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ep0. 「真夏の夜の爪」 57.アダムとイブの標準装備
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「据え膳」
少年は繰り返して呟く。
そう、据え膳ッス、と概史も繰り返す。
男の恥。
少年は思考を巡らせる。
恥って?恥って何だよ?男の?男の恥。
理由は自分でも解らないが何か言い知れぬ感情が湧き上がって来た。
つまり“食わ”ねば恥になる。
据え膳を用意した側にも恥を掻かせる事になる。
双方にとっての恥となるという事か?
わからない、と少年は首を振った。
「え?そんなに難しく考えなくても良くないッスか?」
概史が少し驚いたように言う。
「セックスすんのがそんなに難易度高かったらとっくに人類滅亡してません?」
概史が尤もなことを言う。
「アダムとイブ、イザナギとイザナミの時代から誰にも教わんなくてもヤッてたじゃないスか。細けぇ事はいいんだよ!ってヤツッス。多分人間にそういう機能はデフォルトで標準装備されてるんスよ」
「標準装備」
少年は繰り返した。
つまりそういう機能は俺とマコトに備わっているという事か。
そういう機能って?セックスする機能?それとも子孫を残す機能?
「本能じゃ無いッスか?だってこの世界のあらゆる生き物はそうでしょう?誰にも教わらなくてもそうしてる。猫も犬も兎もライオンも虎も」
生き物はそういう風に出来てるじゃないですか、と概史は力強く言う。
「生き物」
もちろんおれらもそうじゃないッスか、と概史は真っ直ぐに少年を見た。
「なあ、概史」
少年が視線をちゃぶ台の上から概史に移した。
「正直なところ、初めてヤッた時にどう思った?」
概史は一瞬目をパチクリとさせた後にこう言い放った。
「いや~キツいっス」
キツい。
どっちの意味だ?
少年は困惑したがそれ以上は聞き返せなかった。
少年にはさっきの質問が限界だった。
それですら必死で絞り出した物だった。
質問を変えよう、と少年は思い直した。
「概史。お前さ、撫子のこと好きか?」
一瞬の沈黙が二人の間を通過する。
いや~そういうのじゃ無いッス、と概史はヘラヘラと笑ってみせる。
「じゃあ何だよ?」
少年は扇風機のスイッチを『中』に切り替える。
なんて言うかその、と概史は前置きしてから言う。
「嫁っていうか家族って感じッス」
「嫁」
少年は思考を止めてその言葉を繰り返した。
「どうしてそう思った?」
概史はまたヘラヘラと笑ってみせた。
「ほら、アイツって変わり者でしょ?思考がおかしいっていうかブッ飛んでるっていうか狂ってるっていうか」
でもそこが良いっていうか、と概史は続けた。
少年は黙って概史の言葉を聞いていた。
「ある日急に思ったんスよ。あ、こいつ絶対おれの嫁だろ、って」
急に湧き上がった確信。
世間ではそれを運命というのだろうか。
ねえ、こういう話って聞いたことありません?と概史が言葉を続けた。
「かつて世界は男と女の区別がなくて人類は両性具有だったって話なんスけど」
両性具有。
いわゆる“ふたなり”と呼ばれている存在だろうか。
おう、それで?と少年は概史の話を促した。
しかしそれがある日突然、人類は男と女に分けられたんスよ。理由はよく知らないんスけど、と概史は続けた。
「だから人間はそれから自分の半身を求めて彷徨うようになったって」
かつて別れた自分の半身。
男と女。
その別れた自分の半身が、もう片方の存在が撫子だって言うのかこいつは?
そうなんだろうか、と少年は思った。
「でも結婚しても離婚する事もあるし、男と男、女と女でくっ付く事もあるんじゃね?」
うーんまあそうでしょうけど、と概史も頷く。
「でもなんかこういう話っていいっスよね」
ただそれだけの事だった。
しかしそれは何か重要な事柄であるようにも少年には思えた。
こいつら幸せそうでいいよなぁ、と少年はぼんやりと概史を見つめた。
マコトと少年はどう足掻いても今日を最後にあと十年は会えないかもしれないのだ。
織姫や彦星だって年に一回くらいは会えるだろうに。
少年は繰り返して呟く。
そう、据え膳ッス、と概史も繰り返す。
男の恥。
少年は思考を巡らせる。
恥って?恥って何だよ?男の?男の恥。
理由は自分でも解らないが何か言い知れぬ感情が湧き上がって来た。
つまり“食わ”ねば恥になる。
据え膳を用意した側にも恥を掻かせる事になる。
双方にとっての恥となるという事か?
わからない、と少年は首を振った。
「え?そんなに難しく考えなくても良くないッスか?」
概史が少し驚いたように言う。
「セックスすんのがそんなに難易度高かったらとっくに人類滅亡してません?」
概史が尤もなことを言う。
「アダムとイブ、イザナギとイザナミの時代から誰にも教わんなくてもヤッてたじゃないスか。細けぇ事はいいんだよ!ってヤツッス。多分人間にそういう機能はデフォルトで標準装備されてるんスよ」
「標準装備」
少年は繰り返した。
つまりそういう機能は俺とマコトに備わっているという事か。
そういう機能って?セックスする機能?それとも子孫を残す機能?
「本能じゃ無いッスか?だってこの世界のあらゆる生き物はそうでしょう?誰にも教わらなくてもそうしてる。猫も犬も兎もライオンも虎も」
生き物はそういう風に出来てるじゃないですか、と概史は力強く言う。
「生き物」
もちろんおれらもそうじゃないッスか、と概史は真っ直ぐに少年を見た。
「なあ、概史」
少年が視線をちゃぶ台の上から概史に移した。
「正直なところ、初めてヤッた時にどう思った?」
概史は一瞬目をパチクリとさせた後にこう言い放った。
「いや~キツいっス」
キツい。
どっちの意味だ?
少年は困惑したがそれ以上は聞き返せなかった。
少年にはさっきの質問が限界だった。
それですら必死で絞り出した物だった。
質問を変えよう、と少年は思い直した。
「概史。お前さ、撫子のこと好きか?」
一瞬の沈黙が二人の間を通過する。
いや~そういうのじゃ無いッス、と概史はヘラヘラと笑ってみせる。
「じゃあ何だよ?」
少年は扇風機のスイッチを『中』に切り替える。
なんて言うかその、と概史は前置きしてから言う。
「嫁っていうか家族って感じッス」
「嫁」
少年は思考を止めてその言葉を繰り返した。
「どうしてそう思った?」
概史はまたヘラヘラと笑ってみせた。
「ほら、アイツって変わり者でしょ?思考がおかしいっていうかブッ飛んでるっていうか狂ってるっていうか」
でもそこが良いっていうか、と概史は続けた。
少年は黙って概史の言葉を聞いていた。
「ある日急に思ったんスよ。あ、こいつ絶対おれの嫁だろ、って」
急に湧き上がった確信。
世間ではそれを運命というのだろうか。
ねえ、こういう話って聞いたことありません?と概史が言葉を続けた。
「かつて世界は男と女の区別がなくて人類は両性具有だったって話なんスけど」
両性具有。
いわゆる“ふたなり”と呼ばれている存在だろうか。
おう、それで?と少年は概史の話を促した。
しかしそれがある日突然、人類は男と女に分けられたんスよ。理由はよく知らないんスけど、と概史は続けた。
「だから人間はそれから自分の半身を求めて彷徨うようになったって」
かつて別れた自分の半身。
男と女。
その別れた自分の半身が、もう片方の存在が撫子だって言うのかこいつは?
そうなんだろうか、と少年は思った。
「でも結婚しても離婚する事もあるし、男と男、女と女でくっ付く事もあるんじゃね?」
うーんまあそうでしょうけど、と概史も頷く。
「でもなんかこういう話っていいっスよね」
ただそれだけの事だった。
しかしそれは何か重要な事柄であるようにも少年には思えた。
こいつら幸せそうでいいよなぁ、と少年はぼんやりと概史を見つめた。
マコトと少年はどう足掻いても今日を最後にあと十年は会えないかもしれないのだ。
織姫や彦星だって年に一回くらいは会えるだろうに。
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