19 / 31
ヴィンセントの場合7
しおりを挟む
「なぁ、ヴィンセント。まだ諦めていないんだろう。だからその装飾品を渡さないんだろう。」
コンラッドは私の手首についているブレスレットを見ながら聞いてきた。
王族は皆持っている装飾品だ。
「婚約者が決まる前に言っていただろ。本当に愛する人が現れたら贈りたいと。」
自分の信頼する相手に渡す装飾品。
王族の伝統的な風習で、学園に入る前に作られるのだ。
「俺を一番信頼しているが、それは愛し愛される相手に贈りたい、そう言っていたじゃないか。サーシス伯爵令嬢に贈らないのは愛してないのはもちろんだろうが、現れるかもしれないと思っているんだろう。」
サーシス嬢には初日で贈ることはないと決めていたが、愛する人を見つけたいと思っていたのも事実だ。
でも、こんな醜いやつに好かれるなんて嫌だよな…と諦めかけていたのも本当だ。
「…こんな醜いやつを愛してくれる人なんていない。」
「いる。ヴィンセントはいいやつだ。内面を見てくれる人は現れる。」
「…そんな奇特なやつ、存在しない。」
「そう言うな。お前がそのブレスレットを持っている限り、俺も希望を持てる。王子にこんなことを思うのは不敬だとは思うが、俺と同じ容姿の人間が希望を捨てていないのは救われてるんだ。」
だから希望を捨てないで探してほしい、コンラッドは懇願するように言った。
そんなことを思っていたのか。
信頼しているのに渡せないことが少し心苦しかったが、そんな風に思ってくれているなんて。
「いるのかな…これを贈る相手を探してもいいのかな…。」
「いる。必ず。お前だって本当は嫌だろう?あんな令嬢。」
「当たり前でしょ。見た目がよかったとしてもお断りだよ。」
2人で顔を合わせて笑い合う。
そうだ、まだ希望は捨てない。
諦めてなんてやるもんか。
それのせいで時期国王になれなくても構わない。
愛する人もおらず、国に酷使されるなんてごめんだ。
「探すよ。何年かかっても。」
「あぁ。その意気だ。」
「だからコンラッドも探そうね。」
「…は?」
私はコンラッドも引き込んで探すことにした。
唯一の親友にだって幸せになってほしいのだ。
困惑する親友に向かって微笑みながら、未来に思いを馳せた。
久しぶりに晴れやかな気持ちになった。
「ということで、見つけてきたから。結婚することにもなったから。今の婚約者とは婚約解消するね。」
「おい待て、俺が休みの間になんでそんなに急展開になっているんだ。」
「珍しく長めの休みだったね。用事は片付いたの?」
「あぁ。それは片付いた。長い休みをとって悪かったな。」
「用事があったんだからいいんだよ。いつも働きすぎなくらいなんだから。」
「お前の護衛として当然のことしかしていない。」
「ふふ。ありがとう。」
実家の用事で少し長い間護衛を外れていたコンラッド。
伯爵家の次男である彼も、家族に関しては色々あるらしい。
「いや、そうではなくてだな。」
「わかってるよ。ちゃんと説明するから。」
珍しく慌てるコンラッドがおかしくて、ちょっとからかってしまう。
呆れるように見てくるコンラッドだが、それさえもおかしくて笑ってしまった。
「…そうか。見つけたんだな。…そうか…現れたんだな…よかった、よかったな…。」
説明を終えると、心底ほっとしたように呟くコンラッドに胸が締め付けられる。
スイに会う前は悲惨だったのを知っているから。
最近では、仕方ないと諦めかけていたし。
「ありがとう、コンラッド。これから忙しくなるけど、手伝ってくれる?」
「あぁ、もちろんだ。」
コンラッドは力強く頷いて喜んでくれた。
「まずは陛下に報告に行く。サーシス嬢の不貞の証拠も持って。」
「いつでも出せるようにまとめてある。」
いつか使うかもしれないと集めていた婚約者の不貞の証拠。
執事も近づきたがらない私のために、コンラッドは書類に関してもサポートしてくれている。
護衛をするほど強く、書類関係もさばけるのだからとても優秀なのだ。
「きっとコンラッドにも現れるよ。」
陛下の元へと向かいながらコンラッドに話しかけた。
「それは楽しみです。」
使用人の目がある廊下を歩いているので、敬語になったコンラッドがそう答える。
励ましのように感じているのが口調からわかる。
でも、励ましでも不確かな未来でもない。
確信しているんだ。
私にも現れた天使が、コンラッドにもあらわれることを。
誰かとかはわからないけど、きっと。
私とスイとコンラッドとコンラッドの愛する人、4人でお茶を飲んでいる姿が目に浮かぶ。
あぁ、きっとこれからの未来は明るい。
コンラッドは私の手首についているブレスレットを見ながら聞いてきた。
王族は皆持っている装飾品だ。
「婚約者が決まる前に言っていただろ。本当に愛する人が現れたら贈りたいと。」
自分の信頼する相手に渡す装飾品。
