最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

文字の大きさ
46 / 78
【第二章】婚約者編

7. リリーの幼馴染は日本にいる

しおりを挟む
「ローザ。乗馬が上手になったな。でも、君には車があるだろう」

 宮廷内の乗馬場で、ようやく馬を乗りこなせるようになった私に、彼は言う。私は馬から降りて、苦笑いしながら告げた。

「この街を車で走ったら、いよいよ変な目で見られちゃう。私が変な目で見られると、レオンの評判にも響くでしょう?」

「いや、そんなことはない。私は評判なんて気にしない。
 むしろ、私も車を運転したい」

「そっか。じゃあ、今度ドライブでも行きたいね」


 対等な関係を意識してから、私とレオンの関係はまた変わった。私はリリーと同様に気兼ねなく話すようになり、彼も喜んでそれを受け入れてくれた。なんだか本当のカップルになったみたいだ。陰キャの私は信じられない気持ちでいっぱいだが。

 そんななか、リリーが現れる。

「レオン様、私をお呼びでしたか」

「そうだ。少し話がある」

 そう言って、彼はリリーに聞いた。グルニア帝国の機械に詳しい人は知らないかと。
 リリーは少し困惑した顔で告げる。

「申し訳ありません。……私は知りません」

「だが、ローザはリリーの知人を頼ってはどうかと言った」

 リリーは困ったように私を見る。リリーだってきっと、彼のことだと分かっているだろう。だけど、会いたくないのかもしれない。リリーは彼にずっと密かに恋をしているのだから。あまり彼のことを話さないリリーだが、一度だけ私に教えてくれた。今はグルニア帝国で機械工をしているという幼馴染を、リリーは好きだと。

 私は今、こんなにも幸せだ。だから、リリーにも幸せになって欲しい。リリーの恋も国の問題も解決出来るのなら、彼に会うしかないだろう。何と言っても、レオンだって乗り気だ。

 私はリリーに告げる。

「リリー。私は、この問題を解決出来るのは、彼しかいないと思うの」

「でもローザ……彼はグルニア帝国にいるのよ?
 もしかしたら、何か良くないことが起こるかもしれない」

「それは彼に会ってみないと分からない。だが、会ってみる価値はあると思うのだ」

 リリーは浮かない顔をしている。そして、言いにくそうに告げた。

「それでも私は、彼に会いたくないです」

 ……え? 

「私は彼に嫌われていると思います。だから会うのが辛いです」

 私はリリーと彼の関係を、深く考えていなかった。いい関係なのだろうと、勝手に思っていた。私は愚かだ。大好きなリリーに、辛い思いをさせてしまうなんて。

 しばらく沈黙が訪れた。やがて口を開いたのは、レオンだった。

「それなら、ローザと私で会いに行ってみよう。私たち二人なら、グルニア軍に襲われても車で上手くやっつけられるだろう」

「れ、レオン様!車はそんなに万能ではありませんし、車でグルニア帝国に行ったら目立ちます!」

 私は慌てて告げる。彼は車をすごい戦車か何かだと勘違いしているのだろうか。ボタンを押せば、ミサイルでも出ると思っているのだろうか。


 こんな私を、レオンは少し不貞腐れたように見る。きっと、今までのように敬語で話したからだろう。だけど私は、リリーの前でイチャつくことなんて出来ない。だいいち、『二人の時だけ』の約束だったから、これでいいんだよね?

 わざとらしくため息をついて、レオンは言った。

「まず、彼宛てに手紙を出すとしよう。それで動向を探り、会えるようなら会ってみる。
 私はこの国にグルニア帝国の手が入り込んでいるのが非常にまずいと思うし、ローザを危険な目に遭わせたくないのだ」

 



 こうして、レオンはリリーの幼馴染宛てに手紙を出した。リリーによると、幼馴染の名はハンスというらしい。グルニア王国の王宮近くの機械研究所で、機械工をしているとのことだ。

 そして手紙は数日後に返ってきたのだが、差出人はハンスではなかった。
 
『グルニア王国立 機械研究所 シリル』

 その手紙には、シリルの綺麗な文字で、びっしりと字が書かれていた。



『拝啓 ロスノック帝国 王太子殿下


 ハンスが不在のため、私が代わりに返信させていただいたことをご容赦ください。

 ハンスがこの世界を去ってから、六年が経っています。ハンスは今、機械が著しく発展した異世界の国におり、グルニア帝国に帰ってくる予定はないのです。

 殿下もご存じの通り、グルニア帝国は混乱しています。国民は貧窮し、どれだけ成果を上げても報われることはありません。そのため、ハンスはこの世界に絶望を抱き、異世界へと旅立っていきました。』


 胸がどきりとする。
 機械が著しく発展した異世界というのは……まさか……


『異世界へは、私の自宅にある装置から転送することが可能です。
 ただ、異世界にいられる時間は、三日間のみです。
 殿下がどうしてもハンスに会いたいようでしたら、私は三日間だけ協力することが出来るでしょう。

 グルニア帝国から、ハンスと王太子殿下のますますのご活躍を祈って    シリル』



 予想外の展開だ。リリーの慕う相手ハンスは、この世界にいないだなんて。しかも、異世界……おそらく、私の故郷にいるだなんて。

 唖然とする私に、レオンは聞く。

「ローザ、どう思う?」

 私は手紙を持ったまま震えていた。

「異世界って……私の故郷のこと……かな?」

「私もそう思う」

 レオンは静かに告げた。

「この文面からも、ハンスはグルニア帝国を捨てたことが分かる。シリルも予想外に協力的だ。
 私は、ハンスに会いに行こうかと思う」

 そう言うのは分かっていた。レオンは危険を省みず、国のために尽くす人だから。私だって、出来ることなら呪われた故郷に戻りたくはない。だけど、あの世界に、あの世界のことを何も知らないレオン一人で行かせるわけにはいかない。

「私も一緒に行きます」

「だが、君を危険な目に遭わせたくない」

 そう言われるのも分かっていた。だけど、何もかもをレオンが一人で背負うのはいけない。今までも十分背負ってきたのだから。

「私は王太子妃になるんだよね?私たちは対等な関係なんだよね?
 それじゃあ、私にも決定権はあります。

 ……私は、レオンと異世界に行く!」

 レオンは私を見て、泣きそうな顔で笑った。きっと彼も心細かったのだろう。だけど、私を心配するあまり、一人で背負い込むことに決めたのだろう。

「ローザ……ありがとう」

 レオンは口元を緩めて私を見る。いつもは凛として弱みを見せないレオンが、こうも私に全てを曝け出してくれている。それがとても嬉しい。
 私は一歩また一歩と、レオンと夫婦になる道へと近付いている。

「何があっても必ず君を守るから」

 ぎゅっと抱きしめられ、優しいキスが舞い降りる。その体を抱きしめながら、私は幸せを感じていた。

 


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

聖女なんかじゃありません!~異世界で介護始めたらなぜか伯爵様に愛でられてます~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
川で溺れていた猫を助けようとして飛び込屋敷に連れていかれる。それから私は、魔物と戦い手足を失った寝たきりの伯爵様の世話人になることに。気難しい伯爵様に手を焼きつつもQOLを上げるために努力する私。 そんな私に伯爵様の主治医がプロポーズしてきたりと、突然のモテ期が到来? エブリスタ、小説家になろうにも掲載しています。

本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜

あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい! ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット” ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで? 異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。 チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。 「────さてと、今日は何を読もうかな」 これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。 ◆小説家になろう様でも、公開中◆ ◆恋愛要素は、ありません◆

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

「無能」と捨てられた少女は、神の愛し子だった――。 凍てつく北の地で始まる、聖獣たちと冷徹公爵による「世界一過保護な」逆転生活。

秦江湖
恋愛
魔法適性「鑑定」がすべてを決める、黄金の国ルミナリス。 名門ベルグラード公爵家の末娘アデリーンは、十五歳の鑑定式で、前代未聞の『鑑定不能(黒の沈黙)』を叩き出してしまう。 「我が家の恥さらしめ。二度とその顔を見せるな」 第一王子からは婚約破棄を突きつけられ、最愛の三人の兄たちからも冷酷な言葉とともに、極寒の地「ノースガル公国」へ追放を言い渡されたアデリーン。 着の身着のままで雪原に放り出された彼女が出会ったのは、一匹の衰弱した仔狼――それは、人間には決して懐かないはずの『伝説の聖獣』だった。 「鑑定不能」の正体は、魔力ゼロなどではなく、聖獣と心を通わせる唯一の力『調律師』の証。 行き倒れたアデリーンを救ったのは、誰もが恐れる氷の公爵ゼノスで……。 「こんなに尊い存在を捨てるとは、黄金の国の連中は正気か?」 「聖獣も、私も……お前を離すつもりはない」 氷の公爵に拾われ、聖獣たちに囲まれ、これまでの不遇が嘘のような「極上溺愛」を享受するアデリーン。 一方で、彼女を捨てた黄金の国は、聖獣の加護を失い崩壊の危機に直面していた。 慌ててアデリーンを連れ戻そうとする身勝手な王族たち。 しかし、彼らの前には「復讐」の準備を終えたアデリーンの兄たちが立ちはだかる。 「遅いよ。僕らのかわいい妹を泣かせた罪、一生かけて償ってもらうからね」 これは、すべてを失った少女が、真の居場所と愛を見つけるまでの物語。

【完結】異世界召喚 (聖女)じゃない方でしたがなぜか溺愛されてます

七夜かなた
恋愛
仕事中に突然異世界に転移された、向先唯奈 29歳 どうやら聖女召喚に巻き込まれたらしい。 一緒に召喚されたのはお金持ち女子校の美少女、財前麗。当然誰もが彼女を聖女と認定する。 聖女じゃない方だと認定されたが、国として責任は取ると言われ、取り敢えず王族の家に居候して面倒見てもらうことになった。 居候先はアドルファス・レインズフォードの邸宅。 左顔面に大きな傷跡を持ち、片脚を少し引きずっている。 かつて優秀な騎士だった彼は魔獣討伐の折にその傷を負ったということだった。 今は現役を退き王立学園の教授を勤めているという。 彼の元で帰れる日が来ることを願い日々を過ごすことになった。 怪我のせいで今は女性から嫌厭されているが、元は女性との付き合いも派手な伊達男だったらしいアドルファスから恋人にならないかと迫られて ムーライトノベルでも先行掲載しています。 前半はあまりイチャイチャはありません。 イラストは青ちょびれさんに依頼しました 118話完結です。 ムーライトノベル、ベリーズカフェでも掲載しています。

想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…

宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。 いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。 しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。 だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。 不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。 差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、 彼女は“自分のための人生”を選び初める。 これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。

処理中です...