34 / 39
34.アーヴィン様登場です
しおりを挟む
「アーヴィンっ……、何故ここに……」
「ロズイエの方たちが帰国の手筈を整えてくれたのです」
驚く陛下にアーヴィン様は説明しながらも、コツコツと歩みを進める。
第一王子のアーヴィン様は、確か外国に留学されていたはず。
王太后様が亡くなられてすぐのことだったので、私も数えるほどしかお会いしたことはない。
「大司教」
「準備は整えております」
アーヴィン様が、隅に控えていた大司教様に声をかけると、彼は前に出て頭を垂れた。
「よし、すぐに重症者から診てもらえるように手配するぞ」
アーヴィン様は大司教の言葉を聞き、すぐに切り替えて指示を出し始めた。
「エルダー様、お詫びはまた後で。教会にも少しばかりのハーブの蓄えがあります。全て貴方のお店で購入した物です。使ってください」
アーヴィン様は私に近付くと、頭を下げながら言った。
「待て、アーヴィン! 勝手は許さないぞ! 王族を優先するのだ!」
「国民あってのオスタシスです! それに父上、国がこうなってしまったのは貴方の責任です!」
「何だと……!」
「ここは私が指揮します。父上はお下がりを」
「国王は私ぞ……!」
処置に急ぐアーヴィン様を引き止め、なおも王族を優先しようとする陛下。
アーヴィン様が来てくださって良かった!
王太后様に似た、優しい空気を纏いながらも、毅然とした態度は、まさに上に立つ者として相応しい。
「王太后様譲りの性格の殿下を遠ざけるために、王太后様が他界してすぐに留学と称して国王陛下が他国に出したそうですよ」
ロジャーがボソリと教えてくれた。
この国王陛下は、自分に都合の悪いものは全て排除してしまうようだ。なんて愚かなんだろう。
「オスタシスの悲劇とはよく言ったものだな」
「そんなこと言われてたんですか……」
オリヴァー様の言葉に、そんなことを言われていたのかと目を瞬く。
「国王陛下はそのお役目を直ちに第一王子であるアーヴィン様にお譲りください」
「何だと……?」
お義母様の言葉に陛下がこちらを睨む。
「それが、ロズイエがオスタシスに手を差し伸べる条件です」
きっぱりとそう告げると、陛下は何かを言い返そうとして、口を噤んだ。そしてその場に足から崩れ落ちてしまった。
アーヴィン様の指示で、陛下とジンセン伯のお父様、お義母様は騎士たちに連れて行かれた。
ティナだけがその場に残された。
「ティナ……」
拘束された縄を解かれても、ティナはその場に座りこんだまま。
アーヴィン様は指示するために騎士を連れて王宮の外へ。お義母様とロジャーは、大司教の案内の元、教会へ向かった。オリヴァー様は謁見の間の外で私を待ってくれていた。
時間が無いのに、私とティナのために二人きりにしてくれたのだ。
「ティナ、大丈夫?」
座り込むティナに近づき、肩に手をやると、彼女は鋭い眼差しを私に向けた。
「……何しに来たんですか……」
「ティナ……」
ティナの肩は震えていた。
捕らえられ、縄で縛られ糾弾され、怖い思いをしたに違いない。
「頑張ったね」
「!」
私はティナの頭をそっと撫でた。彼女の肩が僅かにびくりとするのを見る。
「私のこと笑いに来たんでしょ」
「助けに来たのよ」
「私はお姉様の助けなんて必要無い!」
ティナは目を逸すと、全身で私を拒絶した。その身体は震えている。
強がることでしか立っていられない、私の可愛い妹。
「ティナ、一人で頑張ったね」
「………!!」
まだ震えるティナの肩を後ろからそっと支えると、彼女が泣いているのがわかった。
「どうして……どうして! いつもお姉様は……!」
泣き叫ぶように。振り返ったティナは私の胸に飛び込んで来た。
「どうして私なんか……!」
「だって私の可愛い妹だもの」
泣きじゃくるティナの頭をよしよししながら、彼女を抱きしめる。
「私……私はっ……あなたのことなんて……」
「こんな私をずっと『お姉様』って呼んでくれるティナが可愛くて、嬉しいの」
「……!」
目に涙をいっぱい溜めながら、私を見上げたティナは、鋭い目つきが、みるみると垂れ下がる。
「お人好し! 偽善者!」
「ええー、私、大切な人にしか優しくないよ?」
ティナは泣きながらも、私の胸の中でずっと悪態をついていた。
オスタシスを出る前の、冷えた空気は今は無くて。ただただ、姉に甘える妹のように、ティナの文句は続いた。
