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第二章 王子様の家庭教師
第28話
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「お疲れ、ミュー」
日は沈みかけ、辺りはオレンジ色に染まっていた。
魔法騎士団の入口でイリスとアドが出迎えてくれて驚く。
「二人ともどうしたの?」
「ミュリエルが心配でずっと待ってたんだろ。入口で婚約者がウロウロしてるぞ、って教えてもらったから」
「ずっと!?」
「うっさい、グレイ、余計なこと言わない!」
グレイの説明に私が驚くと、イリスが顔を少し赤らめて怒った。
「待ってたのが俺じゃなくて残念だけど、そんな友達想いのイリス、好きだぞ!」
「だから、あんたは時と場合を選んで発言しなさいよ!?」
イリスとグレイの変わらないいつものやり取りに、私の張り詰めていた緊張が解ける。
「おい!? 大丈夫か?」
ふらついた私をアドが素早く受け止めてくれる。
「だ、だいじょーぶ。何か、安心して……」
受け止めてくれたアドの腕に余計に安心して、今更震えてくる。
「もちろん、勝ったんだろ?」
今日は手合わせだ。勝ったも負けたも無いと思う。
でも、アドの当然だという信頼の瞳が嬉しくて、笑顔がこぼれる。私はアドの腕の中でピースを作って見せた。
「ミュリエル嬢、今日はありがとうございました。団員たちも勉強になったと思います。もしよろしければまた来ていただけると……」
わざわざ見送りに来てくれていた騎士団長さんが穏やかに笑って頭を下げたので、私は慌てて止める。すると――
「ミュリエル!」
魔法騎士団の建物の中から先程の対戦相手が走って来た。
「ええと……」
「お前の魔法、早くて的確で凄かった!!」
彼は私の元へたどり着くと、目を輝かせて言った。
「え……」
「お前も魔法騎士団に入ったら良いんじゃないか? ねえ、団長?」
あの魔法騎士団の人に褒められ、私は固まる。
「……それも良いかもしれませんね。ミュリエル嬢、殿下の家庭教師が落ち着いたら、魔法騎士団の顧問になりませんか?」
「えっ? えっ!?」
騎士団長様まで何を言い出すのか。私は驚きで頭が追いつかない。
「お、それいいじゃん、ミュリエル」
「ミューの力を発揮するのには、いいかもね。でも私の研究室とも掛け持ちだからね」
グレイとイリスまでそんなことを言い出し、私は「えっ? えっ?」となる。
「お前ら、ミュリエルは俺の家庭教師だ」
そんな私の前に出て、アドがピリッとした空気を出した。
「えー、でも殿下が魔法騎士団に入ったらミュリエルの仕事無くなるじゃん」
「そうよ。それに、ミューが同じ魔法騎士団に入ったら嬉しいでしょう?」
「ダメだっ!!」
やんや言う二人に、アドが強く叫んだ。
「アド……? 心配しなくても、私は最後までアドの家庭教師をやりきるよ?」
何だか思い詰めた表情のアドに心配になり、私は諭すように話しかけた。
「――っ! だから、お前は、俺を子供扱いすんなって言ってんだろ……っ」
パシッとアドに手を払われる。
驚いたけど、すぐにアドが後悔の表情を見せたので、今度はすぐに彼の手を掴む。
「アド、私を信じて」
アドは何だか切ない表情で何かを言おうとした。
「ミュリエル、お前はいつまでも俺の――」
「殿下」
アドの言葉を遮ったのは騎士団長様だった。
穏やかだった笑顔は無く、厳しい騎士団長の顔。
「殿下は、あなた様こそを王太子にしようとする不穏な動きがあるのをご存知ですか」
「はっ、優秀な兄上を差し置いてそんなこと思う奴がいるのか?」
騎士団長様の言葉に、アドは自虐するように笑って言った。
「甘いですよ、殿下。あなたは王族だ。そのお立場を利用しようとする輩は多い。当初、魔術師団へ送られるはずだったのは陛下だけのお考えだと?」
「まさか……」
騎士団長様の言葉にアドの表情が険しくなる。
「そのまさか、です。あなたを内に取り込み、操り人形にしたかったのでしょう。証拠は無いのでその人物を捕らえることはできませんが、今はその動きが静かなのが不気味なくらいです」
「俺は操り人形になんかならない」
「そうでないと困ります。誰も手出しができない立派な魔法騎士におなりなさい。でも、ミュリエル嬢は違う。彼女の才能を活かしながら魔法騎士団で守ることが、何よりもミュリエル嬢のためになると思いませんか?」
「ミュリエルは俺の家庭教師だ!」
「アド!?」
アドはそう言い捨てると、走り出してしまった。
「やれやれ……少しは大人になられたと思ったのに、あなたのことになると、まだまだですね」
騎士団長様は走り去ったアドの背中を見つめながら、困ったように笑った。
「殿下は何をそんなに怒っているんだ?」
「グレイはちょっと黙ってようか」
疑問符を浮かべるグレイをイリスが嗜める。
「あ、あのっ、お話、光栄でした! でもあの、今はアドリア殿下の家庭教師のことしか考えられなくて……」
「ええ。もちろん、全てが終わってからゆっくり考えてください」
私は騎士団長様にお辞儀をするとアドを追いかけて走り出した。
「やれやれ。イリス嬢はあの二人、どう思う?」
「私はミューが幸せなら何でもいいです」
「あの~、俺が余計なこと言ったせいで修羅場ですか……?」
私が走り去った後、対戦相手の魔術師が恐る恐る騎士団長様に聞いた。
「そこはさー、殿下の男の見せ所じゃね?」
「あんたは、またわかってないのに核心つく……」
重たい空気をグレイが割って入り、和やかになる。
「そうだね……何も起きないといいんだが……」
団長様の心配は後に当たることになるが、今の私はアドを追いかけることで精一杯だった。
日は沈みかけ、辺りはオレンジ色に染まっていた。
魔法騎士団の入口でイリスとアドが出迎えてくれて驚く。
「二人ともどうしたの?」
「ミュリエルが心配でずっと待ってたんだろ。入口で婚約者がウロウロしてるぞ、って教えてもらったから」
「ずっと!?」
「うっさい、グレイ、余計なこと言わない!」
グレイの説明に私が驚くと、イリスが顔を少し赤らめて怒った。
「待ってたのが俺じゃなくて残念だけど、そんな友達想いのイリス、好きだぞ!」
「だから、あんたは時と場合を選んで発言しなさいよ!?」
イリスとグレイの変わらないいつものやり取りに、私の張り詰めていた緊張が解ける。
「おい!? 大丈夫か?」
ふらついた私をアドが素早く受け止めてくれる。
「だ、だいじょーぶ。何か、安心して……」
受け止めてくれたアドの腕に余計に安心して、今更震えてくる。
「もちろん、勝ったんだろ?」
今日は手合わせだ。勝ったも負けたも無いと思う。
でも、アドの当然だという信頼の瞳が嬉しくて、笑顔がこぼれる。私はアドの腕の中でピースを作って見せた。
「ミュリエル嬢、今日はありがとうございました。団員たちも勉強になったと思います。もしよろしければまた来ていただけると……」
わざわざ見送りに来てくれていた騎士団長さんが穏やかに笑って頭を下げたので、私は慌てて止める。すると――
「ミュリエル!」
魔法騎士団の建物の中から先程の対戦相手が走って来た。
「ええと……」
「お前の魔法、早くて的確で凄かった!!」
彼は私の元へたどり着くと、目を輝かせて言った。
「え……」
「お前も魔法騎士団に入ったら良いんじゃないか? ねえ、団長?」
あの魔法騎士団の人に褒められ、私は固まる。
