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理由
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「…あなたはどうして私に求婚をしたのですか?」
庭を歩きながら私はベルトランに聞いた。私とベルトランは間にモーヴを挟み、隣り合って歩いていた。
モーヴの頭を撫でる。ばたばたと揺れる尻尾がぶつかりそうだった。
「どうしてって、言われてもね。シルヴェーヌのことを気に入ったから。としか言えないかな。それしか理由がないし」
あんなパーティのど真ん中で婚約者相手に堂々とやり合う姿が面白かったから、なんてベルトランは言う。
「面白いから、などと言う理由で求婚したのですか?」
呆れた声が出るのが分かる。
「まぁ婚約者も、恋人もいなかったし。誰か良い人いないかなって考えてたんだよ」
君がいて良かった。なんて、ベルトランはにこやかに微笑んでみせる。
「最低でも半年ぐらいはこの国にいることになるから、その後はどうするかは一応話し合いかな。僕は跡継ぎだからいつかは戻ることになるけど」
「私はいつでも構いません。うちは私以外の後継が決まっていますし。…少しだけ、隣国のマナーについて学び直す時間が欲しいぐらいでしょうか」
「うーん、それなら、とりあえず一年はこの国ってことにしようかな。婚約者としての期間はこっちで過ごそう。結婚式はどっちにしようかな」
どっちの国でもやる?なんて聞かれてもなんて返せば良いのやら。
私が頭を悩ませていたその時。
「…あ!あの…!」
後ろから高い女性の声がした。ベルトランの手が私を庇うように背に回る。モーヴが振り返り警戒の唸り声を上げる。
私はゆっくりと振り返る。
「…あー、あのパーティの?」
「そうですね。エルヴェ様の隣にいた。…なぜここに?ミリーさん」
ここは私の家の庭だ。門には警備がいる。どこから忍び込んだのか。
「今はそんなことどうでも良いんです…!シルヴェーヌさん、エルヴェのことを許してあげてください…!」
どこか悲愴な表情を浮かべた少女が深く頭を下げる。可憐な少女は得だと思う。それだけで悲劇になれる。
「エルヴェはあの後3日も王宮に監禁されていたんです…!しかも決まっていたお仕事まで無くなってしまったみたいだし。お父さんに勘当するなんて言われるし…。全部シルヴェーヌさんが悪いことをしたんだってエルヴェが言うんです。シルヴェーヌさん。あのパーティの日はエルヴェも悪かったと思います。どうかエルヴェを許してあげてください…。お願いします」
うるうると涙を浮かべるミリーさん。ちらちらとベルトランのことを見ているのも伝わってくる。
「…自分は全く悪くないけど恋人の事を許してあげてって?すごいな」
「凄いんです彼女は。学園時代からずっとそうでした」
学園時代私が何度濡れ衣を着せられてきたことか。全て無実を証明したけれど。
「…ミリーさん。言いたいことが3つほど」
庭を歩きながら私はベルトランに聞いた。私とベルトランは間にモーヴを挟み、隣り合って歩いていた。
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あんなパーティのど真ん中で婚約者相手に堂々とやり合う姿が面白かったから、なんてベルトランは言う。
「面白いから、などと言う理由で求婚したのですか?」
呆れた声が出るのが分かる。
「まぁ婚約者も、恋人もいなかったし。誰か良い人いないかなって考えてたんだよ」
君がいて良かった。なんて、ベルトランはにこやかに微笑んでみせる。
「最低でも半年ぐらいはこの国にいることになるから、その後はどうするかは一応話し合いかな。僕は跡継ぎだからいつかは戻ることになるけど」
「私はいつでも構いません。うちは私以外の後継が決まっていますし。…少しだけ、隣国のマナーについて学び直す時間が欲しいぐらいでしょうか」
「うーん、それなら、とりあえず一年はこの国ってことにしようかな。婚約者としての期間はこっちで過ごそう。結婚式はどっちにしようかな」
どっちの国でもやる?なんて聞かれてもなんて返せば良いのやら。
私が頭を悩ませていたその時。
「…あ!あの…!」
後ろから高い女性の声がした。ベルトランの手が私を庇うように背に回る。モーヴが振り返り警戒の唸り声を上げる。
私はゆっくりと振り返る。
「…あー、あのパーティの?」
「そうですね。エルヴェ様の隣にいた。…なぜここに?ミリーさん」
ここは私の家の庭だ。門には警備がいる。どこから忍び込んだのか。
「今はそんなことどうでも良いんです…!シルヴェーヌさん、エルヴェのことを許してあげてください…!」
どこか悲愴な表情を浮かべた少女が深く頭を下げる。可憐な少女は得だと思う。それだけで悲劇になれる。
「エルヴェはあの後3日も王宮に監禁されていたんです…!しかも決まっていたお仕事まで無くなってしまったみたいだし。お父さんに勘当するなんて言われるし…。全部シルヴェーヌさんが悪いことをしたんだってエルヴェが言うんです。シルヴェーヌさん。あのパーティの日はエルヴェも悪かったと思います。どうかエルヴェを許してあげてください…。お願いします」
うるうると涙を浮かべるミリーさん。ちらちらとベルトランのことを見ているのも伝わってくる。
「…自分は全く悪くないけど恋人の事を許してあげてって?すごいな」
「凄いんです彼女は。学園時代からずっとそうでした」
学園時代私が何度濡れ衣を着せられてきたことか。全て無実を証明したけれど。
「…ミリーさん。言いたいことが3つほど」
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