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コンラッドの場合3
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愛する人探しをして少し経った頃、実家から手紙が来た。
とりあえず一度帰ってこいと、それだけ書かれていた。
もう縁を切ったつもりでいたので無視しようと思ったが、とりあえずはまだ家族だし、これからは帰らないと伝えるために行くことにした。
「すまない、少し長くなりそうだ。」
「大丈夫だよ。しっかり済ませてきて。」
にっこりと微笑むヴィンセントに申し訳なく思いながら、俺は実家に向かった。
理由も何も書かれていなかったので、一応長めの休みをとったのだ。
「あぁ、帰ってきたか。とりあえずこれをしろ。」
帰って早々、すぐに父の執務室に通されて言われたのが今の一言だ。
渡されたのは領地経営関連の書類。
「これはここの次期当主の兄上の仕事ですよね?」
「いいからやれ。グレンは忙しいんだ。」
こちらをちらりとも見ずに言う父に、これ以上は無駄かと諦める。
子どもの頃に剣術の練習と平行して、座学もしていたので書類関連もできるのだ。
文官になる可能性も考えてのことだ。
万が一剣術の才能が全くなかったら大変だからな。
「兄上はどちらに?」
手を止めずに父に聞いた。
「グレンは視察だ。」
あぁ、視察という名の放蕩か。
実は、実家の現状は把握済みだった。
兄が学園にまともに通わなかったことも、それにより領地経営の知識なんかも身に付けられなかったことも、街に行っては遊び呆けて金を使いまくっていることも、借金をしていることも。
我が家の経済状況は破綻しているだろうな。
兄を甘やかして育てた結果がこれだ。
「書類仕事もさせた方がいいのでは?」
「うるさい!お前は黙ってやればいいんだ!これからはお前が書類仕事をするんだ!だから騎士など辞めて戻るんだ!いいな!」
机を叩いて怒鳴る父に呆れる。
出ていけと言っておいて、帰ってこいとは…呆れて言葉もない。
「いえ、俺は騎士を辞めるつもりはありません。跡継ぎは兄上なので、書類仕事も兄上にしてもらってください。ここにある仕事だけは片付けます。」
「なんだと…!」
「話を聞いていたら終わりませんが。」
少し腹が立って言葉数が多くなる。
子どもの頃の扱いはやっぱり忘れられず、発散するように言ってしまった。
まだ何か言いたげな父だったが、終わらないと聞いて渋々座る。
それほど山のように書類があったのだ。
よくもここまで溜めたものだ。
まぁ、自分のほしい書類も探しやすそうだからいいか。
今回ここに来たのは、父たちの不正の証拠を見つけるためだ。
借金もしているくらいだからお金がないのだろう、国に架空の補助金を申請して受け取っていた。
兄も街で女性を孕ませてはおろさせているらしい。
しかも無断で。
妊娠したと告げられれば、勝手に堕胎薬を飲ませているのだ。
母だって父の架空請求を見逃しているし、他の家にお茶会をしに行っては盗みをして勝手に売り払ったりしている。
なんともクズな一家だ。
ヴィンセントの仕事を手伝っていることで気づけた事実に、いい機会だから潰させてもらおうと思ったのだ。
もっと追い詰められれば、きっとなんとかして俺に罪を擦り付けるだろうと予想できたからだ。
「父上、できました。次はこれをします。」
「あ、あぁ、早いな。…うむ、わかった。」
てきぱきと書類をさばきながら、バレないように証拠を集めた。
証拠はすぐに集まったのだが、溜まった仕事の量がすごく、そこに手間取って結局1ヶ月もかかってしまった。
どれだけ溜めていたんだと呆れる。
「では、戻ります。」
なんとか仕事を終わらせ、何かを言われる前に家を出た。
ようやくあの一家と縁を切れると思うと清々しい気分だった。
「ということで、見つけてきたから。結婚することにもなったから。今の婚約者とは婚約解消するね。」
「おい待て、俺が休みの間になんでそんなに急展開になっているんだ。」
