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鈴蘭の場合3
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「喉乾いた。なんか飲んで待ってよ。」
飲み物を買って待ち合わせのところで待っていたが、視線が気になって飲みづらい。
1人なったからって視線がなくなるわけないか。
少し居心地が悪くて路地裏の近くに行く。
路地裏の中まで行ったら、さすがに危ないのはわかるので。
しかし、少しは人目につく場所だからと気を緩めて飲み物を飲んでいたのが悪かった。
周りの視線から隠れるように1人の男性が前を通りすぎる瞬間に、路地裏の中に引っ張り込まれた。
「やったぞ!天使を手に入れた!」
「遠目から付けていて正解だったな。」
「ここら辺の住民の守りが堅くて近寄れなかったからな。こんな近くまで来てくれてラッキーだぜ。」
複数の男性の声があちこちで聞こえた。
上からも左右からも前からも…。
これはヤバい。
本能で身体が固くなる。
「そんなに緊張しないで。」
「君はスイレンちゃん?スズランちゃん?それともヒナギクちゃんかな?」
「いや、キキョウさんかもよ?」
覗き込んできたのは若い男。
太っていて細い目と潰れた鼻に大きな口をしていて、こんな状況だから化け物に見えた。
「…っ、や、やだっ…。」
普段あんなに話すのが好きなのに、喉が張り付いたかのように声が出ない。
恐怖で竦み上がる。
「大丈夫だよー。優しくするから。」
「そうそう。天使に痛いことなんてしないから。」
「安心して着いてきて。」
口々にそう言う化け物たち。
口調は優しいのに、捕まれている腕は痛い。
やっぱりだ。
男はこんなのばっかりだ。
口でも力でも屈服させて言うことを聞かすんだ。
聞かなかったら怒鳴り付けて、それでお母さんに八つ当たりするんだ。
見せつけて、お前が言うことを聞かないから悪いと言い聞かせる。
支配して満足する。
そんなやつら人間じゃない、化け物だ。
「……っ!」
「え?なになに?」
「声出ないの?震えてかわいー。」
触るな!離せ!、そう言ったはずなのに声にならない。
悔しい、悔しい!
まだあの男からの呪縛から逃れられない!
さっきまで幸せだったのに!
皆笑顔で…心から笑えていたのに!
解放されたと思っていたのに!
悔しくて涙があふれる。
「あらら、泣いちゃった。泣き顔も可愛いなー。」
「睨んだ顔も最高。」
「涙も美味しそうだね。」
歪む視界の中、精一杯睨み付けるが効果がない。
震える身体に逃げろと言うが、力が入らない。
どうにかしなきゃ、どうしよう…!
「おい、それは同意してるのか?」
頭の中でぐるぐる考えていると、後ろから低い声が聞こえた。
こいつらの声じゃない、そう思って振り返ると、フードをかぶった大きな男が立っていた。
「なんだ?」
「おい、邪魔すんなよ。」
「天使は着いてきたくて来てるんだから。」
そう言う男たちに、違うと必死に首を横に振る。
「違うみたいだが?」
「照れてるんだよ!いいから失せろ!」
5人いたらしい男の1人がフードの男に殴りかかる。
ひらりと簡単に避けたフードの男は首の後ろを叩いて気絶をさせた。
「おい!大丈夫か!」
「なにすんだよ!」
仲間が最小限の動きで仕留められたことに動揺がはしる。
「その人から手を離せ。」
「うっせぇ!」
「さっさと消えろ!」
1人ではだめだと思ったのか、今度は2人でいくが、またしてもあっさり気絶させてしまう。
「なんだこいつ!ヤバいぞ!」
「とにかく逃げよう!」
残りの2人がそう言うと、私の腕を引っ張って連れていこうとする。
この状況で連れていくのか!と呆れつつも足を踏ん張る。
その間にフードの男が両脇の男たちをさっさと気絶させた。
あっさり回避できた最悪だった状況に呆然とする。
「…大丈夫か?いや、大丈夫ではないか。今騎士団を呼ばせたからすぐに来る。」
あまり近づかずに教えてくれたフードの男。
先程の状況から考慮してくれたのだろう。
男が近づいたら怖いかもしれないと。
「あ、あの、ありが…とう、ござい、ました。」
さっきの余韻からか声が出しづらい。
まだ恐怖で震えている。
「いや、もう少し早く来れればよかった。すまない。」
一つも悪くないのに、頭を下げて謝ってくるフードの男。
それに安心したのか、また一気に涙が溢れてしまった。
私の様子にわたわたとしだしたのが、歪んだ視界からでもわかった。
それにまた安心してしまって、もう無意識に抱きついてしまった。
初対面の男に。
「そんなことないですぅー!ひっく、ありがとうございましたぁー!うわあぁん!怖かったぁーー!」
そして、大号泣。
もう一度言おう、初対面の男にだ。
あとから謝り倒すことになるのだが、今はそんなことにも気付いてなかった。
