最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

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【第二章】婚約者編

6. 王子様の無理な要求

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 次の日……

 魔導士団では案の定、レオン様を巡って大騒ぎになっていた。大騒ぎというより、大笑いだ。強いレオン様は確かに憧れの対象ではあるが、第二魔導士団ではネタの対象でもあった。

「ローザ。あんなにも殿下を邪険に扱って、可哀想だよ」

 みんなは言う。
 邪険に扱う?もちろん、そんなつもりはなかったのだが。

「殿下がローザにベタ惚れなのは分かるけど、ローザがいつも淡白だからね」

 それは分かる。私だって、レオン様のことはちゃんと好きだ。だが、みんなの前でベタベタするのが恥ずかしいとか、色々考えてしまうのだ。この世界に来てから随分前向きになったが、陰キャの名残みたいなものは完全に消えないようだ。

「もう!ローザってばツンデレなんだから!」

 ツンデレか……確かにツンデレなのかもしれない。だけどみんなの言う通り、もう少しレオン様に対して素直にならなきゃいけない、なんて思った。

 今日会ったら、昨日のお礼をちゃんと言おう。そして、レオン様に会えて嬉しいだなんて、素直に言ってみよう。そう意気込んだが……




 部屋に入ると、レオン様とマリウス様が難しい顔をしていた。甘いだとかそんなもの、皆無だ。

「ご、ごきげんよう」

 王太子妃教育によって、王族の礼儀を叩き込まれた私はそう挨拶するが、

「ローザ」

レオン様は悩ましげな顔のまま、私を呼んだ。その声から、今は甘い雰囲気ではないことを思い知る。


「私はあれから、マリウスと埋め込まれていた機械を分解した。
 だが、私たちは機械に疎く、何も分からなかった。
 誰か機械について熟知している、優秀な人がいればいいのだが……」

 私だって文系のため、機械についての知識はゼロだ。悔しいが、役に立てないだろう。あれは何かの受信機で、受信機を付けている人を誰かが遠隔操作しているということは何となく想像がつくのだが……

 ここでふと思った。
 リリーの幼馴染はどうだろう。彼は機械を学ぶためにグルニア帝国で、機械工をしているとリリーから聞いた。

「レオン様。機械については、私もお力になれそうにありません。
 ……ですが、リリーの知人に心当たりがあります」

「本当か、ローザ」

 私の言葉に、レオン様は嬉しそうに顔を輝かせる。だが、肝心なことを忘れてはいけない。

「ただ、その人は今、グルニア帝国にいるようです。グルニア帝国と連絡を取るということは、ロスノック帝国が危険にさらされるかもしれません」

「その通りだ、ローザ。でも、方法がないのだ」

 レオン様は静かに告げる。

「私はどんな方法でもいい。ただ、国民が幸せに暮らして欲しい。
 そして、ローザを危険な目に合わせたくない」

 こんな正義感溢れるレオン様に、私は惚れたのだ。頭のネジが外れてしまっても、締めるべきところはしっかり締める、それがレオン様だ。こんなレオン様が大好きだ。

「それでは、リリーに聞いてみます」

 そう告げる私を、レオン様は机の上で手を合わせて見ている。急にじっと見られて、どぎまぎしてしまう私。この視線は……甘々モードか?レオン様はまた平常運転に戻ったのだろうか?

 甘い視線に耐えられず目を逸らした私に、レオン様は言う。

「ローザ、君は私の婚約者だ。
 君は私と一番距離が近くなければならないのに、むしろ魔導士団や騎士団の者と仲良くしている」

 ……は?
 いきなりがらっと変わったその話題に、私はついていけない。今度はレオン様、何を考えているのだろう。

「昨夜、レオナルドとなっている私に、ローザは親しく話しかけた。私は君との距離が縮まったと喜んだのだが、今はまた他人行儀に戻っている」

 確かに私は猿芝居をした。だがそれは、あくまで猿芝居であった。そもそも、レオン様と親しくするのは違うと思う。レオン様はロスノック帝国の王太子である。王太子妃は、国王や王太子に敬意を持って接さなければならないと、王太子妃教育でも教わった。

 だから私は告げる、

「レオン様は王太子だからです。私は婚約者ですが、王太子に仕える者です」

 本来ならば、レオン様と馴れ馴れしく呼ぶことすら失礼なのだ。
 だが、レオン様は私の言葉にさらに腹を立てたようだった。悲しげな顔で、私に告げる。

「私は、夫婦というものは、対等な関係だと思っている。お互い支え合って生きていくものだろう」

「その通りですが……」

「ならば、私のことは親しみを持って、レオンと呼び捨てにして欲しい」

 ちょっと待って。それはさすがに無礼だろう。レオン様はさらに頭が狂ってしまったのだろうか。

「それと、私のことは敬わず、対等に話して欲しい」

「そ……それは行き過ぎた要求です」

 苦し紛れに告げる。つまりレオン様は、私の故郷の夫婦みたいに、レオン様を呼び捨てにしてタメ口で話せと言っているのだろう。そんなこと、周りの目が痛過ぎて出来るはずもない。

「どうしても無理だと言うのなら、せめて二人の時くらい……」

 返事が出来ない私は、すがるようにマリウス様を見る。礼儀作法にうるさいマリウス様なら、駄目だと言うだろう。それなのに、マリウス様は無視を決め込んで、何かの書類に見入っている。……わざとだ!

「さあ、ローザ。練習だ。私の名前を呼んでくれ」

 そんなに甘く言わないで欲しい。ドキドキが止まらなくなるから。マリウス様がいるというのに、求めてしまいそうになるから。

「レオン……様……」

 頑なに言うことを聞かない私を見て、レオン様は拗ねたように口をへの字に曲げる。そして、ゆっくりと立ち上がって歩いてくる。その瞳は甘ったるく……駄目なやつだと思った。レオン様は、意地悪な仕返しをする気満々だ。

「ローザ。私の名を呼んでくれ」

 甘く掠れた声で囁き、私の前に座る。

「呼ばないと、今ここで抱く」

「そ、そんな!!めちゃくちゃな……」

 レオン様は妖艶に笑い、ゆっくり顔を近付ける。だから私はパニックを起こしつつ声に出す。

「レオ……ン……」

 その瞬間、唇を塞がれる。甘い甘いキスが降り注ぐ。唇が離れると、私は真っ赤な顔をして肩で息をしていた。そんな私を見つめ、彼は甘くて低い声で囁き、頭を撫でた。

「いい子だ」

 ほら、結局主従関係が成り立っているじゃないの!


 マリウス様が遠くで咳払いをした。それで、マリウス様がいたことを思い出して真っ赤になる。

「マリウス様に見られちゃったじゃないの!恥ずかしい……」

 真っ赤な顔を押さえる私を見て、レオン様、いやレオンは満足そうに微笑んだ。

「それでいいんだ」



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