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いつになったら正気に戻るの!?
第24話
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雪の中を馬で駆け抜け、とうとう見慣れた街に戻ってきた。どこか田舎の雰囲気があって寂しげなこの街は、雪を被ってさらに寂しげにも見えた。だが、晴れ渡った空の下、雪に覆われた道を街の人が行き交っている。見慣れたこの街の風景だ。
館の前まで来て馬を降りると、疲れがどっと襲いかかる。館まで帰り、緊張の糸がぷつっと切れたのだ。
「閣下、メリッサ様、お帰りなさいませ」
使用人たちが出てきて、私たちを出迎えてくれる。そんな様子にほっとしつつも、この待遇が改めて幸せなのだと感じた。
「フェデリコ」
フリードは荷物を下ろしながらも、封筒に入った書類を側近のフェデリコ様へ手渡しする。
「これが例の書類だ。厳重に保管しておき、式の日取りを調節してくれ」
「……式? 」
思わず聞くと、
「あとでメリッサにはゆっくり話す」
フリードは何食わぬ顔で告げた。そんなフリードを、私はずっと見続けている。まさか……まさか式って、結婚式!? 少なくとも現時点では、フリードが婚約破棄の動きを取っているようには見えない。まさか、このまま結婚式に持ち込む気なのだろうか。
昨晩、フリードからあんな話をされて、少しは幸せだと思ってしまった。そして、フリードを信じてもいいのかもしれないと思ってしまった。だが、やっぱり人を信じるのは怖いのだ。
フリードはいつもの無表情で私の肩を抱き、ゆっくり館の敷地内へ入った。
「メリッサ、雪は滑るから足元に気をつけろ」
「うん」
「館で温かいものを飲んでひと段落したら、雪遊びするぞ」
「……うん」
私はいつの間に、こうもおとなしくフリードに従うようになってしまったのだろうか。少し前であれば、フリードと遊ぶなんてごめんだなんて言っていた。それなのに、フリードといると幸せだと思ってしまう。
「ジェニー。メリッサに防寒機能の優れたドレスを準備してくれ」
「ドレスでは雪遊び出来ないよ」
思わず言ってしまった私を、フリードはぽかーんと見る。まさかフリード……私が高貴な雪遊びでもすると思っていたのだろうか。傘をさして雪の庭園を歩いたり、積もった雪に少し触れてみるなどの、淑女的な雪遊びのつもりだったのだろうか。
「私……雪合戦をしたり、雪だるまを作ったりするはずだったんだけど……」
その言葉に、フリードは案の定目が点になった。フリードだけでなく、側にいた皆同じようにぽかーんとしている。
「でも、みんなの反応見たら、恥ずかしくなっちゃった。
私はもっとおとなしい雪遊びをするわ」
笑いながら素直にそう告げた私を見て、フリードは頬を緩ませた。そして、嬉しそうに告げる。
「俺の防寒着を貸してやろう。それで、思う存分雪合戦をしよう。
……そして、雪だるまとは何だ!? 」
その言葉に驚いてしまう。私は雪が降らないヤヌース伯爵領に住んでいたから、この国の雪遊び事情について知らなかったのだ。この国には、雪だるまがないだなんて。
だが、ここへ来るまでにいくつか立派な雪像を見た。それはまるで、前世某雪祭りで見たような雪の彫刻だった。雪だるまといったら、この世界では雪像になってしまうのだろうか。
私は笑ってはぐらかし、
「それなら雪合戦をしよう」
フリードに告げていた。
そして館でゆっくり温まってから、フリードの防寒着を身につけ外に出る。フリードの毛皮のコートと裏起毛のパンツは、雪国仕様で驚くほど暖かかった。そして、当然私には大きすぎる。フリードの防寒着を着た私は、まるで大人の服を着ている子供のようだ。
こんな私を見て、フリードは微かに微笑む。私は時折見せるフリードの笑顔が大好きで、フリードが笑うたびにどきんとなってしまう。こうやって、少しずつフリードに毒されてきているのだ。
フリードのペースに巻き込まれないよう、深呼吸して元気に告げた。
「負けないわよ」
そして、雪玉を固めてフリードに投げつける。
「あ、僕も入れてよ!」
いつの間にかジルもやってきて、本気で雪玉を投げ始める。騎士が本気で投げるのだから、その雪玉は野球の球のように速い。当たったらとても痛そうだ。そして、私の闘争心がめらめらと燃え始める。
いつの間にか雪合戦は、ジルと私の一騎打ちになっていた。フリードはもとから私に雪玉を投げるつもりは無さそうだ。強いことを言っておきながら、誰よりも私を心配してくれるフリードが好きだ。……そう、きっと好きなんだ。
「ねー、フリード!ジルをやっつけてよ!」
私はフリードの背後に逃げ込む。そして、フリードを盾にする。フリードの服に触れた瞬間、胸がどきどきと音を立てる。こうやって、少しでも近くにいたいと思ってしまう。フリードではなくて、私の頭が壊れ始めている。
フリードの横から雪玉を投げる。それは見事にジルの胸に当たった。
「よっしゃあ!!」
喜びの声を上げる私に、ジルは次第に腹を立ててくる。そして、フリードの横から少しはみ出た私に、豪速の雪玉を当てたのだ。だが、さすがのジルだ。私が着ているフリードのコートに当たっただけで、ダメージは全くない。ただ、ぱこーんという驚くほど大きな音だけが、大袈裟に鳴り響いたのだ。
「わー、やられた!」
笑う私の前で、
「ジル」
フリードの低い声が聞こえた。にこにこ笑うジルは、フリードを見上げて凍りついていた。私に背を向けているためフリードの顔は見えないが、いつも以上にいかつい顔をしていたのだろう。
