8 / 27
クリナ
しおりを挟む
コンコン
扉がノックされた。
ちょうどノウノのメンテナンスが終わったところだった。
ノウノはベッドから立ち上がり、扉を開けた。
扉の前に立っていたのは、栗みたいな髪の毛の少女だった。頭部が栗みたいになっているわけではない。あくまで、比喩である。髪の色も形も、栗みたいだった。目は草食動物みたいで可愛げがある。
「あ、あの……。さっきは、どうも」
と、栗頭はそう言うと、ペコリと頭を下げた。
さっき?
何のことだろうか、とノウノは困惑した。
あ、思い出した。たしか最初に蛇女に絡まれていた少女である。
「たしか株式会社エモーションのアバターだったっけ?」
「はい、そうです。さきほど絡まれているところを、助けていただいて、ありがとうございました」
と、少女はもう一度、頭を深く下げた。
「いや、べつに良いって」
助けようと思って蛇女とバトルしたわけじゃない。むしろ、バトルしたかったから、ちょうど良かったのだ。
「バトル見てました。とても恰好良かったです。フォローもしました!」
少女はまるで、憧れの対象を見るような目で見てくる。
自分も立派なVDOOLになったんだなぁ、という実感がわいてきた。
エダがノウノの膝小僧を突いてきた。ディスプレイに文字が表示されている。「株式会社エモーションとは、コネを作っておきたい。フォロバしておいたらどうじゃ」とのことだった。
「フォロバしておくわ」
と、エダの指示通り、ノウノのほうからも、エダのアカウントをフォローしておいた。
株式会社エモーションとのつながりも大事だが、これからの学園生活において、友人のひとりぐらい作っておいたほうが良いだろうと思ったのだ。
「良いんですか! ありがとうございます」
「だけど、株式会社エモーションのアバターなら、私が出て行かなくても、あの蛇女たちも張り合えたんじゃないの?」
エモーションというと、絶賛成長中の企業である。あのロジカルンに匹敵するのではないかと言われていたりもする。
「いえいえ」と、少女は頭をぶんぶん左右に振った。「私なんかはポンコツなんで、とてもじゃないけど、ロジカルンのアバターには勝てません」
「そうなんだ」
「なにかの偶然で、エモーションの応募に通過できて、このアバターをもらえたんですけど、バトルの成績が芳しくなくって……」
ははは、と少女は苦笑していた。
アバターが優秀でも、やはり中身によって、差が出てくるものなんだろう。どうしてこの少女がエモーションの選考を通過できて、私が落ちたのよ――と、ちょっと不服に思った。
まあ、選考を判断している人の気分とか、時の運もあるのだろう。
とはいえ、べつに少女に嫌悪感を抱いたわけではない。むしろ、弱者の気持ちはわかるつもりだ。
ノウノもつい最近まで――っていうか、今朝までは弱者だったのだ。
「名前はなんて言うの?」
「私は、クリナです」
名前も栗みたいだ。名前に合わせたアバターなんだろうか。
「私はノウノよ。編入してきたばっかりだから、わからないことも多いの。これからよろしくね」
「あ、はい。私で良ければ、なんでもお手伝いします」
ノウノが差し出した手を、クリナがにぎってきた。
「さっそくなんだけど、私、女王とバトルしたいんだけど、バトルを断られちゃったの。選考があるとか聞いたんだけど、詳しいことを教えてくれない?」
「じょ、女王とバトルするつもりなんですか!」
と、クリナは悲鳴のような声をあげていた。
「そう。そのつもりで、この学園に来たんだから」
「さすがですね」
女王とバトルするための条件を、クリナは教えてくれた。
選考は2度あるらしい。
1次選考では、フォロワーが学園内で上位10位以内に入っている必要がある、とのことだ。
そして2次選考では、その残った10人で競い合って、1位になった人が女王とバトルする権利を得るとのことだった。
「道のりは遠いわね」
選考か、と思った。
すこし憂鬱になる。
VDOOLになる選考に24社も落ちてきたことを思い出したのだ。
「今現在、学園でフォロワー数1位が、300万の女王です。ですけど、選考に女王は入りません。その1位の女王とバトルするための選考ですから」
「2位から11位に入る必要があるってことね」
「これが現在の、2位から11位のフォロワー数です」
と、クリナがディスプレイを表示させてくれた。
1位の女王はさておいて、2位のフォロワー数は120万人だった。11位が90万となっている。
上位のほとんどが、ロジカルンとエモーションのアバターであるようだった。
ちらほら他企業のアバターも入っているようだ。
「100万人ぐらいのフォロワーが必要ってことね」
「そうなりますね」
今現在のノウノのフォロワーが5万人だから、まだまだ数が足りないということになる。もっとバズる必要があるわけだ。
「それにしても、1位の女王が300万で、2位が120万人って、1位と2位でものすごい差ね」
「そりゃもう、女王は最強ですから。ロジカルンの最新鋭の技術が使われていますし、それを使いこなしている女王も、きっと優秀なんだと思います」
私なんかとは違って、とクリナは自虐的なつぶやきを落としていた。
「まあまあ。でも、企業のVDOOLってだけで、一般人からしてみれば、憧れの対象なんだから元気だしなさいよ」
と、ノウノはクリナの肩をやわらかく叩いた。
「は、はい! ノウノさんからそう言われると、元気が出てきました!」
とのことだ。
単純である。
クリナの部屋番号は「288」。ノウノの隣室らしい。これからよろしくね、と挨拶をかわして別れた。
扉がノックされた。
ちょうどノウノのメンテナンスが終わったところだった。
ノウノはベッドから立ち上がり、扉を開けた。
扉の前に立っていたのは、栗みたいな髪の毛の少女だった。頭部が栗みたいになっているわけではない。あくまで、比喩である。髪の色も形も、栗みたいだった。目は草食動物みたいで可愛げがある。
「あ、あの……。さっきは、どうも」
と、栗頭はそう言うと、ペコリと頭を下げた。
さっき?