おろおろとしながら男が優しく頭を撫でてくれた。
それに安心して余計に力を込めて抱きついてしまったが。
飲み物を買って待ち合わせのところで待っていたが、視線が気になって飲みづらい。
1人なったからって視線がなくなるわけないか。
少し居心地が悪くて路地裏の近くに行く。
路地裏の中まで行ったら、さすがに危ないのはわかるので。
しかし、少しは人目につく場所だからと気を緩めて飲み物を飲んでいたのが悪かった。
周りの視線から隠れるように1人の男性が前を通りすぎる瞬間に、路地裏の中に引っ張り込まれた。
「やったぞ!天使を手に入れた!」
「遠目から付けていて正解だったな。」
「ここら辺の住民の守りが堅くて近寄れなかったからな。こんな近くまで来てくれてラッキーだぜ。」
複数の男性の声があちこちで聞こえた。
上からも左右からも前からも…。
これはヤバい。
本能で身体が固くなる。
「そんなに緊張しないで。」
「君はスイレンちゃん?スズランちゃん?それともヒナギクちゃんかな?」
「いや、キキョウさんかもよ?」
覗き込んできたのは若い男。
太っていて細い目と潰れた鼻に大きな口をしていて、こんな状況だから化け物に見えた。
「…っ、や、やだっ…。」
普段あんなに話すのが好きなのに、喉が張り付いたかのように声が出ない。
恐怖で竦み上がる。
「大丈夫だよー。優しくするから。」
「そうそう。天使に痛いことなんてしないから。」
「安心して着いてきて。」
口々にそう言う化け物たち。
口調は優しいのに、捕まれている腕は痛い。
やっぱりだ。
男はこんなのばっかりだ。
口でも力でも屈服させて言うことを聞かすんだ。
聞かなかったら怒鳴り付けて、それでお母さんに八つ当たりするんだ。
見せつけて、お前が言うことを聞かないから悪いと言い聞かせる。
支配して満足する。
そんなやつら人間じゃない、化け物だ。
「……っ!」
「え?なになに?」
「声出ないの?震えてかわいー。」
触るな!離せ!、そう言ったはずなのに声にならない。
悔しい、悔しい!
まだあの男からの呪縛から逃れられない!
さっきまで幸せだったのに!
皆笑顔で…心から笑えていたのに!
解放されたと思っていたのに!
悔しくて涙があふれる。
「あらら、泣いちゃった。泣き顔も可愛いなー。」
「睨んだ顔も最高。」
「涙も美味しそうだね。」
歪む視界の中、精一杯睨み付けるが効果がない。
震える身体に逃げろと言うが、力が入らない。
どうにかしなきゃ、どうしよう…!
「おい、それは同意してるのか?」
頭の中でぐるぐる考えていると、後ろから低い声が聞こえた。
こいつらの声じゃない、そう思って振り返ると、フードをかぶった大きな男が立っていた。
「なんだ?」
「おい、邪魔すんなよ。」
「天使は着いてきたくて来てるんだから。」
そう言う男たちに、違うと必死に首を横に振る。
「違うみたいだが?」
「照れてるんだよ!いいから失せろ!」
5人いたらしい男の1人がフードの男に殴りかかる。
ひらりと簡単に避けたフードの男は首の後ろを叩いて気絶をさせた。
「おい!大丈夫か!」
「なにすんだよ!」
仲間が最小限の動きで仕留められたことに動揺がはしる。
「その人から手を離せ。」
「うっせぇ!」
「さっさと消えろ!」
1人ではだめだと思ったのか、今度は2人でいくが、またしてもあっさり気絶させてしまう。
「なんだこいつ!ヤバいぞ!」
「とにかく逃げよう!」
残りの2人がそう言うと、私の腕を引っ張って連れていこうとする。
この状況で連れていくのか!と呆れつつも足を踏ん張る。
その間にフードの男が両脇の男たちをさっさと気絶させた。
あっさり回避できた最悪だった状況に呆然とする。
「…大丈夫か?いや、大丈夫ではないか。今騎士団を呼ばせたからすぐに来る。」
あまり近づかずに教えてくれたフードの男。
先程の状況から考慮してくれたのだろう。
男が近づいたら怖いかもしれないと。
「あ、あの、ありが…とう、ござい、ました。」
さっきの余韻からか声が出しづらい。
まだ恐怖で震えている。
「いや、もう少し早く来れればよかった。すまない。」
一つも悪くないのに、頭を下げて謝ってくるフードの男。
それに安心したのか、また一気に涙が溢れてしまった。
私の様子にわたわたとしだしたのが、歪んだ視界からでもわかった。
それにまた安心してしまって、もう無意識に抱きついてしまった。
初対面の男に。
「そんなことないですぅー!ひっく、ありがとうございましたぁー!うわあぁん!怖かったぁーー!」
そして、大号泣。
もう一度言おう、初対面の男にだ。
あとから謝り倒すことになるのだが、今はそんなことにも気付いてなかった。
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