それから、ジルとフリードの猛烈な雪合戦が始まった。まさしく生死をかけたような危険な雪合戦を、私はぽかーんと見ているのだった。
館の前まで来て馬を降りると、疲れがどっと襲いかかる。館まで帰り、緊張の糸がぷつっと切れたのだ。
「閣下、メリッサ様、お帰りなさいませ」
使用人たちが出てきて、私たちを出迎えてくれる。そんな様子にほっとしつつも、この待遇が改めて幸せなのだと感じた。
「フェデリコ」
フリードは荷物を下ろしながらも、封筒に入った書類を側近のフェデリコ様へ手渡しする。
「これが例の書類だ。厳重に保管しておき、式の日取りを調節してくれ」
「……式? 」
思わず聞くと、
「あとでメリッサにはゆっくり話す」
フリードは何食わぬ顔で告げた。そんなフリードを、私はずっと見続けている。まさか……まさか式って、結婚式!? 少なくとも現時点では、フリードが婚約破棄の動きを取っているようには見えない。まさか、このまま結婚式に持ち込む気なのだろうか。
昨晩、フリードからあんな話をされて、少しは幸せだと思ってしまった。そして、フリードを信じてもいいのかもしれないと思ってしまった。だが、やっぱり人を信じるのは怖いのだ。
フリードはいつもの無表情で私の肩を抱き、ゆっくり館の敷地内へ入った。
「メリッサ、雪は滑るから足元に気をつけろ」
「うん」
「館で温かいものを飲んでひと段落したら、雪遊びするぞ」
「……うん」
私はいつの間に、こうもおとなしくフリードに従うようになってしまったのだろうか。少し前であれば、フリードと遊ぶなんてごめんだなんて言っていた。それなのに、フリードといると幸せだと思ってしまう。
「ジェニー。メリッサに防寒機能の優れたドレスを準備してくれ」
「ドレスでは雪遊び出来ないよ」
思わず言ってしまった私を、フリードはぽかーんと見る。まさかフリード……私が高貴な雪遊びでもすると思っていたのだろうか。傘をさして雪の庭園を歩いたり、積もった雪に少し触れてみるなどの、淑女的な雪遊びのつもりだったのだろうか。
「私……雪合戦をしたり、雪だるまを作ったりするはずだったんだけど……」
その言葉に、フリードは案の定目が点になった。フリードだけでなく、側にいた皆同じようにぽかーんとしている。
「でも、みんなの反応見たら、恥ずかしくなっちゃった。
私はもっとおとなしい雪遊びをするわ」
笑いながら素直にそう告げた私を見て、フリードは頬を緩ませた。そして、嬉しそうに告げる。
「俺の防寒着を貸してやろう。それで、思う存分雪合戦をしよう。
……そして、雪だるまとは何だ!? 」
その言葉に驚いてしまう。私は雪が降らないヤヌース伯爵領に住んでいたから、この国の雪遊び事情について知らなかったのだ。この国には、雪だるまがないだなんて。
だが、ここへ来るまでにいくつか立派な雪像を見た。それはまるで、前世某雪祭りで見たような雪の彫刻だった。雪だるまといったら、この世界では雪像になってしまうのだろうか。
私は笑ってはぐらかし、
「それなら雪合戦をしよう」
フリードに告げていた。
そして館でゆっくり温まってから、フリードの防寒着を身につけ外に出る。フリードの毛皮のコートと裏起毛のパンツは、雪国仕様で驚くほど暖かかった。そして、当然私には大きすぎる。フリードの防寒着を着た私は、まるで大人の服を着ている子供のようだ。
こんな私を見て、フリードは微かに微笑む。私は時折見せるフリードの笑顔が大好きで、フリードが笑うたびにどきんとなってしまう。こうやって、少しずつフリードに毒されてきているのだ。
フリードのペースに巻き込まれないよう、深呼吸して元気に告げた。
「負けないわよ」
そして、雪玉を固めてフリードに投げつける。
「あ、僕も入れてよ!」
いつの間にかジルもやってきて、本気で雪玉を投げ始める。騎士が本気で投げるのだから、その雪玉は野球の球のように速い。当たったらとても痛そうだ。そして、私の闘争心がめらめらと燃え始める。
いつの間にか雪合戦は、ジルと私の一騎打ちになっていた。フリードはもとから私に雪玉を投げるつもりは無さそうだ。強いことを言っておきながら、誰よりも私を心配してくれるフリードが好きだ。……そう、きっと好きなんだ。
「ねー、フリード!ジルをやっつけてよ!」
私はフリードの背後に逃げ込む。そして、フリードを盾にする。フリードの服に触れた瞬間、胸がどきどきと音を立てる。こうやって、少しでも近くにいたいと思ってしまう。フリードではなくて、私の頭が壊れ始めている。
フリードの横から雪玉を投げる。それは見事にジルの胸に当たった。
「よっしゃあ!!」
喜びの声を上げる私に、ジルは次第に腹を立ててくる。そして、フリードの横から少しはみ出た私に、豪速の雪玉を当てたのだ。だが、さすがのジルだ。私が着ているフリードのコートに当たっただけで、ダメージは全くない。ただ、ぱこーんという驚くほど大きな音だけが、大袈裟に鳴り響いたのだ。
「わー、やられた!」
笑う私の前で、
「ジル」
フリードの低い声が聞こえた。にこにこ笑うジルは、フリードを見上げて凍りついていた。私に背を向けているためフリードの顔は見えないが、いつも以上にいかつい顔をしていたのだろう。
それから、ジルとフリードの猛烈な雪合戦が始まった。まさしく生死をかけたような危険な雪合戦を、私はぽかーんと見ているのだった。
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*ムーンライトノベルズにも掲載
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