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ヴィンセントの場合1
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ヴィンセントside
「今日は来てくれてありがとう。」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。とても楽しかったよ。」
「ふふ。私も楽しかった。皆もそう思ってるよ。」
下まで見送りに来てくれたスイ。
綺麗に笑うこの天使が、信じられないことに私の恋人になったのだ。
微笑む姿はまさに天使。
腰までのストレートの黒髪に、ちょっと茶色の入った黒い瞳。
どちらかが黒いというのはたまにあるが珍しく、そもそも黒いということ自体珍しいのだ。
それが両方なんて…神秘的で同じ種族なのか疑わしいくらいだ。
それにこの細い身体。
抱き締めたとき、折れるかと思うほど細かった。
「それはよかった。これから家族になるんだから、嫌われるなんていやだからね。」
「こんな綺麗な人、まず嫌われることなんてないけどね。」
その発言に苦笑いでこたえる。
驚くことにここの一家、私が綺麗に見えるらしいのだ。
告白しあったあと、綺麗やら格好いいやら、それはそれは褒められた。
スイ曰く、美醜感覚がずれているらしいが…ここまでくるとずれるとかの範囲じゃない気が…。
「それでなくても性格もいいのに…周りは気付けなくて可哀想ね。」
言われたことのない賛辞に照れてしまうが、この上ないほど心地がいい。
自分には不相応な賛辞だとは思いつつ、ありがとうと受け取ってしまう。
「スイ、必ずスイと結婚できるようにするから。」
「うん。楽しみにしてるね。」
そう言って微笑むスイを抱き締める。
細いのに柔らかいこの身体は、何度抱き締めてもきっと飽きることはないだろうな。
「私は今の婚約者とは婚約解消してくる。それまで時間が少しかかるけど、どうか待っていてほしい。」
今の婚約者の不貞の証拠は既に集めてある。
仕方ないと思いながらも、やっぱり悔しかったのかもしれない。
でも、王族の婚約はそう簡単に解消できるものじゃない。
大きい決め事なだけに、なかったことにするのは時間がかかる。
「もちろん。ヴィンセントのこと待ってるよ。」
迷うことなく答えてくれるスイに、愛しい思いが溢れてくる。
目を見れば絶対的な信頼をしてくれているのがわかる。
「ありがとう。大好きだよ、スイ。待ってる間はこれを持っててくれないか?」
そう言ってスイに渡したのは、王家の紋章が入った宝石つきのブレスレット。
宝石にはそれぞれの名前が彫ってあり、角度を変えると浮き出て見える。
王族一人一人が持っている装飾品で、大切だと思う者に渡すのだ。
それは伴侶だったり、愛する人だったり、親友だったりと様々だが、皆一様に相手のことを信頼している。
信頼して待ってくれる大切なスイに、持っていてもらいたいと思ったのだ。
「これ?え?なんか宝石みたいなのついてない?大丈夫なの?私が持ってて…。」
「王族が大切な人に贈る物なんだ。スイ以外に贈りたい人なんていないよ。」
いつか自分にも愛し愛される人ができたら渡したいと思ってた。
親友はいるが、このブレスレットはどうしても愛する人に贈ってみたいと思っていたのだ。
もちろん、親友にはちゃんと大切だと伝えている。
でも、いつか自分にも愛する人ができるかもしれないから諦めきれないと言うと、親友は笑って承諾してくれた。
これがなくても信頼されてるって伝わっていると。
同じ悩みを抱えるもの同士、希望を持っているやつがいると救われる、と許してくれた。
「大切な人…。嬉しい。私のことをそう思っていてくれて。わかった。これはもらっておくね。あ、今度来てくれたときに私も何か渡すね。ヴィンセントが大切な人って伝わるように。」
照れ笑いをしたスイは最高に可愛くて、私にも渡したいと言ってくれたことに気持ちが高揚する。
大切だと伝えたいと思ってくれていることに、少し涙目になってしまった。
「あなたが大好きだよ、ヴィンセント。」
そんな私の目元を優しく撫でながら話すスイは、この世の誰よりも輝いて美しかった。
もう一度抱き締めあって、名残惜しいが離れる。
「必ず迎えに来る。待っていて。」
「もちろん。ずっと待ってる。」
何度も振り向きながら馬車に乗り込んだ。
馬車の扉が閉められ走り出す。
窓をあけてスイを見ると、どんどん小さくなり切なくなってくる。
「いってらっしゃい!ヴィンセント!」
「!!ああ!いってきます!」
不意に聞こえた綺麗な声に条件反射のように答えた。
いってらっしゃい。…帰ってきてねと言われているようで嬉しくなった。
いや、きっとそういう意味で言ったのだろう。
そう思うと、胸が締め付けられるようだった。
嫌な締め付けではない。