王族の伝統的な風習で、学園に入る前に作られるのだ。
「俺を一番信頼しているが、それは愛し愛される相手に贈りたい、そう言っていたじゃないか。サーシス伯爵令嬢に贈らないのは愛してないのはもちろんだろうが、現れるかもしれないと思っているんだろう。」
サーシス嬢には初日で贈ることはないと決めていたが、愛する人を見つけたいと思っていたのも事実だ。
でも、こんな醜いやつに好かれるなんて嫌だよな…と諦めかけていたのも本当だ。
「…こんな醜いやつを愛してくれる人なんていない。」
「いる。ヴィンセントはいいやつだ。内面を見てくれる人は現れる。」
「…そんな奇特なやつ、存在しない。」
「そう言うな。お前がそのブレスレットを持っている限り、俺も希望を持てる。王子にこんなことを思うのは不敬だとは思うが、俺と同じ容姿の人間が希望を捨てていないのは救われてるんだ。」
だから希望を捨てないで探してほしい、コンラッドは懇願するように言った。
そんなことを思っていたのか。
信頼しているのに渡せないことが少し心苦しかったが、そんな風に思ってくれているなんて。
「いるのかな…これを贈る相手を探してもいいのかな…。」
「いる。必ず。お前だって本当は嫌だろう?あんな令嬢。」
「当たり前でしょ。見た目がよかったとしてもお断りだよ。」
2人で顔を合わせて笑い合う。
そうだ、まだ希望は捨てない。
諦めてなんてやるもんか。
それのせいで時期国王になれなくても構わない。
愛する人もおらず、国に酷使されるなんてごめんだ。
「探すよ。何年かかっても。」
「あぁ。その意気だ。」
「だからコンラッドも探そうね。」
「…は?」
私はコンラッドも引き込んで探すことにした。
唯一の親友にだって幸せになってほしいのだ。
困惑する親友に向かって微笑みながら、未来に思いを馳せた。
久しぶりに晴れやかな気持ちになった。
「ということで、見つけてきたから。結婚することにもなったから。今の婚約者とは婚約解消するね。」
「おい待て、俺が休みの間になんでそんなに急展開になっているんだ。」
「珍しく長めの休みだったね。用事は片付いたの?」
「あぁ。それは片付いた。長い休みをとって悪かったな。」
「用事があったんだからいいんだよ。いつも働きすぎなくらいなんだから。」
「お前の護衛として当然のことしかしていない。」
「ふふ。ありがとう。」
実家の用事で少し長い間護衛を外れていたコンラッド。
伯爵家の次男である彼も、家族に関しては色々あるらしい。
「いや、そうではなくてだな。」
「わかってるよ。ちゃんと説明するから。」
珍しく慌てるコンラッドがおかしくて、ちょっとからかってしまう。
呆れるように見てくるコンラッドだが、それさえもおかしくて笑ってしまった。
「…そうか。見つけたんだな。…そうか…現れたんだな…よかった、よかったな…。」
説明を終えると、心底ほっとしたように呟くコンラッドに胸が締め付けられる。
スイに会う前は悲惨だったのを知っているから。
最近では、仕方ないと諦めかけていたし。
「ありがとう、コンラッド。これから忙しくなるけど、手伝ってくれる?」
「あぁ、もちろんだ。」
コンラッドは力強く頷いて喜んでくれた。
「まずは陛下に報告に行く。サーシス嬢の不貞の証拠も持って。」
「いつでも出せるようにまとめてある。」
いつか使うかもしれないと集めていた婚約者の不貞の証拠。
執事も近づきたがらない私のために、コンラッドは書類に関してもサポートしてくれている。
護衛をするほど強く、書類関係もさばけるのだからとても優秀なのだ。
「きっとコンラッドにも現れるよ。」
陛下の元へと向かいながらコンラッドに話しかけた。
「それは楽しみです。」
使用人の目がある廊下を歩いているので、敬語になったコンラッドがそう答える。
励ましのように感じているのが口調からわかる。
でも、励ましでも不確かな未来でもない。
確信しているんだ。
私にも現れた天使が、コンラッドにもあらわれることを。
誰かとかはわからないけど、きっと。
私とスイとコンラッドとコンラッドの愛する人、4人でお茶を飲んでいる姿が目に浮かぶ。
あぁ、きっとこれからの未来は明るい。
0
あなたにおすすめの小説
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
黒騎士団の娼婦
イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
不憫な貴方を幸せにします
紅子
恋愛
絶世の美女と男からチヤホヤされるけど、全然嬉しくない。だって、私の好みは正反対なんだもん!ああ、前世なんて思い出さなければよかった。美醜逆転したこの世界で私のタイプは超醜男。競争率0のはずなのに、周りはみんな違う意味で敵ばっかり。もう!私にかまわないで!!!
