滅多に討伐されない希少な魔物の角なの。これだけでもさっき払ったお金の10倍は価値があるの。サトちゃんったら、商売上手なんだから!」
そう言ってサトの頬を指で突つくリサ。
妖艶な美女にサトの鼻の下が少し伸びたのをエレンは見逃さなかった。
エレンは最後に残っていた何かの皮を握ってサトに突き出した。
「サト様……この毛皮は何の毛皮なんでしょう? 色気も知識も足りない私に教えていただけませんか?」
「い、いや……別に俺は……それにそれはオマケで引き取っただけの《道草鼠》の皮だから価値はなくて……綺麗な物じゃないから素手で掴まない方が……」
「それ、魔物の死骸とか排泄物を食べるやつだから皮でも汚いわよ。エレンちゃんったら、ばっちい~」
サトとリサが後退り、鼻につく悪臭が自身の顔に漂ってくると、エレンの目尻に涙が浮かんできた。
「サト様のばかぁあああああああ!」
エレンの魂の叫び声が響き渡った時、店の扉が勢いよく開いた。
「旦那様~、貴方のアメリアちゃんがやって来ましたよぉ! ……って、うぉおおおおおお! また新しい女がいるにゃあああああああああ!」
サトは指で数字を表して目の前の男に見せた。
「おっ! 本当にその値段でいいのか? 助かるぜ! 勿論売るぞ」
「毎度あり」
サトは男に何枚かの硬貨を支払い、男はそれを受け取ると笑みを浮かべながら帰っていった。
一連のやりとりを横で見ていたエレンの表情は暗かった。
「サト様……その……よろしいかったのですか? 少し高い値段だったのではありませんか?」
エレンは表情を曇らせながらカウンターの上の品物に視線を落とした。
痩せた草に何かの割れた角、どす黒い粉の入った袋に、何かの毛皮。
およそまともな品は見つからなかった。
「大丈夫だよ。さっきの人もロクな物はないって言ってたけど、適正価格で買い取ったからね」
「そうなんですか? でも……」
サトの言葉でもエレンの不安そうな表情は晴れなかった。
そこに別の女性の声が入ってくる。
「ふーん、やっぱり鑑定能力って便利なのね。これの価値を見抜くなんて流石ね」
「……お母さん、本当にこれがなんなのかわかるの?」
エレンはリサを軽く疑いの目で見ながらそう言った。
「人をそんな目で見るもんじゃないわよ。まぁ、薬学の知識がないと何の価値も見出せないでしょうから無理もないでしょうけどね」
「薬学? これって薬なの?」
「リサさんはご存知でしたか。その通り、ここにある物は全部薬の材料になるんだよ」
サトはリサを尊敬の念を込めた目で見ながら言った。
リサはにっこり笑ってサトの側に寄ろうとするが、エレンが間に入って阻止した。
「サト様。これは何の草なんですか?」
「えっ? あ、ああ……これは《冷消夏草》を乾燥させた物だよ。熱冷ましの材料になるんだ。こっちの黒い粉は《黒色蜥蜴の粉末》。結構珍しい物でね、《火耐性魔法薬》の主原料なんだよ。火属性の魔物と戦う時の必須アイテムだね」
「そ、そんな貴重な物なんですか? 私にはそんな凄いものには見えないんですが……」
「だろうね。ハンターは特にだけど、どうしても『新鮮な物=良い物』ってイメージがあるから乾燥したものって良いイメージがないんだよ。でも、魔法薬の原料は乾燥した物を使う事が多いんだよ」
「そうそう。ちなみにこの角は『八枝白鹿》の角よ。警戒心が強くて、すぐに姿をくらませる滅多に討伐されない希少な魔物の角なの。これだけでもさっき払ったお金の10倍は価値があるの。サトちゃんったら、商売上手なんだから!」
そう言ってサトの頬を指で突つくリサ。
妖艶な美女にサトの鼻の下が少し伸びたのをエレンは見逃さなかった。
エレンは最後に残っていた何かの皮を握ってサトに突き出した。
「サト様……この毛皮は何の毛皮なんでしょう? 色気も知識も足りない私に教えていただけませんか?」
「い、いや……別に俺は……それにそれはオマケで引き取っただけの《道草鼠》の皮だから価値はなくて……綺麗な物じゃないから素手で掴まない方が……」
「それ、魔物の死骸とか排泄物を食べるやつだから皮でも汚いわよ。エレンちゃんったら、ばっちい~」
サトとリサが後退り、鼻につく悪臭が自身の顔に漂ってくると、エレンの目尻に涙が浮かんできた。
「サト様のばかぁあああああああ!」
エレンの魂の叫び声が響き渡った時、店の扉が勢いよく開いた。
「旦那様~、貴方のアメリアちゃんがやって来ましたよぉ! ……って、うぉおおおおおお! また新しい女がいるにゃあああああああああ!」
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