花野井一家の幸せ。

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鈴蘭の場合1

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鈴蘭side


「スイレンちゃん!注文お願い!」


「スズランちゃん!からあげ定食3人分よろしくー!」


「ヒナギクちゃーん!こっちも決まったよー!」



すいちゃんとヴィンセントさんが恋人同士になって早1週間。
今日も今日とて大忙しだ。
あれからヴィンセントさんが訪ねてくることはなかったが、毎日花束が届けられていた。
色々な種類の花束と共に手紙も添えられていた。
開いてみるたびにすいちゃんが嬉しそうにするので、きっと愛の言葉が書かれているに違いない。



「はーい、今伺いまーす!」


「畏まりましたー!」


「はいはーい!何にします?」



三姉妹それぞれがくるくる周りながら注文を受けていく。
元の世界ではありえなかった幸せがここにあり、異世界転移に感謝していた。



「で、ようやく自分たちで稼げるようになったから、お母さんにプレゼント買わない?」



食堂の閉店作業中にすいちゃんとひなちゃんに提案した。
もちろん、厨房には届かないようにこそこそと。



「それいいね。そろそろお母さんの誕生日だし、前々から自分たちの給料で買いたかったもんね。」


「手作りの料理でも喜んでくれたけど、やっぱり形に残るものもあげたいよね。」



2人も嬉しそうに賛成してくれた。
この世界の時間の数えかたも元の世界と同じだ。
だからそろそろおかあさん誕生日だなって思っていたのだ。
元の世界では自由できるお金がなく、稼ぐこともできなかったので、毎年三姉妹でごはんを作っていた。
食費も限られていたので豪華にすることはできなかったが。
もちろんあの男はそんなめでたい日にも帰ってこなかった。
都合がよかったのでラッキーと思っていたけどね。



「お母さんの誕生日の前日にさ、皆で買い物に行かない?ちょうどその日は休みだし。」


「行こ行こ!フランクさんたちが昨日お給料くれたし!」


「食材も買って豪華にして、盛大に誕生日会しよ!」



三姉妹で頷きあいながら話を決めた。
そのあと、お母さんに気づかれないようにフランクさんたちに話をして、買い物をする日はお母さんを連れ出してくれるように頼んだ。



「すみません。お休みの日はデートの日なのに。」


「いいの、いいの!素敵じゃない!誕生日会!」


「ありがとうございます。助かります。」


「それで、その誕生日会にお二人も参加してもらえたらなと…。」


「まぁまぁ!いいのかね!」


「それはもちろんだ。こっちも日頃から世話になってるし。」



2人は喜んで了承してくれた。
そして、誕生日前日だけじゃなく、当日もお店を休みにしてお祝いすることになった。
さすがにそれは悪いと思ったが、2人がどうしてもと言ってくれたので、ありがたくそうしてもらうことにした。



「本当にありがとうございます。」


「お母さんには当日にサプライズで休みだと教えてもいいですか?」


「もちろん!盛大にお祝いしなきゃ!」



もう、私たちより盛り上がっているフランクさんたち。
私たちもプレゼントを用意しようと話し合っていた。
本当に優しい人たちで、心が暖かくなった。







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