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はじまり
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遡ること1か月前---
「おい、なんだこの料理。不味くて食えたもんじゃない。」
「ご、ごめんなさい…。作り直します…。」
「もういい。外で食べるわ。そのあと帰らないから。」
男は財布とスマホを持って出ていった。ついでのように料理をゴミ箱に捨てながら。
「…ほんと嫌なやつ。」
「やっと出ていった。」
「わざわざ嫌味言いに帰ってこなくていいのに。」
一緒にごはんを食べていた三姉妹が嫌悪感丸出しで話す。
「ごめんね、私が上手くできないから。大丈夫?無理して食べなくてもいいのよ?」
「そんなことない!お母さんのごはん、美味しいよ!」
「うん!いつも通りすっごく美味しい!」
「頬っぺた落ちるくらい美味しいよ!」
「…ありがとう。ありがとう、みんな…」
少し涙ぐみながら答えたのは三姉妹の母、花野井 桔梗(はなのい ききょう)。
そんな母親を励ましているのが長女の睡蓮(すいれん)、次女の鈴蘭(すずらん)、三女の雛菊(ひなぎく)の三つ子だ。
まぶたの薄い切れ長の一重に、黒髪黒目のごく普通の容姿。
体型もそっくりで、細くもなく太くもなく、一般的な身長体重である。
母親もそんな三姉妹にそっくりで、並んでいると姉妹に見られることもあった。
「あの男はまたあそこかな?」
「絶対ね。あんな女のどこがいいんだか、あいつ。」
「見る目ないよねー。ま、見る目ない同士あいつとお似合いだよ。」
さっきからあの男、あいつと呼ばれているのは三姉妹の父親である。
会話からわかる通り不倫をし、モラハラもしている父親だ。
既に三姉妹は父親だと思っておらず、大切な母親を傷つける最低な男として扱われている。
「ごめんね…。私に稼ぎがないばっかりに…皆を傷つけて…。」
結婚当初から専業主婦をしてくれと頼まれ、娘が15歳になるまで働いたことがなかった。
女が働くなんてみっともないと夫や義両親から言われたからだ。
結婚してすぐにこどもができ、それも三つ子で育児に追われてたというのもあるが。
付き合っていた頃は優しかった夫は結婚してから豹変し、すぐにモラハラ夫になった。
押しが弱い桔梗は別れることができず、働くこともできず、育児と家事を一人でこなした。
実の両親も既に他界しており、頼る人がおらず、これが普通なのだと思うようになり、別れたいと考えることもなかった。
娘が大きくなってから指摘を受け、おかしいのだと気づいたときにはもう結婚してから15年経っていた。
別れたくても、収入源がない桔梗はまだ別れられずにいた。
「大丈夫よ、お母さん。私たちもバイトできるようになったし。」
「そうそう。今は無理でも皆でやればすぐだよ。」
「お母さんだってパート始めてるんだから。」
「ありがとうね、3人とも。」
指摘を受けてからすぐに桔梗はパートを始めた。
もちろんバレるとうるさいのでバレないように。
三姉妹も高校生になり、バイトをそれぞれ探していた。
「皆がいるから頑張れるよ。私のところに生まれてくれてありがとう。大好きよ。」
「「「私も大好き、お母さん。」」」
そう言って皆で抱き締めあった。
「ね、引っ越すならどこがいいかな?」
楽しそうに話すのは次女の鈴蘭。
話好き、聞き好きの鈴蘭は家族で会話するのが好きなのだ。
「えー、やっぱ美味しいものがあるところかな?」
三女の雛菊は甘え上手で、3人からとても可愛がられている。
「あと、天候も大切だよね。寒すぎず、暑すぎず。」
穏やかに答えるの長女の睡蓮で、おっとりみえてしっかりしている。
制御不能になりやすい妹たちを上手くコントロールしている。
「お母さんは静かなところがいいな。」
にこにこ嬉しそうに答える桔梗が実は一番ふわふわしていて、母親というより末っ子という感じである。
「余裕ができたら猫飼いたいなー。」
「いいね。猫かわいいー。」
「犬も飼いたい。」
「一匹ずつがいいよね。」
「ねー。どっちも可愛いもん。」
「散歩行くの楽しみ。」
未来のことを楽しそうに話す鈴蘭と雛菊。
桔梗と睡蓮はそれを嬉しそうに聞いている。
「…ねー、もしさ、今寝て起きたら違う世界だったらどうする?」
「なに?突然。」
「よく小説とかであるじゃん。目が覚めたら異世界!みたいなの。知らない世界に行ったらどうするのかなって。」
鈴蘭は特に深い意味はなく皆に聞いた。
「えーどうしよ。とりあえずみんなに抱きつくかな。」
笑いながら答えたのは雛菊。
「私はとりあえず、周りに人を探すかな。」
しっかりしている睡蓮は現実的な答えだ。
「お母さんは…どうだろ、パニックになっちゃうかも。」
桔梗が答えると、三姉妹はその場面が簡単には想像できて笑ってしまう。
「でも、皆一緒なら怖くないよね。」
「それは確実に。」
「逆に安心するかも。」
三姉妹はうんうん頷きながら話す。
「行くなら皆一緒がいいね。」