「……それも良いかもしれませんね。ミュリエル嬢、殿下の家庭教師が落ち着いたら、魔法騎士団の顧問になりませんか?」
「えっ? えっ!?」
騎士団長様まで何を言い出すのか。私は驚きで頭が追いつかない。
「お、それいいじゃん、ミュリエル」
「ミューの力を発揮するのには、いいかもね。でも私の研究室とも掛け持ちだからね」
グレイとイリスまでそんなことを言い出し、私は「えっ? えっ?」となる。
「お前ら、ミュリエルは俺の家庭教師だ」
そんな私の前に出て、アドがピリッとした空気を出した。
「えー、でも殿下が魔法騎士団に入ったらミュリエルの仕事無くなるじゃん」
「そうよ。それに、ミューが同じ魔法騎士団に入ったら嬉しいでしょう?」
「ダメだっ!!」
やんや言う二人に、アドが強く叫んだ。
「アド……? 心配しなくても、私は最後までアドの家庭教師をやりきるよ?」
何だか思い詰めた表情のアドに心配になり、私は諭すように話しかけた。
「――っ! だから、お前は、俺を子供扱いすんなって言ってんだろ……っ」
パシッとアドに手を払われる。
驚いたけど、すぐにアドが後悔の表情を見せたので、今度はすぐに彼の手を掴む。
「アド、私を信じて」
アドは何だか切ない表情で何かを言おうとした。
「ミュリエル、お前はいつまでも俺の――」
「殿下」
アドの言葉を遮ったのは騎士団長様だった。
穏やかだった笑顔は無く、厳しい騎士団長の顔。
「殿下は、あなた様こそを王太子にしようとする不穏な動きがあるのをご存知ですか」
「はっ、優秀な兄上を差し置いてそんなこと思う奴がいるのか?」
騎士団長様の言葉に、アドは自虐するように笑って言った。
「甘いですよ、殿下。あなたは王族だ。そのお立場を利用しようとする輩は多い。当初、魔術師団へ送られるはずだったのは陛下だけのお考えだと?」
「まさか……」
騎士団長様の言葉にアドの表情が険しくなる。
「そのまさか、です。あなたを内に取り込み、操り人形にしたかったのでしょう。証拠は無いのでその人物を捕らえることはできませんが、今はその動きが静かなのが不気味なくらいです」
「俺は操り人形になんかならない」
「そうでないと困ります。誰も手出しができない立派な魔法騎士におなりなさい。でも、ミュリエル嬢は違う。彼女の才能を活かしながら魔法騎士団で守ることが、何よりもミュリエル嬢のためになると思いませんか?」
「ミュリエルは俺の家庭教師だ!」
「アド!?」
アドはそう言い捨てると、走り出してしまった。
「やれやれ……少しは大人になられたと思ったのに、あなたのことになると、まだまだですね」
騎士団長様は走り去ったアドの背中を見つめながら、困ったように笑った。
「殿下は何をそんなに怒っているんだ?」
「グレイはちょっと黙ってようか」
疑問符を浮かべるグレイをイリスが嗜める。
「あ、あのっ、お話、光栄でした! でもあの、今はアドリア殿下の家庭教師のことしか考えられなくて……」
「ええ。もちろん、全てが終わってからゆっくり考えてください」
私は騎士団長様にお辞儀をするとアドを追いかけて走り出した。
「やれやれ。イリス嬢はあの二人、どう思う?」
「私はミューが幸せなら何でもいいです」
「あの~、俺が余計なこと言ったせいで修羅場ですか……?」
私が走り去った後、対戦相手の魔術師が恐る恐る騎士団長様に聞いた。
「そこはさー、殿下の男の見せ所じゃね?」
「あんたは、またわかってないのに核心つく……」
重たい空気をグレイが割って入り、和やかになる。
「そうだね……何も起きないといいんだが……」
団長様の心配は後に当たることになるが、今の私はアドを追いかけることで精一杯だった。
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