気持ちが高揚するような締め付けだった。
必ず、帰ってくるよ、スイ。
「今日は来てくれてありがとう。」
「こちらこそ、誘ってくれてありがとう。とても楽しかったよ。」
「ふふ。私も楽しかった。皆もそう思ってるよ。」
下まで見送りに来てくれたスイ。
綺麗に笑うこの天使が、信じられないことに私の恋人になったのだ。
微笑む姿はまさに天使。
腰までのストレートの黒髪に、ちょっと茶色の入った黒い瞳。
どちらかが黒いというのはたまにあるが珍しく、そもそも黒いということ自体珍しいのだ。
それが両方なんて…神秘的で同じ種族なのか疑わしいくらいだ。
それにこの細い身体。
抱き締めたとき、折れるかと思うほど細かった。
「それはよかった。これから家族になるんだから、嫌われるなんていやだからね。」
「こんな綺麗な人、まず嫌われることなんてないけどね。」
その発言に苦笑いでこたえる。
驚くことにここの一家、私が綺麗に見えるらしいのだ。
告白しあったあと、綺麗やら格好いいやら、それはそれは褒められた。
スイ曰く、美醜感覚がずれているらしいが…ここまでくるとずれるとかの範囲じゃない気が…。
「それでなくても性格もいいのに…周りは気付けなくて可哀想ね。」
言われたことのない賛辞に照れてしまうが、この上ないほど心地がいい。
自分には不相応な賛辞だとは思いつつ、ありがとうと受け取ってしまう。
「スイ、必ずスイと結婚できるようにするから。」
「うん。楽しみにしてるね。」
そう言って微笑むスイを抱き締める。
細いのに柔らかいこの身体は、何度抱き締めてもきっと飽きることはないだろうな。
「私は今の婚約者とは婚約解消してくる。それまで時間が少しかかるけど、どうか待っていてほしい。」
今の婚約者の不貞の証拠は既に集めてある。
仕方ないと思いながらも、やっぱり悔しかったのかもしれない。
でも、王族の婚約はそう簡単に解消できるものじゃない。
大きい決め事なだけに、なかったことにするのは時間がかかる。
「もちろん。ヴィンセントのこと待ってるよ。」
迷うことなく答えてくれるスイに、愛しい思いが溢れてくる。
目を見れば絶対的な信頼をしてくれているのがわかる。
「ありがとう。大好きだよ、スイ。待ってる間はこれを持っててくれないか?」
そう言ってスイに渡したのは、王家の紋章が入った宝石つきのブレスレット。
宝石にはそれぞれの名前が彫ってあり、角度を変えると浮き出て見える。
王族一人一人が持っている装飾品で、大切だと思う者に渡すのだ。
それは伴侶だったり、愛する人だったり、親友だったりと様々だが、皆一様に相手のことを信頼している。
信頼して待ってくれる大切なスイに、持っていてもらいたいと思ったのだ。
「これ?え?なんか宝石みたいなのついてない?大丈夫なの?私が持ってて…。」
「王族が大切な人に贈る物なんだ。スイ以外に贈りたい人なんていないよ。」
いつか自分にも愛し愛される人ができたら渡したいと思ってた。
親友はいるが、このブレスレットはどうしても愛する人に贈ってみたいと思っていたのだ。
もちろん、親友にはちゃんと大切だと伝えている。
でも、いつか自分にも愛する人ができるかもしれないから諦めきれないと言うと、親友は笑って承諾してくれた。
これがなくても信頼されてるって伝わっていると。
同じ悩みを抱えるもの同士、希望を持っているやつがいると救われる、と許してくれた。
「大切な人…。嬉しい。私のことをそう思っていてくれて。わかった。これはもらっておくね。あ、今度来てくれたときに私も何か渡すね。ヴィンセントが大切な人って伝わるように。」
照れ笑いをしたスイは最高に可愛くて、私にも渡したいと言ってくれたことに気持ちが高揚する。
大切だと伝えたいと思ってくれていることに、少し涙目になってしまった。
「あなたが大好きだよ、ヴィンセント。」
そんな私の目元を優しく撫でながら話すスイは、この世の誰よりも輝いて美しかった。
もう一度抱き締めあって、名残惜しいが離れる。
「必ず迎えに来る。待っていて。」
「もちろん。ずっと待ってる。」
何度も振り向きながら馬車に乗り込んだ。
馬車の扉が閉められ走り出す。
窓をあけてスイを見ると、どんどん小さくなり切なくなってくる。
「いってらっしゃい!ヴィンセント!」
「!!ああ!いってきます!」
不意に聞こえた綺麗な声に条件反射のように答えた。
いってらっしゃい。…帰ってきてねと言われているようで嬉しくなった。
いや、きっとそういう意味で言ったのだろう。
そう思うと、胸が締め付けられるようだった。
嫌な締め付けではない。
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必ず、帰ってくるよ、スイ。
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