前世αだったけどメス堕ちしたら今世はΩになってしまった僕の件

麻生空

文字の大きさ
3 / 10

2

しおりを挟む
この世界には男と女の他に第二の性がある。

上位種と言われるα
普通種と言われるβ
そして、種の底辺と言われるΩ

一般的にβは沢山いるがαやΩは稀少種でほんの一握りの人口しかいなかった。

また、αとΩが男女の性別関係なく妊娠する事が出来る為に同性結婚する者も多くいるが、βだけは男女の性別でしか繁殖出来ない。
基本的にαとΩは男性が多く女性は少なかった。
故に、αとΩは同性結婚が多いのだ。

その理由は分からないが、兎に角、Ωの女性はそれこそ稀で見つかればもれなくαに監禁される。
勿論、Ωの男性もαに比べれば数は少ない。
だからだろう、運命の番など都市伝説級の存在なのだと。

さてさて、話が大部反れたが結論から言えば、αもΩも美しい人種が多い為にβからしたらどちらも魅力的な存在でαは崇める存在、Ωはあくまでも性的対象なのだ。

何故ならαには生まれながらにして弱者を従わせる能力があるが、Ωは人を虜にする能力があるからだ。



ーーーーーーー

「嫌だ、僕を捨てないで……」
また、あの夢を見ている。
僕の前世の夢だ。

見たくもないのに何度も見てしまう

今日の夢はあの忌々しい僕の転機の日の夢だ。

………………

前世の僕はあの日、番でもある尊に呼ばれてαの支部へと赴いていた。
前日から仕事の為に泊まり込んでいた尊の着替えを持って僕は慣れた職場を歩いていた。

この世界はα至上主義で、世界のあらゆる箇所に支部を置きα以外の人種を管理しているのだ。

因みに、僕も番の尊もαで男同士の結婚だった。

添い遂げてから既に10年になる。

αはどちらも妊娠出来るけど、尊は専ら男役に徹していて何時も女になるのは僕だった。

基本的にα同士はなかなか妊娠しない。

大体にしてΩのような定期的なヒートも少ないし、何日もセックスしている訳でもないので、その辺にも理由があるのだろう。
因みにαの発情期はラットと言うんだけど、そのラットも他人のフェロモンで誘発されるという説が強いとされ、αの中でも上位に位置するαは定期的にヒートするΩを傍らに置く事が多い。
まぁ、Ωの数はαの数より少ないのでαの中でもより優秀な個体だけがΩを娶れるのだが。

尚、この第二の性で一番孕みやすいのはαとΩの番になる。
さらに運命の番なら尚更孕みやすいのだ。

支部長は現在50代に入っており何人ものΩを囲っている。
それ程に子孫を残す事を優先される優秀なαなのだ。

子供も数人いるらしく、皆優秀なαだと言う。
不思議とαとΩの番からはαが生まれやすく、国からもこの組み合わせは推奨させている。
が、例え推奨される組み合わせでもβが生まれる事もある。

受付で個人情報の入ったカードを提示すると支部長の部屋へと案内された。

一歩踏み込むと嫌に甘ったるい匂いに思わず眉間に皺が寄る。

この匂いには覚えがある。

「やぁ、泉君。良く来てくれたね」

そう言って僕を招き入れる支部長。

流石に50代だがαと言った所か、ナイスミドルである。

「尊に呼ばれて来たのですが、彼はまだ?」

普段なら支部長の部屋にはΩが最低でも一人は待機しているのに、それが今は後いない。
それどころか、先ほどから嫌な匂いが部屋中に立ち込めている。

嫌な予感がバリバリする。

「フフフ。尊君か……彼は昨夜から半年をかけた世界一周旅行に出掛けていますよ」

そう言って支部長は微笑む。

「世界一周?」

誰と?
半年も?

「君なら気付いているだろう?彼は今僕のΩと一緒だよ。彼が謂うには、なんでも運命の番なのだそうだ」

そう言って支部長は楽しそうに笑う。

嫌な予感がしてならない。

まさか、まさか尊が?
僕を捨てたのか?
じゃあ何で僕をここに呼んだんだ?

「それでね。妻との交換を条件に彼に僕のΩを与えたんだ。なんて優しいんだろうねぇ」

そう言ってペロリと自身の唇に舌を這わせる支部長。

「初めて見た時から美味しそうな子だと思っていたんだよ。薬学の申し子と言われる泉君」

支部長はαの中でも更に上位の存在だ。

気持ち悪いと思う反面、背く事も出来ない自分。

そうだ。
この後僕はこの人に……。

そして、僕の前世は番に裏切られてαなのにΩと同等な扱いに落とされてしまった。

ただ、ただ、メスになるだけの人生だったのだ。

αのプライドも何もかも取り上げられた。

裏切った尊だけが憎かった。


そんな僕はそれから15年後、一人の子供を産み落とした後、産後の肥立ちが悪くなって亡くなってしまったのだ。

「ごめんね……お前を一人の残してしまって……」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...