当て馬国王候補だと思っていたら何か違う

麻生空

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俺の一日のルーティンは、早朝野菜を店に運ぶ、そして品物を並べる。
母が惣菜を作っている間の店番。
早めの昼飯を食べて図書館で夕方まで勉強するか、小遣い稼ぎの薬草採取になったりする。

まぁ、薬草採取とは歩合制のアルバイトみたいなものだ。

薬草の採取は年から年中依頼があるので本格的な冒険者じゃなくても手軽に出来る仕事だ。

たまに採取に夢中になり魔獣と遭遇なんて事もあるが、何故か俺は魔獣と遭遇した事はないし、レアな薬草なんか見つけたりして比較的楽に小遣い稼ぎをさせて貰っている。

さて、今日は午後から何をしようか・・・。

そんな事を考えながら接客をしていると、父から声を掛けられた。

「ユキ、悪いがダンが今日出店を出しているからケチャップを神殿前の広場まで届けて欲しいんだ」

ダンとは義理の兄になる人で、俺の養い親の一人息子だ。

2年位前に修行と称して国中のお祭りを巡り出店を出している。

「家の料理の美味しさを広めたい」と豪語し各地を回っている。

前国王の崩御を聞いて兄は数日前に家へ戻って来た。

新しい国王候補が選ばれれば、城下は1ヶ月のお祭り騒ぎになるからだ。

「神殿前なんて、兄さん良い場所取れたんだな」

思わず感心してしまうのは致し方ない。

何せ、神殿前はメイン会場みたいなものだ。

数日前に帰って来た兄がどうやってそんな良い場所をゲット出来たのか不思議な位だ。

「まぁ、ちょいっと常連客のコネを使わせて貰ったがな」

どうやら黒幕は父らしい。

「ついでに、さっき茹で上がった落花生ってやつも持って行って売ってみるのも良いだろう」

落花生。
あれは酒のツマミに最適だ。
お祭りと来たらやっぱりアルコールは欠かせない。
変な商魂に火がつく。

「分かったよ父さん。ついでに兄さんの手伝いもして来るよ」

「おう、けどな、滅多にないお祭りだから手伝いはほどほどにして楽しんでこい。ほれ、調味料の入ったカバンに落花生の入ったカゴだ」

父が持ち上げた20L容量位のカバンにはパンパンに調味料が入っている様子で『これ絶対にケチャップだけじゃないだろう』と思わせるような重さがあった。
「もう祭りは始まっているから急いで持って行ってくれ」
「じゃあ行って来るよ」
「おう。頼んだぞユキ」
俺は父からカバンと籠を受け取ると急いで店を後にした。




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