鑑定能力で恩を返す

KBT

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第二章

使いどころ

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「おおおおおっ! な、なんとっ!? こ、これは夢か……」

 翌日に再び店を訪れたルドルフは剣を見て驚きの声を上げた。
 そこには前日に預けていたボロボロの剣が新品と見間違うほどの輝きを放っていた。

「自分に合う剣との事でしたので、使い慣れた剣が一番かと思いまして、勝手ながら修復させていただきました」

「いやいや……あの状態の剣を修復とは……もしや其方は名のある名工か?」

「とんでもない。私はただの商店の一店員に過ぎません。ただ、剣をお渡しするに当たってルドルフ様に一つだけお願いがございます」

 嬉々として顔を少し曇らせて、ルドルフは真剣な顔になった。

「わかっておる。これだけの偉業には相応の対価が必要であろう。しかし、今は手元不如意でな。しばし、刻を……」

「いえ、対価は50万で結構です。私の願いとは剣の修復を私がした事を内密に願いたいと言うことです」

 ルドルフは言葉を詰まらせ、再び驚きの表情を見せた。

「……何故だ? これだけの偉業を成し遂げる技術があれば、其方の名声は世間に轟こう。地位も名誉も富も思いのままぞ?」

「私には不要ですね。私はこの店の一店員として働くのみ。地位も名誉も……富は少しで十分です。ですからどうか内密に」

 サトはルドルフに頭を下げて頼んだ。
 大恩あるロンメルに恩を返すためにロンメル商店を続けていく事がサトの願いであり、そこに地位と名誉は要らなかった。
 店を続けられる少し富に余裕があればそれで良いのだ。

「むぅ……なんと無欲な事か。やはり私の目に狂いはなかった……あい、わかった! 我が剣の事について、今後一切口外せぬ事を誓おう。爵位を無くしたとて、貴族の品位までは無くしておらぬ。ベーデガーの名に誓って約束しよう」

「あ、ありがとうございます!」

 ルドルフは金を払うと、代々伝わっていた名剣を持って店を後にした。
 50万でいいとサトは言ったが、結局ルドルフは100万を置いて帰った。
 
「約束は違えない。だから約束と言えるのだ」

 そう言ってルドルフはどうしても譲らなかったのだ、結局サトの方が折れて100万受け取り、代わりに幾つかの回復薬ポーションを渡した。

「義理堅いと言うか、なんと言うか……でも、あの人なら約束は守ってくれるだろう。やってみたけど、この《物質回復マテリアルリカバリー》は相当ヤバい魔法だからな」

 同じ材質の物があれば、物体状態を回復させる事が出来るとなれば武器や防具を直し放題。
 そうなれば武具を扱う店、鍛治職の仕事を奪いかねない。
 そうなれば武具関連の産業が荒廃する可能性がある。

「さすがにそれはマズいからなぁ……こいつはなるべく使わないようにしよう」

 サトはそう思いながら、便利な魔法も使いどころを間違えると大変な事になるとしみじみ思いながら、商品の手入れを始めた。
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