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「こちらの依頼、3名様と1名様の受託でよろし、い、でしょう、か…?」
読み上げながら受付のお姉さんの声がだんだん怪訝そうになっていく。僕らもぽかんとする。
「…いいえ、4人で申し込みましたが」
ぽかんとしたまま戦士のデリックが言う。そう。僕たちは4人パーティだ。さっきまでふざけ合いながら依頼を選んでたのをお姉さんも見ていたし、なんならこのギルドを4人パーティで利用してそろそろ5年ぐらいになるし。
「…えーと、こちら、戦士のデリック様、魔法使いのアナベル様、ヒーラーのユーリア様の3名パーティ。シーフのテオ様がソロでの2組の受託となっております…」
お姉さんがなんだか自信がなさそうに言う。3人が驚いたように僕を見るのがわかる。僕も驚いてる。なんか僕別パーティ扱いになってるらしい。
「…あー、とりあえずその依頼取っておいてもらえませんか。おい、パーティ組み直すぞ」
デリックが我に返って解決策を思いついたので、僕たちもそれに従うことにした。
「いや、おかしくない?なんで急にテオだけ外れるのよ」
「結成してから特に何事もなかったのに、不思議ですねぇ」
アナベルが怒り、ユーリアが首を傾げる。考えても分からないから3人がパーティ解散、ソロ4人になって再びパーティ結成する。
もう一度受付のお姉さんの所に行くと今度は4人で受託してもらえた。
不思議だねーなんて言い合いながら依頼を済ませて、それで終わればよかったんだけど。
「こちら、3人パーティとソロでの受託となっておりますが…」
3日後、同じお姉さんが同じことを遠慮がちに言う。
僕はとりあえずデリックの顔を見る。一応パーティのリーダーであるデリックの意見が聞きたい。
「…一度戻ります。依頼は元の場所に戻しといてくれると助かります」
僕の視線を受けてデリックが決めてくれる。
「ほら、机のとこ行こ」
アナベルが背中を押してくれる。先に立って進むデリックと、遠慮がちに僕の腕を引くユーリア。
ちょっと安心する。彼らを信じてないわけでは全く無いけど、これで2回目になるからね。僕がパーティ追放されてるの。
ギルドの中にある酒場の奥の方で席についていろいろ頼みながら話す。前回の依頼がまあまあ大きめな仕事だったから、少し仕事をサボるぐらいならしばらくお金の面では問題ない。
「どう考えてもおかしいでしょ2度目は!1度目でもありえないのになんでもっかいおんなじことが起きんのよ!」
いらいらと机を指で叩きながらアナベルが怒る。彼女は怒ると無意識に魔法を発動しがちだから、どうにかして宥めなきゃいけない。ビールとトマトの炒め物。彼女の好物を机に並べるととりあえずは静かになった。
「前回は結成し直せば問題なかったですよね。今回ももう1度同じようにしましょうか?」
「いや、それじゃ根本の解決にならねぇだろ。何度同じことが起きるか分からん」
デリックとユーリアがどうするか話し合ってくれる。居た堪れなくなって僕はノートを取り出した。
『なんかごめんね』
見せた文字にデリックは、僕のおでこを軽く弾き、ユーリアは、微笑んで首を振る。アナベルも僕の前にたくさんご飯を並べてくれた。
話せない僕を拾ってくれた彼らには感謝の想いしかない。だからこの中の誰かが僕を疎ましく思ってこっそりパーティから追放していたとしても僕には何も言えないと思う。
読み上げながら受付のお姉さんの声がだんだん怪訝そうになっていく。僕らもぽかんとする。
「…いいえ、4人で申し込みましたが」
ぽかんとしたまま戦士のデリックが言う。そう。僕たちは4人パーティだ。さっきまでふざけ合いながら依頼を選んでたのをお姉さんも見ていたし、なんならこのギルドを4人パーティで利用してそろそろ5年ぐらいになるし。
「…えーと、こちら、戦士のデリック様、魔法使いのアナベル様、ヒーラーのユーリア様の3名パーティ。シーフのテオ様がソロでの2組の受託となっております…」
お姉さんがなんだか自信がなさそうに言う。3人が驚いたように僕を見るのがわかる。僕も驚いてる。なんか僕別パーティ扱いになってるらしい。
「…あー、とりあえずその依頼取っておいてもらえませんか。おい、パーティ組み直すぞ」
デリックが我に返って解決策を思いついたので、僕たちもそれに従うことにした。
「いや、おかしくない?なんで急にテオだけ外れるのよ」
「結成してから特に何事もなかったのに、不思議ですねぇ」
アナベルが怒り、ユーリアが首を傾げる。考えても分からないから3人がパーティ解散、ソロ4人になって再びパーティ結成する。
もう一度受付のお姉さんの所に行くと今度は4人で受託してもらえた。
不思議だねーなんて言い合いながら依頼を済ませて、それで終わればよかったんだけど。
「こちら、3人パーティとソロでの受託となっておりますが…」
3日後、同じお姉さんが同じことを遠慮がちに言う。
僕はとりあえずデリックの顔を見る。一応パーティのリーダーであるデリックの意見が聞きたい。
「…一度戻ります。依頼は元の場所に戻しといてくれると助かります」
僕の視線を受けてデリックが決めてくれる。
「ほら、机のとこ行こ」
アナベルが背中を押してくれる。先に立って進むデリックと、遠慮がちに僕の腕を引くユーリア。
ちょっと安心する。彼らを信じてないわけでは全く無いけど、これで2回目になるからね。僕がパーティ追放されてるの。
ギルドの中にある酒場の奥の方で席についていろいろ頼みながら話す。前回の依頼がまあまあ大きめな仕事だったから、少し仕事をサボるぐらいならしばらくお金の面では問題ない。
「どう考えてもおかしいでしょ2度目は!1度目でもありえないのになんでもっかいおんなじことが起きんのよ!」
いらいらと机を指で叩きながらアナベルが怒る。彼女は怒ると無意識に魔法を発動しがちだから、どうにかして宥めなきゃいけない。ビールとトマトの炒め物。彼女の好物を机に並べるととりあえずは静かになった。
「前回は結成し直せば問題なかったですよね。今回ももう1度同じようにしましょうか?」
「いや、それじゃ根本の解決にならねぇだろ。何度同じことが起きるか分からん」
デリックとユーリアがどうするか話し合ってくれる。居た堪れなくなって僕はノートを取り出した。
『なんかごめんね』
見せた文字にデリックは、僕のおでこを軽く弾き、ユーリアは、微笑んで首を振る。アナベルも僕の前にたくさんご飯を並べてくれた。
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