夢世界ナル

1話-6 元に戻り

　宝石が崩された鯨はそのまま身体中から血が溢れるように体内から溢れる。鳴き声を吐きながら、そのまま近くにあった大地にぶつかっては崩落していく。
『あの宝石は・・・』
「あの宝石は生命力、所謂心臓。あれを壊せば大抵崩落し、死ぬ」
　宝石を生命力にしている。それを破壊すれば再生する事もなく、その怪物は死んでいく。彼女はそう言っている。
「あとは元に戻るだけだ。だけど、この運命を変える事は出来ない。あとは君次第だ・・・ルナ」
　そこから意識は白く濁るように風景は消えていき、何もかも見えなくたった。


　その後は覚えてない。眩しい光と共に目を覚ました。とても息が切れていて疲れていた。何度も深呼吸を行いがら落ち着かせた。
　まだ授業中、黒板はあれから全く進んでいない。むしろ、時間はたったの数秒しか変わってない。
「やっと覚めた・・・」
　あれ以降は目元の熱さは抜けていき、重みも同時に無くなっていった。私はそれを覚醒とか勝手に命名しているが、本当に眠くなくなる。シャキッと目覚ましドリンクを飲んだような感覚だ。
　授業を聞きながら、ノートにまとめる為に黒板へと見つめる。今埋めてない所と埋まってる所を確認しながら、シャーペンを片手に書き始めた。



「行ったね・・・」
　夢世界、まだそこにはナルの姿があった。
「あなた、何者」
　そこに美咲が降り立つ。まだ目を覚まさずにそこにいた。
「この世界を知る者、名は赤宮奈留あかみやるなだ」
　美咲は一歩ずつ前へと進む。だがその歩き方はあまりにも遅かった。
「私は角川・・・美咲・・・だ」
「もうここはいつ崩壊してもおかしくない。それでも保てるなんてやはり二つ持ちは脅威ですね」
「・・・」
　彼女は疲弊していた。この世界は核となる物を破壊すれば、元の現実へと戻れる。それは突然と疲れ、倒れそうな時に戻る。
　だが、それでも彼女は意識を保ちながら立っていた。
「残りのメンバーは既に戻った。あなたがここまで残りたい理由はあるの？」
　ナルは平然と歩く。むしろ、他のメンバーが現実へと戻る中、彼女だけが何も異変が起きていない。
「あなたの強さは・・・そこらの・・・者とは」
　美咲が言葉を発するが、意識を保つ事が出来なかった。そのまま倒れるように消滅していった。
「私は夢ここでしか存在しないルナのもう一つの人格だ」
　既にそこには美咲はいなかった。愚痴るように彼女は呟き、そのまま溶けるようにその場をさっていった。
　核を失ったこの夢世界は時期に崩落へと刻み出す。