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39. 惚れ薬なんて、効かない!
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ルーカスは、惚れ薬によって、マリアナ様にベタ惚れしているのだろう。今まで私に注いでくれた愛を、全てマリアナ様に注ぐのだろう。マリアナ様と結婚して、幸せに暮らすのだろう。そのほうがルーカスにとってもいいと思うのに……心が悲鳴を上げ続けている。ルーカスの幸せを素直に喜べない私は、最低な女だ。
「おかえりなさい、ルーカス様。
一緒に会場に戻りましょう? 」
マリアナ様はルーカスの体をぎゅっと抱きしめる。それだけで、私の胸がズキズキと痛み続けるのだった。
ルーカスとマリアナ様を見ている間にも、私は護衛にずるずると引き摺られていった。抵抗する気力もない私は、このままさらなる悪人となるのだろう。ルーカスに惚れ薬を飲ませたなどという、身に覚えのない罪を着せられて。
「ルーカス様。これからはわたくしが、貴方のお側にいますわ」
マリアナ様の甘い声に、
「どけよ」
ルーカスの氷のように冷たい声が被った。それがいつも通りのルーカスすぎて、はっと我に返る。
「どけっつってんだよ、クソ女が!! 」
ルーカスはいつも以上に荒ぶって、マリアナ様を突き飛ばした。慌てふためくマリアナ様はよろめいて、弱々しく地面に尻もちをついている。そんなマリアナ様を気にかける様子もなく、ルーカスは私のほうを……私の体を無理矢理引き摺る二人の護衛を睨んだ。その瞳には、怒りが見え隠れしている。
「てめぇら、何してるんだ!? 」
「は、はっ!! 」
護衛たちは慌てふためくが、私を離してくれるそぶりはない。その代わりに、言いにくそうにルーカスに告げる。
「で、ですが、ルーカス様……この女性は、ルーカス様に惚れ薬を盛ったと聞きましたが……」
「はァ!? 」
ルーカスは怒りに顔を歪ませ、溢れる殺気とともに、ずかずかとこっちへ歩いてくる。そして、ぐっと護衛の胸ぐらを掴み上げた。
「惚れ薬? そんなもの、セシリアが俺に飲ませる必要などないだろう」
そして、彼は付け足す。
「惚れ薬を俺に飲ませたのは、セシリアではなくその女だ」
ルーカスは弱々しく地面に座り込むマリアナ様を、相変わらず怒りでいっぱいの瞳で睨む。
マリアナ様がルーカスに惚れ薬を飲ませたのは分かっている。それで、ルーカスはマリアナ様にベタ惚れになると思っていた。だが、目の前のルーカスは至って普通で、マリアナ様に惚れている様子は微塵もない。一体、どうしてしまったのだろうか。
私が聞く間もなく、ルーカスは怒りのこもった声で続ける。
「俺はこの女が惚れ薬を持っていることを知っていた。だからあらかじめ、解毒薬を用意していた」
……え!? 解毒薬!?
ルーカスが青色の小瓶を取り出すと、項垂れていたマリアナ様がさらに項垂れた。そんなマリアナ様が哀れにも思ったが、ホッとした気持ちでいっぱいだ。ルーカスがマリアナ様に惚れなくて、本当に良かった。本当に嬉しいのだが……状況は、何も解決していない。ルーカスが私と結婚すると、私たちに待っているものは茨の道なのだ。
「仕事は済ませた。それに、今後この女の顔を見るのも苦痛だ」
ルーカスは私を掴んでいる護衛の手を払いのける。護衛たちは、罰が悪そうに身を引いた。
「俺のセシリアに指一本触れるな。セシリアに触れてもいいのは俺だけだ!」
何その独占欲。だけど、その言葉すら嬉しいと思ってしまう私は、どうかしている。
「俺はセシリアと二人で、どこか静かなところに行くとしよう」
ルーカスは怒りでいっぱいなのに……怒りで歪んだ顔をしていたのに……私を見て、急に優しい笑顔になる。それはまるで雪が溶け、花が咲き誇るような明るい笑顔だった。例外なく胸がきゅんと鳴る。いや、きゅんきゅんとうるさいほどに、音を立てている。
「行くぞ、セシリア」
甘く優しい声とともに、そっと手を握られる。ルーカスが触れた瞬間、体に甘い電流が流れる。顔だって、熱を持ってぼっと熱くなる。これ以上ルーカスに嵌ってはいけないと分かっているのに、夢中にならざるを得ない。逃げることすら出来なく、私は操り人形のようにルーカスに従ってしまう。
こうして私たちは花祭りの会場を抜け出し、二人だけへの場所へと歩いていった。見慣れた公爵邸へ入り、階段をゆっくりと上る。ルーカスは何も言わないが、なんとなく分かっていた。ルーカスはこのまま、私を抱くつもりなのだろう。この日のために、指南書を読み漁っていたのだから……
「おかえりなさい、ルーカス様。
一緒に会場に戻りましょう? 」
マリアナ様はルーカスの体をぎゅっと抱きしめる。それだけで、私の胸がズキズキと痛み続けるのだった。
ルーカスとマリアナ様を見ている間にも、私は護衛にずるずると引き摺られていった。抵抗する気力もない私は、このままさらなる悪人となるのだろう。ルーカスに惚れ薬を飲ませたなどという、身に覚えのない罪を着せられて。
「ルーカス様。これからはわたくしが、貴方のお側にいますわ」
マリアナ様の甘い声に、
「どけよ」
ルーカスの氷のように冷たい声が被った。それがいつも通りのルーカスすぎて、はっと我に返る。
「どけっつってんだよ、クソ女が!! 」
ルーカスはいつも以上に荒ぶって、マリアナ様を突き飛ばした。慌てふためくマリアナ様はよろめいて、弱々しく地面に尻もちをついている。そんなマリアナ様を気にかける様子もなく、ルーカスは私のほうを……私の体を無理矢理引き摺る二人の護衛を睨んだ。その瞳には、怒りが見え隠れしている。
「てめぇら、何してるんだ!? 」
「は、はっ!! 」
護衛たちは慌てふためくが、私を離してくれるそぶりはない。その代わりに、言いにくそうにルーカスに告げる。
「で、ですが、ルーカス様……この女性は、ルーカス様に惚れ薬を盛ったと聞きましたが……」
「はァ!? 」
ルーカスは怒りに顔を歪ませ、溢れる殺気とともに、ずかずかとこっちへ歩いてくる。そして、ぐっと護衛の胸ぐらを掴み上げた。
「惚れ薬? そんなもの、セシリアが俺に飲ませる必要などないだろう」
そして、彼は付け足す。
「惚れ薬を俺に飲ませたのは、セシリアではなくその女だ」
ルーカスは弱々しく地面に座り込むマリアナ様を、相変わらず怒りでいっぱいの瞳で睨む。
マリアナ様がルーカスに惚れ薬を飲ませたのは分かっている。それで、ルーカスはマリアナ様にベタ惚れになると思っていた。だが、目の前のルーカスは至って普通で、マリアナ様に惚れている様子は微塵もない。一体、どうしてしまったのだろうか。
私が聞く間もなく、ルーカスは怒りのこもった声で続ける。
「俺はこの女が惚れ薬を持っていることを知っていた。だからあらかじめ、解毒薬を用意していた」
……え!? 解毒薬!?
ルーカスが青色の小瓶を取り出すと、項垂れていたマリアナ様がさらに項垂れた。そんなマリアナ様が哀れにも思ったが、ホッとした気持ちでいっぱいだ。ルーカスがマリアナ様に惚れなくて、本当に良かった。本当に嬉しいのだが……状況は、何も解決していない。ルーカスが私と結婚すると、私たちに待っているものは茨の道なのだ。
「仕事は済ませた。それに、今後この女の顔を見るのも苦痛だ」
ルーカスは私を掴んでいる護衛の手を払いのける。護衛たちは、罰が悪そうに身を引いた。
「俺のセシリアに指一本触れるな。セシリアに触れてもいいのは俺だけだ!」
何その独占欲。だけど、その言葉すら嬉しいと思ってしまう私は、どうかしている。
「俺はセシリアと二人で、どこか静かなところに行くとしよう」
ルーカスは怒りでいっぱいなのに……怒りで歪んだ顔をしていたのに……私を見て、急に優しい笑顔になる。それはまるで雪が溶け、花が咲き誇るような明るい笑顔だった。例外なく胸がきゅんと鳴る。いや、きゅんきゅんとうるさいほどに、音を立てている。
「行くぞ、セシリア」
甘く優しい声とともに、そっと手を握られる。ルーカスが触れた瞬間、体に甘い電流が流れる。顔だって、熱を持ってぼっと熱くなる。これ以上ルーカスに嵌ってはいけないと分かっているのに、夢中にならざるを得ない。逃げることすら出来なく、私は操り人形のようにルーカスに従ってしまう。
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