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8騎士団長ハイン・リトー
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食事が終わると私達は騎士団を統括している近衛騎士団の執務室へと赴いた。
「これは王妃様。このようなむさ苦しい所へようこそおいで下さいました」
恭しく頭を下げたのは近衛騎士団の団長を勤めるハイン・リトーだ。
因みに団長は将軍の下に位置している。
基本的に将軍職は王族がなるらしいので、実質騎士団のナンバーワン、全ての騎士団を取りまとめているブレーンだ。
王族直属である所の近衛騎士団に入れる者は、厳選に厳選を重ねたスーパーエリート集団なのだ。
つまり、家柄良し、性格し、文武両道。
ついでに見た目も良いとの話。
しかし、性格が本当に良いのかは疑問の残る所でもあるんだが。
余談になるが、リトー家は公爵家で王妃様のご実家のゼファ公爵家と肩を並べる程の有力貴族でもあそうだ。
「ハインったら、相変わらずムズカシイ顔をしているのね」
ハインは現在40代後半で現公爵閣下でもある。
勿論妻帯していて息子も騎士団に入っているらしいのだが、父親と同じ隊には入りたくないと近衛騎士団入りを見合わせている所らしい。
あくまでも息子本人の余談なのだが。
「元からでございますれば」
ハインは意にも反さないようにそう応えた。
それと、ハインは若い頃から陛下と仲が良かったとも聞いている。
だから、きっと王妃様とも顔見知りなのだろう。
「まぁ、ハインったら他人行儀なのね」
フフフと扇で口許を隠しながら笑う王妃様に、ただただ頭を下げるハイン。
「昔のようにベスとは呼んでくれないのかしら」
王妃様のお名前は確かエリザベス。
ベスとは愛称の事だろう。
「まさか……陛下の奥方様をそのようにお呼びするなど、恐れ多い」
再度恭しく畏まるハイン。
ある意味、中間管理職の辛い所だ。
そして、どうやら王妃様とは幼なじみのご様子。
きっと昔からこんな感じに振り回されていたのだろう。
「大変だなぁ~」と真面目に哀れんでしまいそうになる。
「言葉遊びはこれくらいにしましょう。ハイン、今日ここに来たのはこの子」
王妃様はそう言うと私の腕を掴む。
「名をルーク・ゼファと言うの私の甥なのよ」
その言葉にハインは私を見る。
細められたその瞳で
「はて、ルークと言う名は今初めてお聞きしましたな」
と訝しげに王妃様を見た。
「ええ、そうよ。元々体が弱くってね。15歳になるまで田舎で療養していたの。王都には初めて来たのよ」
「成る程、体の弱い子供でしたら納得です」
そう。
体の弱い子供は何時死ぬか分からない為に隠匿される事もある。
成人する頃に丈夫になって社交界に出て来る事も稀にあるのだ。
しかしその実、養子を実子として、妾の子供を正妻の子として便宜を計る時にも用いられたりする。
この場合はどちらにも当てはまらない。
だって、私はルーク・ゼファとして生きる訳ではなく、妾としての三年間の資金確保のための便宜なのだから。
「だからハイン。せっかくだから騎士団で鍛えて欲しいのよ。これが応募用紙ね」
そう言って、先程打ち合わせした時に書いた書類を団長の方へと差し出した。
「お兄様からはくれぐれもとお願いされているから、当分はアルフをルークに着けてくれないかしら。やっぱり身内に見て貰った方が私も安心なのよ。何せお兄様からくれぐれもと直々にお願いされたのだから」
満面の笑顔の王妃様が怖い。
凄いゴリ押しである。
「……判りました。王妃様の杞憂を取り除くのも騎士団の務め。そのように取り計らいます」
大きなため息の後のハインの言葉に、王妃様はニコリと笑った。
「ありがとう。ハイン。持つべき者はやはり話の通じる幼なじみねぇ」
あぁ……これは悪い意味の幼なじみだ。
きっとこんなゴリ押しは一度や二度ではないのだろう。
瞬時にそう思った私は団長に心の中で『御愁傷様です』と手を合わせていた。
「これは王妃様。このようなむさ苦しい所へようこそおいで下さいました」
恭しく頭を下げたのは近衛騎士団の団長を勤めるハイン・リトーだ。
因みに団長は将軍の下に位置している。
基本的に将軍職は王族がなるらしいので、実質騎士団のナンバーワン、全ての騎士団を取りまとめているブレーンだ。
王族直属である所の近衛騎士団に入れる者は、厳選に厳選を重ねたスーパーエリート集団なのだ。
つまり、家柄良し、性格し、文武両道。
ついでに見た目も良いとの話。
しかし、性格が本当に良いのかは疑問の残る所でもあるんだが。
余談になるが、リトー家は公爵家で王妃様のご実家のゼファ公爵家と肩を並べる程の有力貴族でもあそうだ。
「ハインったら、相変わらずムズカシイ顔をしているのね」
ハインは現在40代後半で現公爵閣下でもある。
勿論妻帯していて息子も騎士団に入っているらしいのだが、父親と同じ隊には入りたくないと近衛騎士団入りを見合わせている所らしい。
あくまでも息子本人の余談なのだが。
「元からでございますれば」
ハインは意にも反さないようにそう応えた。
それと、ハインは若い頃から陛下と仲が良かったとも聞いている。
だから、きっと王妃様とも顔見知りなのだろう。
「まぁ、ハインったら他人行儀なのね」
フフフと扇で口許を隠しながら笑う王妃様に、ただただ頭を下げるハイン。
「昔のようにベスとは呼んでくれないのかしら」
王妃様のお名前は確かエリザベス。
ベスとは愛称の事だろう。
「まさか……陛下の奥方様をそのようにお呼びするなど、恐れ多い」
再度恭しく畏まるハイン。
ある意味、中間管理職の辛い所だ。
そして、どうやら王妃様とは幼なじみのご様子。
きっと昔からこんな感じに振り回されていたのだろう。
「大変だなぁ~」と真面目に哀れんでしまいそうになる。
「言葉遊びはこれくらいにしましょう。ハイン、今日ここに来たのはこの子」
王妃様はそう言うと私の腕を掴む。
「名をルーク・ゼファと言うの私の甥なのよ」
その言葉にハインは私を見る。
細められたその瞳で
「はて、ルークと言う名は今初めてお聞きしましたな」
と訝しげに王妃様を見た。
「ええ、そうよ。元々体が弱くってね。15歳になるまで田舎で療養していたの。王都には初めて来たのよ」
「成る程、体の弱い子供でしたら納得です」
そう。
体の弱い子供は何時死ぬか分からない為に隠匿される事もある。
成人する頃に丈夫になって社交界に出て来る事も稀にあるのだ。
しかしその実、養子を実子として、妾の子供を正妻の子として便宜を計る時にも用いられたりする。
この場合はどちらにも当てはまらない。
だって、私はルーク・ゼファとして生きる訳ではなく、妾としての三年間の資金確保のための便宜なのだから。
「だからハイン。せっかくだから騎士団で鍛えて欲しいのよ。これが応募用紙ね」
そう言って、先程打ち合わせした時に書いた書類を団長の方へと差し出した。
「お兄様からはくれぐれもとお願いされているから、当分はアルフをルークに着けてくれないかしら。やっぱり身内に見て貰った方が私も安心なのよ。何せお兄様からくれぐれもと直々にお願いされたのだから」
満面の笑顔の王妃様が怖い。
凄いゴリ押しである。
「……判りました。王妃様の杞憂を取り除くのも騎士団の務め。そのように取り計らいます」
大きなため息の後のハインの言葉に、王妃様はニコリと笑った。
「ありがとう。ハイン。持つべき者はやはり話の通じる幼なじみねぇ」
あぁ……これは悪い意味の幼なじみだ。
きっとこんなゴリ押しは一度や二度ではないのだろう。
瞬時にそう思った私は団長に心の中で『御愁傷様です』と手を合わせていた。
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