おおかみとひつじ

しぎ

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赤ずきんは生贄

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赤ずきんは生贄である。

「赤ずきんはこの町で1番可愛らしい子」
「赤ずきんは1番赤い頭巾が似合う子」
「おばあさんのお見舞いに行こう」
「お母さんはついていけないのよ」
「赤い頭巾は目印」
「いってらっしゃい、可愛い子」

お母さんが作ってくれた可愛らしい赤い頭巾、左手には茶色のバスケット。中には葡萄酒と美味しいケーキ。おばあさんのお見舞いのはずだった。気をつけるのは狼。話しかけられても無視するように。狼は甘い言葉で子供を騙すから。

「可愛らしい赤ずきん」
「あの子は森に」
「おばあさんのお見舞いに」
「森には狼がいる」
「可愛い子供は食べられてしまう」
「これで何人目?」
「だって仕方ない」
「あの子は赤い頭巾が一番似合ったんだもの」

息が切れる。あちこち擦りむいて痛い。赤い頭巾は破けてしまった。後ろから聞こえる笑い声。あれはきっと狼なんかじゃない。伸びてきた指が小さく肩を引っ掻く。必死に走るしかない。

「おばあさんのお見舞いに」
「お見舞いに行くことができれば」
「あの子は帰ってこられる」
「おばあさんの家に着ければ」
「おばあさんは守ってくれる」
「あの子をきっと守ってくれる」
「あの子ならきっと」

不意に目の前に小さな家が現れる。黄色い屋根に赤い壁の可愛らしいお家。おばあさんの家だ。もうすこし。もう少し走れば。小さな家の扉が開く。目の前が明るくなる。赤い頭巾がどこかに飛んでいく。扉に手をかける。ノブを回す。不意に目の前が暗くなる。小さなため息。

「またダメだった」

森の中にいる小さな家。住んでいるのは赤ずきん。たった1人、狼に気に入られてしまった可哀想な赤ずきん。狼はお家の壁に破れた赤い頭巾を貼り付ける。間に合わなかった子の頭巾を貼り付ける。赤ずきんは、大人になった赤ずきんは虚な目でつぶやく。

「だって、赤い頭巾が一番似合ったんだもの」
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