「ティナ、このオスタシスを救うためにはあなたの力も必要なの。手を貸してくれる?」
ティナの文句と涙が止んで、私がそう言えば、彼女は勝気な笑顔で答えた。
「当たり前でしょ! 私は聖女なのよ? 国民はお姉様じゃなくて、私を求めているのよ。私を!」
「ふふ、それでこそティナ」
ティナの言葉に笑顔で返せば、彼女は照れたような怒った表情になった。
「お姉様は変わらないのね」
「え?」
「何でもない! 時間、ないんでしょ? 行くわよ!」
「うん!」
ティナが呟いた言葉は聞き取れなかったけど、彼女の表情を見れば、何だか吹っ切れているようだった。
ティナに急かされ、私たちは謁見の間を後にした。
「ロズイエの方たちが帰国の手筈を整えてくれたのです」
驚く陛下にアーヴィン様は説明しながらも、コツコツと歩みを進める。
第一王子のアーヴィン様は、確か外国に留学されていたはず。
王太后様が亡くなられてすぐのことだったので、私も数えるほどしかお会いしたことはない。
「大司教」
「準備は整えております」
アーヴィン様が、隅に控えていた大司教様に声をかけると、彼は前に出て頭を垂れた。
「よし、すぐに重症者から診てもらえるように手配するぞ」
アーヴィン様は大司教の言葉を聞き、すぐに切り替えて指示を出し始めた。
「エルダー様、お詫びはまた後で。教会にも少しばかりのハーブの蓄えがあります。全て貴方のお店で購入した物です。使ってください」
アーヴィン様は私に近付くと、頭を下げながら言った。
「待て、アーヴィン! 勝手は許さないぞ! 王族を優先するのだ!」
「国民あってのオスタシスです! それに父上、国がこうなってしまったのは貴方の責任です!」
「何だと……!」
「ここは私が指揮します。父上はお下がりを」
「国王は私ぞ……!」
処置に急ぐアーヴィン様を引き止め、なおも王族を優先しようとする陛下。
アーヴィン様が来てくださって良かった!
王太后様に似た、優しい空気を纏いながらも、毅然とした態度は、まさに上に立つ者として相応しい。
「王太后様譲りの性格の殿下を遠ざけるために、王太后様が他界してすぐに留学と称して国王陛下が他国に出したそうですよ」
ロジャーがボソリと教えてくれた。
この国王陛下は、自分に都合の悪いものは全て排除してしまうようだ。なんて愚かなんだろう。
「オスタシスの悲劇とはよく言ったものだな」
「そんなこと言われてたんですか……」
オリヴァー様の言葉に、そんなことを言われていたのかと目を瞬く。
「国王陛下はそのお役目を直ちに第一王子であるアーヴィン様にお譲りください」
「何だと……?」
お義母様の言葉に陛下がこちらを睨む。
「それが、ロズイエがオスタシスに手を差し伸べる条件です」
きっぱりとそう告げると、陛下は何かを言い返そうとして、口を噤んだ。そしてその場に足から崩れ落ちてしまった。
アーヴィン様の指示で、陛下とジンセン伯のお父様、お義母様は騎士たちに連れて行かれた。
ティナだけがその場に残された。
「ティナ……」
拘束された縄を解かれても、ティナはその場に座りこんだまま。
アーヴィン様は指示するために騎士を連れて王宮の外へ。お義母様とロジャーは、大司教の案内の元、教会へ向かった。オリヴァー様は謁見の間の外で私を待ってくれていた。
時間が無いのに、私とティナのために二人きりにしてくれたのだ。
「ティナ、大丈夫?」
座り込むティナに近づき、肩に手をやると、彼女は鋭い眼差しを私に向けた。
「……何しに来たんですか……」
「ティナ……」
ティナの肩は震えていた。
捕らえられ、縄で縛られ糾弾され、怖い思いをしたに違いない。
「頑張ったね」
「!」
私はティナの頭をそっと撫でた。彼女の肩が僅かにびくりとするのを見る。
「私のこと笑いに来たんでしょ」
「助けに来たのよ」
「私はお姉様の助けなんて必要無い!」
ティナは目を逸すと、全身で私を拒絶した。その身体は震えている。
強がることでしか立っていられない、私の可愛い妹。
「ティナ、一人で頑張ったね」
「………!!」
まだ震えるティナの肩を後ろからそっと支えると、彼女が泣いているのがわかった。
「どうして……どうして! いつもお姉様は……!」
泣き叫ぶように。振り返ったティナは私の胸に飛び込んで来た。
「どうして私なんか……!」
「だって私の可愛い妹だもの」
泣きじゃくるティナの頭をよしよししながら、彼女を抱きしめる。
「私……私はっ……あなたのことなんて……」
「こんな私をずっと『お姉様』って呼んでくれるティナが可愛くて、嬉しいの」
「……!」
目に涙をいっぱい溜めながら、私を見上げたティナは、鋭い目つきが、みるみると垂れ下がる。
「お人好し! 偽善者!」
「ええー、私、大切な人にしか優しくないよ?」
ティナは泣きながらも、私の胸の中でずっと悪態をついていた。
オスタシスを出る前の、冷えた空気は今は無くて。ただただ、姉に甘える妹のように、ティナの文句は続いた。
「ティナ、このオスタシスを救うためにはあなたの力も必要なの。手を貸してくれる?」
ティナの文句と涙が止んで、私がそう言えば、彼女は勝気な笑顔で答えた。
「当たり前でしょ! 私は聖女なのよ? 国民はお姉様じゃなくて、私を求めているのよ。私を!」
「ふふ、それでこそティナ」
ティナの言葉に笑顔で返せば、彼女は照れたような怒った表情になった。
「お姉様は変わらないのね」
「え?」
「何でもない! 時間、ないんでしょ? 行くわよ!」
「うん!」
ティナが呟いた言葉は聞き取れなかったけど、彼女の表情を見れば、何だか吹っ切れているようだった。
ティナに急かされ、私たちは謁見の間を後にした。
3
あなたにおすすめの小説
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする
白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、
12歳の時からの日常だった。
恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。
それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。
ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。
『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、
魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___
(※転生ものではありません) ※完結しました
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】
早奈恵
恋愛
エドウィン王子から婚約破棄されて、修道院でいじめ抜かれて死んでしまう予知夢を見た公爵令嬢アデリアーナは、男爵令嬢のパナピーアに誘惑されてしまうはずの攻略対象者との出会いを邪魔して、予知夢を回避できるのか試そうとする。
婚約破棄への道を自分で潰すつもりなのに、現実は何だか予知夢の内容とどんどんかけ離れて、知らないうちに話が進んでいき……。
宰相インテリ子息、騎士団長の脳筋子息、実家を継ぐために養子になったわんこ系義弟、そして婚約者の王太子エドウィンが頑張る話。
*リハビリに短編を書く予定が中編くらいになってしまいましたが、すでにラストまで書き終えている完結確約作品です。全23話+おまけ2話、よろしくお願いします。
*短い期間ですがHOTランキング1位に到達した作品です。
落ちこぼれ姫はお付きの従者と旅立つ。王族にふさわしくないと追放されましたが、私にはありのままの私を愛してくれる素敵な「家族」がおりますので。
石河 翠
恋愛
神聖王国の姫は誕生日に宝石で飾られた金の卵を贈られる。王族として成長する中で卵が割れ、精霊が現れるのだ。
ところがデイジーの卵だけは、いつまでたっても割れないまま。精霊を伴わない姫は王族とみなされない。デイジーを大切にしてくれるのは、お付きの従者だけ。
あるとき、異母姉に卵を奪われそうになったデイジーは姉に怪我を負わせてしまう。嫁入り前の姉の顔に傷をつけたと、縁を切られ平民として追放された彼女の元へ、お付きの従者が求婚にやってくる。
さらにデイジーがいなくなった王城では、精霊が消えてしまい……。
実は精霊王の愛し子だったヒロインと、彼女に片思いしていた一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25997681)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる