猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

17話

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お昼を少し過ぎた時間帯だったこともあって、席はまばらに空いていた。

「お好きな席どうぞ。」
「あぁ、ありがとう。」

ローガンは、ハルを連れて周りに人が居ない窓際の席に座った。

「さーて、なに食うかな…。」

メニューを持ってきたノエリアがオススメを教えてくれた。

「オススメは、今朝仕入れたオーク肉を甘辛く煮て作った丼ですね。」
「オーク肉?」
「はい。昨日の夜に来たギルドの職員さんが教えてくださったので、今朝、ギルドまで買いに行ったんです。」
「あぁ、昨日遅くまで解体してたな。」
「そうなんですね!」
「じゃ、それにするかな。ハルは?」
「ぼくも同じで良いです。アキちゃんも同じで。」
「了解。アキのは、少なめにしてもらうか?」
「そうですね、お願いします。」
「じゃあ、大盛り1つと普通盛り1つと小盛1つ頼む。」
「はい!飲み物は?」
「俺はまだ仕事残ってるから大丈夫だ。ハルは?」
「ぼくも大丈夫です。」
「分かりました。少々お待ちください。」

ノエリアが去ったあと、ローガンが真剣な顔で質問してきた。

「で、なんであんな道端で喧嘩沙汰になんかなったんだ?」
「なんで…?おじさんがぼくにぶつかってきて、尻もちついてるぼくに『痛えなぁ!』って言ってきたんです。」
「それでなんで喧嘩沙汰に?」
「ぼくが、ぶつかってきたのはそっちだって言ったら、怒ってぼくのほっぺた叩いたんです。」
「はあ?マジかよ!?」
「はい。」
「傷は?」
「治しました。」
「え、どうやって?」
「ヒールが使えるのでそれで。」
「そうか。」
「で、そのあとも口答えしたら、ぼくが勝って、おじさんが帰って行った感じですね。」
「そうか。分かった、ありがとう。また聞くかもしれねえけどとりあえず、大丈夫だろ。」
「そうですか。よかったです。
ひとつ聞いてもいいですか?」
「おう。なんだ?」
「ぼくの受け答えが嘘だと思ったりしないんですか?」
「しないさ。話し始める前にテーブルに気付かれないように置いた魔道具があるんだが、録音機と嘘発見器がくっついてるようなやつだからな。それが反応してなかったから大丈夫だ。」
「なるほど。」

「お待たせしましたー!」

タイミング良くノエリアが食事を運んできた。

「おぉ、美味そうな匂いがするな!」
「はい、美味しそうです。」
「にゃうー!」
「どうぞ、ごゆっくり。」

3人の目の前に置かれたどんぶりには、ご飯の上に光沢のあるタレがかかったオーク肉が2cm程の厚さに切られて7枚ほど乗っている。

「じゃあ、いただきます!」
「いただきます。」
「にゃう!」

ガツガツ

ゴックン

「うまぁー!ノエリア、これ、美味いぞ!特にタレが!」
「ふふっ、ありがとうございます。」

キッチンから顔を出してノエリアは大興奮しているローガンに笑いかけた。

モグモグ

コクン

「おいし…。」
「にゃん!」
「アキちゃんもおいしい?」
「にゃー!」
「よかったね。〔これ、アキちゃん作れる?〕」
〔多分、出来ると思うけど。〕
〔すごくおいしいからあとで作って。〕
〔分かった、分かった。今はそれ食べな。〕
〔うん!〕

10分程でローガンとハルは食べ終わった。

「ご馳走様。美味かった!」
「ごちそうさまでした。」
「美味かったなー、ハル?」
「はい、とてもおいしかったです。」
「ハル、またオーク倒したら肉、ギルドにおろしてくれよ。」
「もちろんです。こんなにおいしいのが食べられるのなら売ります。」
「頼んだぜ!」
「はい。」
「食後のデザートとして、ここの名物のアップルパイ頼もうと思うんだが、ハルも食うか?」
「はい、食べたいです。」
「そうか。俺が言っててなんだが、入るのか?」
「はい。全然大丈夫です。」
「そうか。アキは食うか?」
「にゃ?」

一心不乱に丼を食べてたアキに声を掛けたローガンだが、話しを聞いてなかったアキは、首を傾げてハルに視線を移した。

「ここの名物のアップルパイをローガンさんが頼むんだって、アキちゃんも食べる?」
「にゃぅ…〔お腹いっぱい。1口食べてみたいけど。〕」
「そっか、お腹いっぱいか、ぼくの1口あげるからそれでいい?」
「にゃん!」
「分かった。ローガンさん、ぼくの分1つお願いします。」
「あいよ。
ノエリアー。」
「はーい。」

キッチンに戻っていたノエリアにアップルパイと紅茶を頼んだ。

「ハルはさ、アキがなに喋ってるか分かるのか?」
「へ?」
「いや、『にゃー』とか鳴き声しかしないけどさ、2人で喋ってるように見えるから。」
「はい、分かりますよ。」
「そっか、ハルはテイム持ってたな。」
「はい。」
「アキをテイムしたのか?」
「それもありますけど、付き合い長いのでなんとなく分かります。」
「そうかー。」

喋ってるとノエリアがアップルパイと紅茶を持ってきてくれた。

「お待たせしました。」
「ありがとう。」
「ありがとうございます。」

ハルの皿に乗ったアップルパイは、ローガンの皿に乗ってるのより少し小さかった。しかし、バニラアイスが乗っていた。

「えっと、ノエリアさん?」
「はい?」
「このアイスは?」
「サービス。ハル君の分少し小さく切って、アキちゃん用にお皿別にしたからサービスでハル君にはアイストッピングしたのよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「アイス、溶けないうちに食べてね。」
「ありがとうございます。」

ノエリアは、ウインクをしながらハルに微笑み食べ終わった食器を持ってキッチンに戻って行った。

「よかったな。」
「はい。」

パクッ

「んー、おいしい。」
「ふは、」
「なんですか?」
「いや、会って2日だけど、笑顔なの初めて見たなと思ってな。いつも仏頂面だったからよ。なんか年相応の子供なんだなと思ってな。」
「はぁ…。」
「アキと話してる時は心を許してるからなのか笑顔だけどさ、俺らにはまだだっただろ。だから嬉しくてな。」
「そうですか。」
「あぁ。」

ローガンに微笑まれながらハルはアップルパイを黙々と食べた。

「ご馳走様。」
「ごちそうさまでした。」
「にゃうー」
「さて、戻るかー。ハルはこの後どうするんだ?」
「もう少し町を散策しようかと思ってます。」
「そうか。じゃあ行くか。」
「はい。」

ハルはアキを抱っこして先に行ってしまったローガンを追いかけた。

「ありがとうございましたー。」
「おう、またな!」
「はい。ハル君とアキちゃんもまた来てね!」
「はい。」
「ハル、行くぞー。」
「待ってください。」

お店の外で待ってるローガンに追い付いたハルは、

「ローガンさん、お金、」
「要らん。」
「しかし」
「俺が気分良く払ったんだからそんな言葉じゃなくて違う言葉が聞きてーな。」
「………、ローガンさん、ごちそうさまでした。ありがとうございます。」
「おう!」

ローガンは嬉しそうに笑ってギルドに戻って行った。

ハルは、そんな背中をぼんやりと見ていた。

(人と関わることをあまりしてこなかったんだろうから、どんな顔したら良いのか分からないんだろうな…。)

そんなハルをアキは微笑みながら見守っていた。

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