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彼と私の必死な攻防戦
第16話
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次の日。
私はフリードと、ジルを含む数人の護衛の騎士たちと、ヤヌース伯爵領へと旅立った。
ヤヌース伯爵領にはいい思い出がない。私は虐げられ、必死で我慢して生きていたのだ。今思えば、もう少し反撃でもすれば良かったのかもしれない。だが、反撃したところで、私にプラスには働かなかったのも事実だ。お義母様は私を憎んでいたし、お父様もお義母様の味方だった。あの地には、ヒューゴ以外心を許せる人もいなかったのだ。私はまるで、鳥籠に入れられた鳥だった。
ハンスベルク辺境伯領に来て、私は自由を知った。野蛮人と言われながらも人々に受け入れられ、自分の思うように生きることを知った。私はもう、以前の私ではない。
「どうした、メリッサ。浮かない顔をしているが」
道中、フリードに聞かれ、
「ううん、何でもないの」
私は答える。
「ただ、ヤヌース伯爵領にいるよりは、ハンスベルク辺境伯領にいたほうが幸せだろうな、なんて思ってしまって」
「そうか」
フリードは静かに頷いた。
「それなら大人しく、俺と結婚するべきだな」
どうやらフリードは私を解放してくれるつもりはないらしい。頭のダメージは相当なものだったのだろう。それか……もし仮に頭が狂ったわけではないのなら、この対応の変化はなぜだろう。
考えれば考えるほど、フリードが分からなくなるのだった。
馬は馬車よりもずっと快適だった。ハンスベルク辺境伯領の駿馬は、すごい勢いで山道を駆け下りていった。ハンスベルク辺境伯領は凍るような寒さだったが、ヤヌース伯爵領に着く頃には随分と暖かくなっていることに気付く。やはり、ハンスベルク辺境伯領は私の故郷とは気候が違うのだ。
そして、暖かな日差しの中、遠くにヤヌース伯爵領の街が見え始める。帰りたくもないこの地に、こうも早く戻ることになるなんて。私は必死で何事もないことを祈るばかりだった。私が虐げられて生活をしていたことを知ると、フリードはきっと私を嫌いになるだろう。……嫌われるのは嬉しいが、胸がちくりとするのだった。
周りに家が立ち並び、馬の足が遅くなった頃、私は耐えきれずにフリードに告げる。
「あっ、あのね!私……家族には会いたくなくて」
こんな私を、フリードは怪訝な顔で見る。
「べ、別に会いたい友達がいて!」
そう告げると、フリードは表情一つ変えず私に告げる。
「それなら、メリッサは友達に会ってきたらいい。
俺は俺で、ヤヌース伯爵に話がある」
どんな話だろう。それはそれで気になるが、ヤヌース伯爵邸なんかに行ったら、またラファエラの格好の餌食になるだろう。
「うん、分かった」
頷きながら、私はフリードに告げる。
「ありがとう、フリード」
私がそう言うと、フリードは微かに笑ってくれる。ほんの僅かな笑顔だが、こんなフリードが好きだ。
「メリッサにも念のため護衛を付けておこう」
いや、大丈夫だよ。私は強いから……と言おうとしてふと思った。ラファエラがまたとんでもないことをしでかしてくるかもしれない。私の味方になってくれる人がいたら心強いのも確かだ。
「じゃあ、ジルがいい」
仲良しのジルなら、私が酷く罵られても笑って流してくれるに違いない。面倒なことも起こさないだろう。
フリードは不満そうに私を睨む。怯んでしまうほどの殺気に満ちた視線だ。そして低い声で唸るように聞いた。
「どうしてお前はいつもジルなんだ!? 」
「だって、ジルなら話しやすいし……」
「……そうか」
フリードはまだ納得していないようだった。だが、私の護衛をジルがするという頼みを聞いてくれる。そしてジルを睨みながら告げた。
「変な気起こすなよ」
「いや、起こすはずないって!」
私は慌ててジルのフォローをする。そもそも、ジルは私を野蛮人だと言って笑うのだ。フリードの私に対する気持ちと同じく、ジルにすら女性だと思われていないのだ。
私はわざとらしくフリードに聞く。
「もしかして、フリード妬いてるの? 」
すると、フリードは口元を少し緩めて言ったのだ。
「そうだ」
……は!?
私、冗談のつもりで聞いたのに。フリードがお前になんて興味がないと言うと思って、聞いたのに。それなのに、そうだってなに!?
自分で種を蒔いておきながら、フリードの返事にドキドキする。フリードこそ冗談を言って、私をからかっているのだろう。そう分かっているのに、私はこうもフリードの一挙一動に狂わされている。
ねえ、フリード。冗談って言って!!
だが、フリードは冗談だなんて言わなかった。私はただ真っ赤な顔で口元に手を当てて、
「ジル、行こっ!」
ジルを連れて逃げ出すことしか出来なかった。
フリードの頭は全然回復しないらしい。私のことを嫌いなはずなのに、思わせぶりな態度はやめて欲しい!!
私はフリードと、ジルを含む数人の護衛の騎士たちと、ヤヌース伯爵領へと旅立った。
ヤヌース伯爵領にはいい思い出がない。私は虐げられ、必死で我慢して生きていたのだ。今思えば、もう少し反撃でもすれば良かったのかもしれない。だが、反撃したところで、私にプラスには働かなかったのも事実だ。お義母様は私を憎んでいたし、お父様もお義母様の味方だった。あの地には、ヒューゴ以外心を許せる人もいなかったのだ。私はまるで、鳥籠に入れられた鳥だった。
ハンスベルク辺境伯領に来て、私は自由を知った。野蛮人と言われながらも人々に受け入れられ、自分の思うように生きることを知った。私はもう、以前の私ではない。
「どうした、メリッサ。浮かない顔をしているが」
道中、フリードに聞かれ、
「ううん、何でもないの」
私は答える。
「ただ、ヤヌース伯爵領にいるよりは、ハンスベルク辺境伯領にいたほうが幸せだろうな、なんて思ってしまって」
「そうか」
フリードは静かに頷いた。
「それなら大人しく、俺と結婚するべきだな」
どうやらフリードは私を解放してくれるつもりはないらしい。頭のダメージは相当なものだったのだろう。それか……もし仮に頭が狂ったわけではないのなら、この対応の変化はなぜだろう。
考えれば考えるほど、フリードが分からなくなるのだった。
馬は馬車よりもずっと快適だった。ハンスベルク辺境伯領の駿馬は、すごい勢いで山道を駆け下りていった。ハンスベルク辺境伯領は凍るような寒さだったが、ヤヌース伯爵領に着く頃には随分と暖かくなっていることに気付く。やはり、ハンスベルク辺境伯領は私の故郷とは気候が違うのだ。
そして、暖かな日差しの中、遠くにヤヌース伯爵領の街が見え始める。帰りたくもないこの地に、こうも早く戻ることになるなんて。私は必死で何事もないことを祈るばかりだった。私が虐げられて生活をしていたことを知ると、フリードはきっと私を嫌いになるだろう。……嫌われるのは嬉しいが、胸がちくりとするのだった。
周りに家が立ち並び、馬の足が遅くなった頃、私は耐えきれずにフリードに告げる。
「あっ、あのね!私……家族には会いたくなくて」
こんな私を、フリードは怪訝な顔で見る。
「べ、別に会いたい友達がいて!」
そう告げると、フリードは表情一つ変えず私に告げる。
「それなら、メリッサは友達に会ってきたらいい。
俺は俺で、ヤヌース伯爵に話がある」
どんな話だろう。それはそれで気になるが、ヤヌース伯爵邸なんかに行ったら、またラファエラの格好の餌食になるだろう。
「うん、分かった」
頷きながら、私はフリードに告げる。
「ありがとう、フリード」
私がそう言うと、フリードは微かに笑ってくれる。ほんの僅かな笑顔だが、こんなフリードが好きだ。
「メリッサにも念のため護衛を付けておこう」
いや、大丈夫だよ。私は強いから……と言おうとしてふと思った。ラファエラがまたとんでもないことをしでかしてくるかもしれない。私の味方になってくれる人がいたら心強いのも確かだ。
「じゃあ、ジルがいい」
仲良しのジルなら、私が酷く罵られても笑って流してくれるに違いない。面倒なことも起こさないだろう。
フリードは不満そうに私を睨む。怯んでしまうほどの殺気に満ちた視線だ。そして低い声で唸るように聞いた。
「どうしてお前はいつもジルなんだ!? 」
「だって、ジルなら話しやすいし……」
「……そうか」
フリードはまだ納得していないようだった。だが、私の護衛をジルがするという頼みを聞いてくれる。そしてジルを睨みながら告げた。
「変な気起こすなよ」
「いや、起こすはずないって!」
私は慌ててジルのフォローをする。そもそも、ジルは私を野蛮人だと言って笑うのだ。フリードの私に対する気持ちと同じく、ジルにすら女性だと思われていないのだ。
私はわざとらしくフリードに聞く。
「もしかして、フリード妬いてるの? 」
すると、フリードは口元を少し緩めて言ったのだ。
「そうだ」
……は!?
私、冗談のつもりで聞いたのに。フリードがお前になんて興味がないと言うと思って、聞いたのに。それなのに、そうだってなに!?
自分で種を蒔いておきながら、フリードの返事にドキドキする。フリードこそ冗談を言って、私をからかっているのだろう。そう分かっているのに、私はこうもフリードの一挙一動に狂わされている。
ねえ、フリード。冗談って言って!!
だが、フリードは冗談だなんて言わなかった。私はただ真っ赤な顔で口元に手を当てて、
「ジル、行こっ!」
ジルを連れて逃げ出すことしか出来なかった。
フリードの頭は全然回復しないらしい。私のことを嫌いなはずなのに、思わせぶりな態度はやめて欲しい!!
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