嬉しそうに相づちをうつ桔梗を見ながら、まさかこれがフラグだなんて三姉妹は知るよしもなく、同じように嬉しそうに同意した。
「おい、なんだこの料理。不味くて食えたもんじゃない。」
「ご、ごめんなさい…。作り直します…。」
「もういい。外で食べるわ。そのあと帰らないから。」
男は財布とスマホを持って出ていった。ついでのように料理をゴミ箱に捨てながら。
「…ほんと嫌なやつ。」
「やっと出ていった。」
「わざわざ嫌味言いに帰ってこなくていいのに。」
一緒にごはんを食べていた三姉妹が嫌悪感丸出しで話す。
「ごめんね、私が上手くできないから。大丈夫?無理して食べなくてもいいのよ?」
「そんなことない!お母さんのごはん、美味しいよ!」
「うん!いつも通りすっごく美味しい!」
「頬っぺた落ちるくらい美味しいよ!」
「…ありがとう。ありがとう、みんな…」
少し涙ぐみながら答えたのは三姉妹の母、花野井 桔梗(はなのい ききょう)。
そんな母親を励ましているのが長女の睡蓮(すいれん)、次女の鈴蘭(すずらん)、三女の雛菊(ひなぎく)の三つ子だ。
まぶたの薄い切れ長の一重に、黒髪黒目のごく普通の容姿。
体型もそっくりで、細くもなく太くもなく、一般的な身長体重である。
母親もそんな三姉妹にそっくりで、並んでいると姉妹に見られることもあった。
「あの男はまたあそこかな?」
「絶対ね。あんな女のどこがいいんだか、あいつ。」
「見る目ないよねー。ま、見る目ない同士あいつとお似合いだよ。」
さっきからあの男、あいつと呼ばれているのは三姉妹の父親である。
会話からわかる通り不倫をし、モラハラもしている父親だ。
既に三姉妹は父親だと思っておらず、大切な母親を傷つける最低な男として扱われている。
「ごめんね…。私に稼ぎがないばっかりに…皆を傷つけて…。」
結婚当初から専業主婦をしてくれと頼まれ、娘が15歳になるまで働いたことがなかった。
女が働くなんてみっともないと夫や義両親から言われたからだ。
結婚してすぐにこどもができ、それも三つ子で育児に追われてたというのもあるが。
付き合っていた頃は優しかった夫は結婚してから豹変し、すぐにモラハラ夫になった。
押しが弱い桔梗は別れることができず、働くこともできず、育児と家事を一人でこなした。
実の両親も既に他界しており、頼る人がおらず、これが普通なのだと思うようになり、別れたいと考えることもなかった。
娘が大きくなってから指摘を受け、おかしいのだと気づいたときにはもう結婚してから15年経っていた。
別れたくても、収入源がない桔梗はまだ別れられずにいた。
「大丈夫よ、お母さん。私たちもバイトできるようになったし。」
「そうそう。今は無理でも皆でやればすぐだよ。」
「お母さんだってパート始めてるんだから。」
「ありがとうね、3人とも。」
指摘を受けてからすぐに桔梗はパートを始めた。
もちろんバレるとうるさいのでバレないように。
三姉妹も高校生になり、バイトをそれぞれ探していた。
「皆がいるから頑張れるよ。私のところに生まれてくれてありがとう。大好きよ。」
「「「私も大好き、お母さん。」」」
そう言って皆で抱き締めあった。
「ね、引っ越すならどこがいいかな?」
楽しそうに話すのは次女の鈴蘭。
話好き、聞き好きの鈴蘭は家族で会話するのが好きなのだ。
「えー、やっぱ美味しいものがあるところかな?」
三女の雛菊は甘え上手で、3人からとても可愛がられている。
「あと、天候も大切だよね。寒すぎず、暑すぎず。」
穏やかに答えるの長女の睡蓮で、おっとりみえてしっかりしている。
制御不能になりやすい妹たちを上手くコントロールしている。
「お母さんは静かなところがいいな。」
にこにこ嬉しそうに答える桔梗が実は一番ふわふわしていて、母親というより末っ子という感じである。
「余裕ができたら猫飼いたいなー。」
「いいね。猫かわいいー。」
「犬も飼いたい。」
「一匹ずつがいいよね。」
「ねー。どっちも可愛いもん。」
「散歩行くの楽しみ。」
未来のことを楽しそうに話す鈴蘭と雛菊。
桔梗と睡蓮はそれを嬉しそうに聞いている。
「…ねー、もしさ、今寝て起きたら違う世界だったらどうする?」
「なに?突然。」
「よく小説とかであるじゃん。目が覚めたら異世界!みたいなの。知らない世界に行ったらどうするのかなって。」
鈴蘭は特に深い意味はなく皆に聞いた。
「えーどうしよ。とりあえずみんなに抱きつくかな。」
笑いながら答えたのは雛菊。
「私はとりあえず、周りに人を探すかな。」
しっかりしている睡蓮は現実的な答えだ。
「お母さんは…どうだろ、パニックになっちゃうかも。」
桔梗が答えると、三姉妹はその場面が簡単には想像できて笑ってしまう。
「でも、皆一緒なら怖くないよね。」
「それは確実に。」
「逆に安心するかも。」
三姉妹はうんうん頷きながら話す。
「行くなら皆一緒がいいね。」
嬉しそうに相づちをうつ桔梗を見ながら、まさかこれがフラグだなんて三姉妹は知るよしもなく、同じように嬉しそうに同意した。
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