きっと私は悪役令嬢

麻生空

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そうだよ。
良くあるじゃん。

悪役令嬢がバッドエンド回避する為に男装するヤツ。

あれはストーリー判らなくっても成功する事受け合い。

安全性100%の回避ルートだ。

良く見ると私って中性的な顔立ちしているから行けるかもしれない。
それに、お兄様とは髪の色も瞳の色も同じ。
金髪に翡翠の瞳だ。

それに、事前の話では結婚するまで二年あると言うし、それまでの交流は月に一度のお茶会のみ。

前回だって初顔合わせなのに、ろくに会話もせず直ぐに帰ったのだし、ボロを出さずにルドルフ様を観察して最適なバッドエンド回避を模索するのも良い。

それに、実際に女の私に会わなければ免罪とか回避出来るかもしれないし、これ以上婚約者であるエリスに嫌悪感を彼の中で増やす事はないだろう。

あまつさえ、お兄様に成り済ました私と友情でも育めれば更にバッドエンド回避に繋がると思うのだ。

つまり、これは私にとっては利益しかない策になる。

なんて・・・、我ながらグッドアイデアなのだろうか。

前世で培ったオタク記憶に感謝しかない。
 

「ええっと、つまりルドルフ殿の性格を知りたいから私に成りすまして様子を見てみたいと言う事?」

きょとんと私の話を聞いたお兄様は確認するように私がお願いした内容を繰り返す。

「はい。あのご容姿なのに20歳まで浮いた話も、ましてや恋人もいらっしゃらずお父君の言いなりで婚約を結ぶなど、可笑しいとは思いませんか?きっと男同士ならその辺の話も聞けるかもしれません。婚約者の私が直に聞くより可能性があるかと」

多分婚約者がいないのそれは乙女ゲーム特有の強制的な何かだろうけど、問題はそこではない。

「ん~。彼とは直接会った事がないからエリスが納得して嫁げるのなら、私はいくらでも協力するよ。で?具体的に私は何をしたら良いのかな?」

全面的に協力する事を言ってくれた兄。

勿論、お願い事は簡単だ。

「来月から外交でお出掛けになるお父様に着いて行って頂きたいの」

そう。

半年程の行程で行く外交官としての父に。

「お父様の後を次ぐお兄様が『仕事を覚えたい』と言えば、お父様は何の疑いもせずに連れていってくれますわ」

そう。

万が一私が偽物だとバレない為に、お兄様には当分この国の外に行ってもらわなければ。

だって、そうしたら万が一私が偽物だとバレてもお兄様まで被害がおよぶ事はないだろうから。
それこそ私の単独犯になるだろうし。

「分かった。可愛い妹のお願いだからね。そろそろ私も腹をくくるとするか。父上に今夜にでも話してみるよ」

笑顔で応じてくれるお兄様。

「ありがとうございます」

そんなお兄様の為にも、絶対私がバッドエンドを回避して見せますわ。

それに、昼行灯なお兄様もそろそろ家督を継ぐ為に行動してもらわなくちゃね。
顔の身分が良くっても昼行灯では嫁ご来ないしね。
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