何のことだろうか、とノウノは困惑した。
あ、思い出した。たしか最初に蛇女に絡まれていた少女である。
「たしか株式会社エモーションのアバターだったっけ?」
「はい、そうです。さきほど絡まれているところを、助けていただいて、ありがとうございました」
と、少女はもう一度、頭を深く下げた。
「いや、べつに良いって」
助けようと思って蛇女とバトルしたわけじゃない。むしろ、バトルしたかったから、ちょうど良かったのだ。
「バトル見てました。とても恰好良かったです。フォローもしました!」
少女はまるで、憧れの対象を見るような目で見てくる。
自分も立派なVDOOLになったんだなぁ、という実感がわいてきた。
エダがノウノの膝小僧を突いてきた。ディスプレイに文字が表示されている。「株式会社エモーションとは、コネを作っておきたい。フォロバしておいたらどうじゃ」とのことだった。
「フォロバしておくわ」
と、エダの指示通り、ノウノのほうからも、エダのアカウントをフォローしておいた。
株式会社エモーションとのつながりも大事だが、これからの学園生活において、友人のひとりぐらい作っておいたほうが良いだろうと思ったのだ。
「良いんですか! ありがとうございます」
「だけど、株式会社エモーションのアバターなら、私が出て行かなくても、あの蛇女たちも張り合えたんじゃないの?」
エモーションというと、絶賛成長中の企業である。あのロジカルンに匹敵するのではないかと言われていたりもする。
「いえいえ」と、少女は頭をぶんぶん左右に振った。「私なんかはポンコツなんで、とてもじゃないけど、ロジカルンのアバターには勝てません」
「そうなんだ」
「なにかの偶然で、エモーションの応募に通過できて、このアバターをもらえたんですけど、バトルの成績が芳しくなくって……」
ははは、と少女は苦笑していた。
アバターが優秀でも、やはり中身によって、差が出てくるものなんだろう。どうしてこの少女がエモーションの選考を通過できて、私が落ちたのよ――と、ちょっと不服に思った。
まあ、選考を判断している人の気分とか、時の運もあるのだろう。
とはいえ、べつに少女に嫌悪感を抱いたわけではない。むしろ、弱者の気持ちはわかるつもりだ。
ノウノもつい最近まで――っていうか、今朝までは弱者だったのだ。
「名前はなんて言うの?」
「私は、クリナです」
名前も栗みたいだ。名前に合わせたアバターなんだろうか。
「私はノウノよ。編入してきたばっかりだから、わからないことも多いの。これからよろしくね」
「あ、はい。私で良ければ、なんでもお手伝いします」
ノウノが差し出した手を、クリナがにぎってきた。
「さっそくなんだけど、私、女王とバトルしたいんだけど、バトルを断られちゃったの。選考があるとか聞いたんだけど、詳しいことを教えてくれない?」
「じょ、女王とバトルするつもりなんですか!」
と、クリナは悲鳴のような声をあげていた。
「そう。そのつもりで、この学園に来たんだから」
「さすがですね」
女王とバトルするための条件を、クリナは教えてくれた。
選考は2度あるらしい。
1次選考では、フォロワーが学園内で上位10位以内に入っている必要がある、とのことだ。
そして2次選考では、その残った10人で競い合って、1位になった人が女王とバトルする権利を得るとのことだった。
「道のりは遠いわね」
選考か、と思った。
すこし憂鬱になる。
VDOOLになる選考に24社も落ちてきたことを思い出したのだ。
「今現在、学園でフォロワー数1位が、300万の女王です。ですけど、選考に女王は入りません。その1位の女王とバトルするための選考ですから」
「2位から11位に入る必要があるってことね」
「これが現在の、2位から11位のフォロワー数です」
と、クリナがディスプレイを表示させてくれた。
1位の女王はさておいて、2位のフォロワー数は120万人だった。11位が90万となっている。
上位のほとんどが、ロジカルンとエモーションのアバターであるようだった。
ちらほら他企業のアバターも入っているようだ。
「100万人ぐらいのフォロワーが必要ってことね」
「そうなりますね」
今現在のノウノのフォロワーが5万人だから、まだまだ数が足りないということになる。もっとバズる必要があるわけだ。
「それにしても、1位の女王が300万で、2位が120万人って、1位と2位でものすごい差ね」
「そりゃもう、女王は最強ですから。ロジカルンの最新鋭の技術が使われていますし、それを使いこなしている女王も、きっと優秀なんだと思います」
私なんかとは違って、とクリナは自虐的なつぶやきを落としていた。
「まあまあ。でも、企業のVDOOLってだけで、一般人からしてみれば、憧れの対象なんだから元気だしなさいよ」
と、ノウノはクリナの肩をやわらかく叩いた。
「は、はい! ノウノさんからそう言われると、元気が出てきました!」
とのことだ。
単純である。
クリナの部屋番号は「288」。ノウノの隣室らしい。これからよろしくね、と挨拶をかわして別れた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる