つまらない女と言われたため、婚約者をぶん殴りました〜婚約破棄して武闘家になろうと思います〜

湊一桜

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いつになったら正気に戻るの!?

第26話

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 ハイデマリーの後ろ姿を見ている私は、

「メリッサ」

不意にフリードに呼ばれて飛び上がった。
 いつの間にか猛烈な雪合戦は終わっており、フリードが少し心配そうな顔をして目の前に立っている。

「さっき、聖女がいたのか? 」

 頷く私に、フリードは怪訝な顔で聞いた。

「何か言われたのか? 何もされていないか? 」

 私は馬鹿だ。フリードとハイデマリーがいい感じだからと、勝手に嫉妬をしていた。だが、フリードがハイデマリーに靡いているはずがないのに。
 今だって、こうして私を心配してくれている。

「ううん、何もないよ」

 私は笑顔で告げた。

「ハイデマリーとは、いい友達になれそうなの」

 友達が……そういえば私、この世界に女友達なんていなかった。いるのはただ、ヒューゴだけだった。
 微笑んでいる私を見て、

「マジか? 」

ジルが目を大きくする。そんなジルに聞いてしまった。

「ジルはどうしてハイデマリーが苦手なの? 」

 するとジルは、フリードと顔を見合わせる。そして、言いにくそうに告げた。

「聖女だからってお高くとまってる感じがさぁ……
 フリード様のことばかりで、傷を負った騎士たちは相手にもしてもらえない」

 ジルもそこだったのか。だが、ハイデマリーの素を見れば、ジルの考え方だって変わるかもしれない。どうか、ハイデマリーと騎士たちの間にも雪解けがありますようにと、願わずにはいられなかった。


 ジルは体を押さえながら言う。

「いててて……フリード様に本気でやられちゃったから、もう騎士団に戻ろう」

「それなら聖女に癒してもらえ」

「死んでも嫌ですよ」

 そんなやりとりを見ながらも、心がちくりと痛む。そして、フリードと二人きりになると、大丈夫だと思ったばかりなのに、やはり不安になってしまったのだ。

「フリード……」

 おずおずと呼ぶと、無表情の中の、少し柔らかい表情で私を見下ろすフリード。この、見え隠れする優しさが、何ともたまらない。
 私はフリードのコートの裾を掴み、遠慮がちに告げた。

「もし……ハイデマリーが私みたいな野蛮人になっても……ハイデマリーのことを好きにならないで……ね? 」

 するとフリードは、驚いたように目を少し開く。そして、少しずつ表情が緩んでくる。頬を染め、目を細め……儚げに笑う。
 そんな顔をしないで。

「メリッサ……」

 フリードは頬を染めたまま、低く甘い声で告げる。

「……キスしてもいいか? 」

 えっ!?

 狼狽えた時には、すでに唇が塞がっていた。無骨で強靭なフリードからは考えられないような、甘くて優しいキスだった。硬直している私だが、ただ鼓動だけがあり得ないほど速い。

 やがてゆっくり唇を離したフリードは、静かに告げた。

「俺がお前以外の女に、惚れるはずがない。
 メリッサも、俺に惚れているのだろう? 」

 私は真っ赤になって唇を押さえる。そんなこと、念を押されなくても分かっている。私は間違いなく、フリードを好きになっている。それも、後戻り出来ないほどに。



「昼からは、俺も仕事をしないといけない。
 結婚式の招待状を、方々に出さないといけないからな」

「……えっ!? 」

 私は酷く動揺している。到着時に式と言ったのは、やはり結婚式の話だったのだ。

「あの……婚約破棄は? 」

 恐る恐る聞くと、

「だから、婚約破棄とはなんだ? 」

フリードは眉間に皺を寄せて私を見る。先ほどまでの甘い表情は、もうどこにもない。

「言っただろう。俺はお前を離すつもりなどないと」

 フリードはそう言って、頬に軽く唇を寄せる。

「お前ももうそろそろ諦めろ。どんなに暴れても、俺はもう離してやれないから」

 フリードと結婚することなんて、絶対に嫌だった。どうせ大切にされないし、第一私のことなんて嫌いだと思っていたからだ。だが、こうやって迫られると困る。このまま、フリードと結婚してもいいだなんて思ってしまう。だけど……

「私は、人を信じられない。信じても、裏切られるから」

「それなら、どうしたら俺は信じてもらえるのか? 」

 フリードは切なげに告げる。そして、その答えを私も探している。フリードを信じたい。だが、信じるのが怖いのだ。

 フリードは切なげに笑い、私の額に軽くキスをする。そして髪をそっと撫でて去っていった。

「俺は待っている」

なんていう言葉を残して。

 そんなフリードの後ろ姿を、ずっと見送っていた。今まで感じたこともない胸の高鳴りと、体の熱を感じながら。

 昨日より今日、今日より明日と、日に日にフリードが好きになる。その不器用な優しさに触れるたび、きゅんと胸が疼く。もうそろそろ、私も防御の限界かもしれない。正直、今この状態で婚約破棄になったら、心が持たない……

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