当て馬国王候補だと思っていたら何か違う

麻生空

文字の大きさ
5 / 6

4

しおりを挟む
ユヌ国の神殿前広場に面した中央通りは横幅500mにもなる大きな通りだ。

その中央通りの真ん中の100mは、王公貴族が儀式の時に通る道となっている、通称『華道』がある。

儀式の間は王公貴族の通る道の横断は出来ない事になっているため、人々は極力中央は避けている。

そんな中央通りは人の波が途切れる事なくあふれ、今は一般人が極力避けている華道にまで人の波が出来ていた。

まぁ、かく言う俺も華道は極力避けるようには歩いている。

神殿の前の広場の手前から中央通りにかけて出店がひしめきあっており、人の出も多く、多くの客が手に食べ物を持ちながら広場を目指す。

俺は掻き分けるようにその群衆の中を歩く。

各店の呼び込みの声が活気をよんでいて、祭り気分ではないはずのこちらまで楽しくなってしまう。

まだまだ儀式が始まる正午までは時間があると言うのに既にこの賑わいはある意味凄い。

「これは早く兄さんの店に着かなきゃ」

いつもならとっくに神殿前の広場についているはずなのにこの想定外の人混みが俺の行く手を邪魔をする。

「こんな混むのなんて初めての見たよ。新年の慶賀祭より凄いな」

この国では新年に入った3日間は色々な祝いの行事を神殿前の広場でする為にお祭りと化す。

その時よりも今日は人で賑わっているのだ。

そのもっともな理由が貴族だろう。

新国王を決めるための大切な儀式のために、各領地から集まった貴族達。

勿論、集まった貴族達の中には自分こそが次期国王だと思っている者もいるだろうが、大概は国王候補に選ばれた者と縁を結ぶ為に集まっているのだと思う。

「まぁ、コネは大切だけどさぁ、っと、感心している場合じゃない急がなきゃ」

人混みを掻き分けながら何とか前に進み、ようやく広場に着いたのは11時を過ぎた頃だった。

「ユキ」

聞き慣れた兄の声に辺りを見渡せば、頭一つ大きな黒が見えた。

「兄さん」

兄の店は広場の入り口の所にあった。

店の敷地も広くあの父がどんだけのコネで場所取りをしたのか是非聞いてみたいと思ったほどだ。

店先から俺に手を振っていた兄は応対していた客に品物を渡すと俺の方へと駆け寄って来る。

「ユキ、少しは大きくなったか?」

数日前に帰って来ていた兄とはずっとすれ違っており、会うのは2年振りだ。

兄とは頭2個分大きさの違う俺の頭を豪快に撫でる。

「相変わらず、男のくせにちっちゃいなぁ~、まぁ、兄としては可愛い弟は嬉しいぞ」

そう言って俺の肩を持つ。

「もう少し大きくなるようにいっぱい食わせてやるからな。取り敢えずこれを食え」

そう言って紙包みに入れた状態で寄越されたのは馴染みのあるハンバーガーだ。


数年前に兄に教えてからやたらと兄ははまってしまった。

今では色々なアレンジをきかせている。

「そうだ。ケチャップとか色々調味料持って来たんだ」

俺はそう言うとリュックごと兄に調味料を手渡す。

「サンキュウ、ユキ。そろそろ材料がヤバかったんだ」

何せこの国ではトマトは悪魔の実と言われて恐れられているためにトマトの加工品は存在していなかった。

密かに俺が栽培して加工までしている秘密の調味料だ。

「隣の国で手に入れた調味料もそろそろなくなってしまう所だったから助かるよ」

何度も言うが、トマトが悪魔の実と言われて嫌われているのはこの国だけだ。

「極秘ルートだからな。他の同業者には秘密だよ」

「ああ、分かっている」

そう言って兄は笑った。

その時、丁度正午の鐘が神殿から鳴り響き華道から貴族達が入場して来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)

かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。 はい? 自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが? しかも、男なんですが? BL初挑戦! ヌルイです。 王子目線追加しました。 沢山の方に読んでいただき、感謝します!! 6月3日、BL部門日間1位になりました。 ありがとうございます!!!

博愛主義の成れの果て

135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。 俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。 そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。

[離婚宣告]平凡オメガは結婚式当日にアルファから離婚されたのに反撃できません

月歌(ツキウタ)
BL
結婚式の当日に平凡オメガはアルファから離婚を切り出された。お色直しの衣装係がアルファの運命の番だったから、離婚してくれって酷くない? ☆表紙絵 AIピカソとAIイラストメーカーで作成しました。

遊び人殿下に嫌われている僕は、幼馴染が羨ましい。

月湖
BL
「心配だから一緒に行く!」 幼馴染の侯爵子息アディニーが遊び人と噂のある大公殿下の家に呼ばれたと知った僕はそう言ったのだが、悪い噂のある一方でとても優秀で方々に伝手を持つ彼の方の下に侍れれば将来は安泰だとも言われている大公の屋敷に初めて行くのに、招待されていない者を連れて行くのは心象が悪いとド正論で断られてしまう。 「あのね、デュオニーソスは連れて行けないの」 何度目かの呼び出しの時、アディニーは僕にそう言った。 「殿下は、今はデュオニーソスに会いたくないって」 そんな・・・昔はあんなに優しかったのに・・・。 僕、殿下に嫌われちゃったの? 実は粘着系殿下×健気系貴族子息のファンタジーBLです。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】王弟殿下の欲しいもの

325号室の住人
BL
王弟殿下には、欲しいものがある。 それは…… ☆全3話 完結しました

オークとなった俺はスローライフを送りたい

モト
BL
転生したらオークでした。豚の顔とかマジないわ~とか思ったけど、力も強くてイージーモードじゃん。イージーイージー!ははは。俺、これからスローライフを満喫するよ! そう思っていたら、住んでいる山が火事になりました。人間の子供を助けたら、一緒に暮らすことになりました。 子供、俺のこと、好きすぎるのやめろ。 前半ファンタジーっぽいですが、攻めの思考がヤバめです。オークが受けでも別に大丈夫という方のみお読みください。 不憫オークですが、前向きすぎるので不憫さは全くありません。 ムーンライトノベルズでも投稿しております。

死に戻り毒妃の、二度目の仮婚 【オメガバース】

飛鳥えん
BL
国王を惑わし国庫を浪費した毒妃として処刑された日から、現世の14歳に戻ってきたシュメルヒ。 4年後、王族にしか生まれないオメガで<毒持ち>のシュメルヒは、父王の命令で、8歳の妹ナーシャ王女の許嫁のもとへ、成長するまでの中継ぎの仮妃として輿入れする。それは前世の運命をなぞるものだった。 許嫁のヨアンは14歳。後に暗君として幽閉される。 二度目の人生を送り始めたシュメルヒは、妹のため、祖国のため、そして処刑を免れるため、ヨアンを支えることにしたが、彼の<悪い気の病>には不審な点があり……。 一方シュメルヒ自身も、<毒持ち>であるがゆえか、これまで発情(ヒート)を経験したことがない不完全な王族のオメガであるという負い目を抱えていた。 <未来の妹の夫>にふさわしく成長して欲しいシュメルヒと、人間離れした美貌と澄ました表情に反して、寂しがり屋で世間知らず、やや情緒未発達な仮妃を愛するようになっていく年下皇帝のすれ違いラブストーリー。(最初の頃の攻は受を嫌っていて態度が悪いのでご注意くださいませ) ~8/22更新 前編終了~

処理中です...