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性癖が狂いそう
しおりを挟む「……なんで。」
まだ外は暗く、日も登っていない午前四時、眠い瞼を擦って呟く。こんなに俺の心は乱されているのに、当の本人は気持ちよさそうにスヤスヤと眠っていた。なんで、この人が同じベッドで寝ているんだ?向かい側にベッドがあると言うのに、どうしてここにいるんだ。そしてなぜ、先輩はパンイチなのか。今は春だ、決して暑くないのになぜ脱ぐんだ。小さな顔が近くて、再び寝れる気がしない。
この寮に来ておよそ三週間。弟達よりも理解不能な先輩に、三谷彰人は、本気で部屋を変えるか悩んでいた。
4月上旬。東京から少し外れた山奥の、念願の進学校に通うため、東京都外に訪れた彰人。その高校は全寮制で、寮は二人部屋だ。同室の人と慣れるため、入学式までは一週間の猶予がある。彰人は一つ上の先輩、宮村海(みやむらうみ)という人と暮らすことになったのだ。しかし、中学は家から通っていたので、寮というものは初めて。先輩と暮らすとなると、緊張するものがある。
いろいろな手続きを済ませ、二階にあるベージュのドアの前に立った。一呼吸、そしてノックをした。
ーーコンコン。
「…はーい」
少し間があってから、奥の方から返事がする。変声期がまだ来ていないような、高い声が聞こえた。さて、先輩はどんな人なのだろう。ドキドキと心臓の音がうるさい、顔が強ばって、手に力が入る。初対面なのに上手く笑えないかも。
しかし、そんな心配はすぐに消え去った。
「はーい……はじめまして、入って入って!」
「…な、なんで、服を着ていないんでしょうか」
「だって暑いじゃん」
「いや…常識ってものがあるじゃないですか!!」
俺を迎えたのは、何故かパンイチの背が低い先輩。髪は白くて、目は紫。惹き付けられるような色、だが。さらに惹き付けられたのは、白い肌に桃色の胸。なんで脱いでいるんだ。肌はうっすらと汗に濡れていて、本当のことを言っているのはわかるが、初対面の相手にこれは頂けない。ここは男子校で女子がいないとはいえ、それでも人の目がある。腹を出しながら寝る弟達が可愛く思えてくる。
今まで眠っていたのか、それとも元からなのか。眠そうな目をしている顔はどこか可愛く感じてーーー。って、可愛いってなんだよ!相手は一つ上の先輩だぞ!
「服を着てください!!」
俺の声が、寮中に響いたのだった。
周りの初々しい、初対面の先輩後輩達からの不審な視線を集めたため、慌てて部屋に入ったものの。どうやら、先輩には部屋着という概念がないようだ。
「じゃあ、これ。おれの服ですけど、ないよりはマシなので着てください」
「え~…。わかったよ、可愛い後輩の願いだもん、着るから」
「ぜひそうしてください!!」
そういって、グレーのスウェットを渡した。
いそいそと服を着た先輩。しかし、何か困っているようだ。
「どうしました?」
「下の服、ブカブカだから着なくていい?」
困った顔から下に視線を向けると、大きなネックラインからみえる綺麗な鎖骨。萌え袖になってしまう手。何も履いていないと錯覚してしまう生足。
……着てる方がやばいかもしれない。
そう思ったものの、風邪をひいて欲しくないという長男気質が発動した為、「下は履かなくてもいい」と言い、先輩の生足がチラ見する中ドキドキの初日をすごしたのだった。
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