きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「すみません。思わず反射的に……」

ピクピクと床で行き絶え絶えとしているミランダさん。

結構完璧にきまってしまった。

「エリス。気にしないで何時もの事だから。それにかえって好都合だわ。ミランダが沈黙している内にドレスを着替えちゃいましょう。エリス、最初にドレスを脱いだら化粧を落として来てね。マーサお手伝いしてあげて」

カナリア様の言葉にマーサと呼ばれた侍女が前に出る。

「エリス様。此方へ」

そして、室内に入るとハンガーが有りそこで一旦ドレスを脱ぐ。

「では、此方へお座り下さい」

マーサの指示に従い椅子に座るとまんべんなくオイルを塗られて熱々のタオルで拭き取られる。
その後、もう一度熱々のタオルを顔に乗せられる。

最初のタオルでは気付かなかったが、今度のタオルは柑橘類の良い匂いがする。

ペタペタと顔に色々な液体を塗られマッサージのような感じに揉まれる。

『やだ、あまりにも気持ち良くって寝ちゃいそう』

だが、その至福の時間も直ぐに終わる。
「エリス様。こちらの服へお着替え下さい」

そう言って出されたのはルドルフ様が着ていて服を少し薄くしたような色彩の礼服だ。
隣に並べはお揃いなのは一目瞭然。
ペアルックとまでは言わないけど、どう見ても対で作られたのが分かる衣装だ。

「今までミランダ様がお着替えを覗く事をしたことがございませんので大丈夫です安心してお着替え下さい」
侍女は私が呆けていたのをミランダさんを警戒しての事だと思ったようだ。

いや、そうじゃない。
ルドルフ様とお揃いのデザインだったから固まっていたのだ。

「エリス。何をしているの?早く着替えて頂戴」

丁度ドレスを着替えたカナリア様が髪を結い直している所だった。
「あっ、はい」

流石は王族になった方だ、命令し慣れている。

私は観念してエドになる為の着替えを開始した。

袖を通して理解出来る程に良い素材。

エリスの時も思ったんだけど、この衣装と装飾にいったいいくらのお金が掛かっているのか?
それに、貴族の暗黙のルールで夜会において同じ服は二度は着ない事になっている。

普段着にはとても恐れ多くって着れないし、リサイクルして使うにしてもこの衣装の斬新さと言ったら……。

そう思っていると
「フフフフフ。何も気にしなくて良いのよ。その服は後でわたくしが有効活用しますから。その為にもエリスには麗しのエドを演じて貰いますわ」

どうやらカナリア様には私の考えは全てお見通しのようだ。

故に、私は深いため息を吐きながら着替えを始めたのだった。



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