帰って早々、ヴィンセントに告げられた言葉に混乱することも知らずに。
とりあえず一度帰ってこいと、それだけ書かれていた。
もう縁を切ったつもりでいたので無視しようと思ったが、とりあえずはまだ家族だし、これからは帰らないと伝えるために行くことにした。
「すまない、少し長くなりそうだ。」
「大丈夫だよ。しっかり済ませてきて。」
にっこりと微笑むヴィンセントに申し訳なく思いながら、俺は実家に向かった。
理由も何も書かれていなかったので、一応長めの休みをとったのだ。
「あぁ、帰ってきたか。とりあえずこれをしろ。」
帰って早々、すぐに父の執務室に通されて言われたのが今の一言だ。
渡されたのは領地経営関連の書類。
「これはここの次期当主の兄上の仕事ですよね?」
「いいからやれ。グレンは忙しいんだ。」
こちらをちらりとも見ずに言う父に、これ以上は無駄かと諦める。
子どもの頃に剣術の練習と平行して、座学もしていたので書類関連もできるのだ。
文官になる可能性も考えてのことだ。
万が一剣術の才能が全くなかったら大変だからな。
「兄上はどちらに?」
手を止めずに父に聞いた。
「グレンは視察だ。」
あぁ、視察という名の放蕩か。
実は、実家の現状は把握済みだった。
兄が学園にまともに通わなかったことも、それにより領地経営の知識なんかも身に付けられなかったことも、街に行っては遊び呆けて金を使いまくっていることも、借金をしていることも。
我が家の経済状況は破綻しているだろうな。
兄を甘やかして育てた結果がこれだ。
「書類仕事もさせた方がいいのでは?」
「うるさい!お前は黙ってやればいいんだ!これからはお前が書類仕事をするんだ!だから騎士など辞めて戻るんだ!いいな!」
机を叩いて怒鳴る父に呆れる。
出ていけと言っておいて、帰ってこいとは…呆れて言葉もない。
「いえ、俺は騎士を辞めるつもりはありません。跡継ぎは兄上なので、書類仕事も兄上にしてもらってください。ここにある仕事だけは片付けます。」
「なんだと…!」
「話を聞いていたら終わりませんが。」
少し腹が立って言葉数が多くなる。
子どもの頃の扱いはやっぱり忘れられず、発散するように言ってしまった。
まだ何か言いたげな父だったが、終わらないと聞いて渋々座る。
それほど山のように書類があったのだ。
よくもここまで溜めたものだ。
まぁ、自分のほしい書類も探しやすそうだからいいか。
今回ここに来たのは、父たちの不正の証拠を見つけるためだ。
借金もしているくらいだからお金がないのだろう、国に架空の補助金を申請して受け取っていた。
兄も街で女性を孕ませてはおろさせているらしい。
しかも無断で。
妊娠したと告げられれば、勝手に堕胎薬を飲ませているのだ。
母だって父の架空請求を見逃しているし、他の家にお茶会をしに行っては盗みをして勝手に売り払ったりしている。
なんともクズな一家だ。
ヴィンセントの仕事を手伝っていることで気づけた事実に、いい機会だから潰させてもらおうと思ったのだ。
もっと追い詰められれば、きっとなんとかして俺に罪を擦り付けるだろうと予想できたからだ。
「父上、できました。次はこれをします。」
「あ、あぁ、早いな。…うむ、わかった。」
てきぱきと書類をさばきながら、バレないように証拠を集めた。
証拠はすぐに集まったのだが、溜まった仕事の量がすごく、そこに手間取って結局1ヶ月もかかってしまった。
どれだけ溜めていたんだと呆れる。
「では、戻ります。」
なんとか仕事を終わらせ、何かを言われる前に家を出た。
ようやくあの一家と縁を切れると思うと清々しい気分だった。
「ということで、見つけてきたから。結婚することにもなったから。今の婚約者とは婚約解消するね。」
「おい待て、俺が休みの間になんでそんなに急展開になっているんだ。」
帰って早々、ヴィンセントに告げられた言葉に混乱することも知らずに。
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