毎日00:00に更新します。
完結済み
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける
朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。
お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン
絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。
「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」
「えっ!? ええぇぇえええ!!!」
この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。
今世は『私の理想』の容姿らしいけど‥到底認められないんです!
文月
恋愛
私の理想の容姿は「人形の様な整った顔」。
クールビューティーっていうの? 華やかで目を引くタイプじゃなくて、ちょっと近寄りがたい感じの正統派美人。
皆の人気者でいつも人に囲まれて‥ってのじゃなくて、「高嶺の花だ‥」って遠巻きに憧れられる‥そういうのに憧れる。
そりゃね、モテたいって願望はあるよ? 自分の(密かな)願望にまで嘘は言いません。だけど、チヤホヤ持ち上げられて「あの子、天狗になってない? 」とか陰口叩かれるのはヤなんだよ。「そんなんやっかみだろ」っていやあ、それまでだよ? 自分がホントに天狗になってないんなら。‥そういうことじゃなくて、どうせなら「お高く留まってるのよね」「綺麗な人は一般人とは違う‥って思ってんじゃない? 」って風に‥やっかまれたい。
‥とこれは、密かな願望。
生まれ変わる度に自分の容姿に落胆していた『死んで、生まれ変わって‥前世の記憶が残る特殊なタイプの魂(限定10)』のハヅキは、次第に「ままならない転生」に見切りをつけて、「現実的に」「少しでも幸せになれる生き方を送る」に目標をシフトチェンジして頑張ってきた。本当の「密かな願望」に蓋をして‥。
そして、ラスト10回目。最後の転生。
生まれ落ちるハヅキの魂に神様は「今世は貴女の理想を叶えて上げる」と言った。歓喜して神様に祈りをささげたところで暗転。生まれ変わったハヅキは「前世の記憶が思い出される」3歳の誕生日に期待と祈りを込めて鏡を覗き込む。そこに映っていたのは‥
今まで散々見て来た、地味顔の自分だった。
は? 神様‥あんだけ期待させといて‥これはないんじゃない?!
落胆するハヅキは知らない。
この世界は、今までの世界と美醜の感覚が全然違う世界だということに‥
この世界で、ハヅキは「(この世界的に)理想的で、人形のように美しい」「絶世の美女」で「恐れ多くて容易に近づけない高嶺の花」の存在だということに‥。
神様が叶えたのは「ハヅキの理想の容姿」ではなく、「高嶺の花的存在になりたい」という願望だったのだ!
この話は、無自覚(この世界的に)美人・ハヅキが「最後の人生だし! 」ってぶっちゃけて(ハヅキ的に)理想の男性にアプローチしていくお話しです。
私だけ価値観の違う世界~婚約破棄され、罰として醜男だと有名な辺境伯と結婚させられたけれど何も問題ないです~
キョウキョウ
恋愛
どうやら私は、周りの令嬢たちと容姿の好みが違っているみたい。
友人とのお茶会で発覚したけれど、あまり気にしなかった。
人と好みが違っていても、私には既に婚約相手が居るから。
その人と、どうやって一緒に生きて行くのかを考えるべきだと思っていた。
そんな私は、卒業パーティーで婚約者である王子から婚約破棄を言い渡された。
婚約を破棄する理由は、とある令嬢を私がイジメたという告発があったから。
もちろん、イジメなんてしていない。だけど、婚約相手は私の話など聞かなかった。
婚約を破棄された私は、醜男として有名な辺境伯と強制的に結婚させられることになった。
すぐに辺境へ送られてしまう。友人と離ればなれになるのは寂しいけれど、王子の命令には逆らえない。
新たにパートナーとなる人と会ってみたら、その男性は胸が高鳴るほど素敵でいい人だった。
人とは違う好みの私に、バッチリ合う相手だった。
これから私は、辺境伯と幸せな結婚生活を送ろうと思います。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる