361 / 1,153
ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 ハードモード縛りプレイ
しおりを挟む
「夢野は本当に父ちゃんが好きなんだなぁ」
俺はそう絞り出すので精一杯だった。
離れて暮らすのは寂しいんじゃないのか、となるべく慎重に夢野に問いかける。
うん、と夢野は小さく頷く。
「パパとママが離婚したとき─────あたしとレンはパパのところで暮らすはずだったの」
だけど、まだ小さかったレンが『ママと離れるのはイヤだ!このお家から引っ越すのはイヤだ!』って大泣きして……結局ここでママと暮らすことになったの、と夢野は複雑そうに呟いた。
「え?そうなのか?」
意外な話だった。
夢野と弟は本来なら都会で父親と一緒に生活してるはずだったのか?
じゃあ、ここでの生活は不本意だということなんだろうか。
夢野の胸中はわからない。
「ここの家、ちょっと変わってるでしょ。特殊というか─────」
これね、パパとママの共通の趣味でね。注文住宅なんだって、と夢野は続けた。
「パパとママってこういうテイストが昔から好みだったみたいでね。暖炉のあるプロヴァンス風の家は長年の夢だったって言ってたわ」
だけど、と夢野は顔を曇らせる。
「都会での仕事がメインのパパと、激務をこなすママの間に溝が出来ちゃって。あたしたちの知らない間に離婚が成立してたみたいなの」
パパはママに財産分与としてこの家を残してくれたみたいで……あ、ローンは完済してるって言ってたんだけど、と夢野は堰せきを切ったように話し続ける。
「パパとママね、二人ともあたしたちに秘密にしてることがあるみたいなの。心配させまいとしてくれてるんだろうけど─────でも、なんとなく雰囲気で分かるっていうか」
ママね、何かの支払いに追われてるみたいで。何かを買ったとか借金とかそういうのとは違うみたいなんだけど。でも、うちのお金はカツカツみたい、と夢野はため息をついた。
「支払い?」
うん、と夢野は頷く。
「持ち家だから家賃が掛からないのは助かるんだけど……家計簿見たら他の部分はもう火の車みたいな有り様でね。少しでも削れるとこは削らなきゃいけなくて」
ママがね、ちょっとでもお得な商品券を買って来るからそれでやりくりしてるの、と顔を横に向け夢野は視線をローテーブルに移す。
俺は再びローテーブルの上を見た。
プラスティックの棒とテディベア、ソーイングセットの横に封筒が置かれている。
封筒の中から紙束の端がチラリと出ているのが見えた。
「商品券?これのことか?」
俺は封筒を手に取る。
中から出て来たのは、[地域振興券]と書かれた金券だった。
「地域振興券……?」
何やら聞き慣れない単語だ。
「この市内全域で使えるっていう、エリア限定の商品券みたいなものらしくて─────どういうカラクリで何処から入手してくるのかよくわからないんだけど、1000円の額面のものが900円で買えるみたいなの」
「1000円券が900円で!?」
驚いた俺は思わず声を上げた。
めっちゃお得じゃねぇか?
額面の一割引?
うん、と夢野は頷く。
「けど、エリア外のお店では全く使えないのとお釣りが出ないのはちょっと難点かも」
なるほどそうなのか。
メリットとデメリットを鑑みての価格設定なんだろう。
封筒に入っている束を見て俺はあることに気付く。
「もしかして夢野、食料品や日用品の買い物ってこの[地域振興券]ってヤツで賄ってるのか?」
「うん。金券で20000円分と現金で7000円。それで食費と日用品を全部買ってるよ。あ、給食費は別だよ」
夢野はなんでもないように言ってのけたが─────
家族3人の食費と雑費で27000円?
1ヶ月一万円生活でも一人分の値段だろ?
それより安いって結構ハードモードじゃね?とんでもねぇ縛りプレイじゃねぇか。
俺はそう絞り出すので精一杯だった。
離れて暮らすのは寂しいんじゃないのか、となるべく慎重に夢野に問いかける。
うん、と夢野は小さく頷く。
「パパとママが離婚したとき─────あたしとレンはパパのところで暮らすはずだったの」
だけど、まだ小さかったレンが『ママと離れるのはイヤだ!このお家から引っ越すのはイヤだ!』って大泣きして……結局ここでママと暮らすことになったの、と夢野は複雑そうに呟いた。
「え?そうなのか?」
意外な話だった。
夢野と弟は本来なら都会で父親と一緒に生活してるはずだったのか?
じゃあ、ここでの生活は不本意だということなんだろうか。
夢野の胸中はわからない。
「ここの家、ちょっと変わってるでしょ。特殊というか─────」
これね、パパとママの共通の趣味でね。注文住宅なんだって、と夢野は続けた。
「パパとママってこういうテイストが昔から好みだったみたいでね。暖炉のあるプロヴァンス風の家は長年の夢だったって言ってたわ」
だけど、と夢野は顔を曇らせる。
「都会での仕事がメインのパパと、激務をこなすママの間に溝が出来ちゃって。あたしたちの知らない間に離婚が成立してたみたいなの」
パパはママに財産分与としてこの家を残してくれたみたいで……あ、ローンは完済してるって言ってたんだけど、と夢野は堰せきを切ったように話し続ける。
「パパとママね、二人ともあたしたちに秘密にしてることがあるみたいなの。心配させまいとしてくれてるんだろうけど─────でも、なんとなく雰囲気で分かるっていうか」
ママね、何かの支払いに追われてるみたいで。何かを買ったとか借金とかそういうのとは違うみたいなんだけど。でも、うちのお金はカツカツみたい、と夢野はため息をついた。
「支払い?」
うん、と夢野は頷く。
「持ち家だから家賃が掛からないのは助かるんだけど……家計簿見たら他の部分はもう火の車みたいな有り様でね。少しでも削れるとこは削らなきゃいけなくて」
ママがね、ちょっとでもお得な商品券を買って来るからそれでやりくりしてるの、と顔を横に向け夢野は視線をローテーブルに移す。
俺は再びローテーブルの上を見た。
プラスティックの棒とテディベア、ソーイングセットの横に封筒が置かれている。
封筒の中から紙束の端がチラリと出ているのが見えた。
「商品券?これのことか?」
俺は封筒を手に取る。
中から出て来たのは、[地域振興券]と書かれた金券だった。
「地域振興券……?」
何やら聞き慣れない単語だ。
「この市内全域で使えるっていう、エリア限定の商品券みたいなものらしくて─────どういうカラクリで何処から入手してくるのかよくわからないんだけど、1000円の額面のものが900円で買えるみたいなの」
「1000円券が900円で!?」
驚いた俺は思わず声を上げた。
めっちゃお得じゃねぇか?
額面の一割引?
うん、と夢野は頷く。
「けど、エリア外のお店では全く使えないのとお釣りが出ないのはちょっと難点かも」
なるほどそうなのか。
メリットとデメリットを鑑みての価格設定なんだろう。
封筒に入っている束を見て俺はあることに気付く。
「もしかして夢野、食料品や日用品の買い物ってこの[地域振興券]ってヤツで賄ってるのか?」
「うん。金券で20000円分と現金で7000円。それで食費と日用品を全部買ってるよ。あ、給食費は別だよ」
夢野はなんでもないように言ってのけたが─────
家族3人の食費と雑費で27000円?
1ヶ月一万円生活でも一人分の値段だろ?
それより安いって結構ハードモードじゃね?とんでもねぇ縛りプレイじゃねぇか。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる