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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 悪意のない傷
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「5月の末か……6月の頭だったかも」
上野はハッキリとそう答えた。
え?
「それって……食券の事件より前って事だよな?」
水森の食券が3年に盗られたのは三者面談の日だから7月上旬だ。
待てよ?
って言う事はさ。
「俺はてっきり、二人の間にヒビが入ったのは食券の騒動の後だと思ってたんだが─────」
それだとさ、それ以前から既に雲行きが怪しかったってことなのか、と俺は上野に尋ねた。
「だからさ、あーしさっきからそう言ってるじゃん」
上野はいい加減にしろ、とでも言った風に呆れたような表情を浮かべた。
「そんでさ、水森っちが泣いてたからどうしたのか聞いたワケよ。そしたらさ─────」
上野はその時あった状況を俺に説明した。
それは端的に言えば『珍しく水森が夢野に悩みごとを相談しようとした所、話の全部を聞き終わる前に夢野が話題を変えた』という事らしかった。
そのテの子って居るよね。彼女に限らずさ、と上野は苦々しそうに呟いた。
「人がしてる話題を取っちゃうっていうかさ、話を聞き終わらないうちに被せ気味で答えてくるとかさ。最悪なのが自分の話にすり替えて来るパターンとか」
上野の言っていることはなんとなく理解できた。
確かに─────夢野にはそんな所があるかもしれない。
思い当たる節はあった。
夢野の魅力というか、長所の一つに[頭の回転が早い]っていうのがあると思ってるんだが。
一つの話題からどんどん膨らませてポンポンと言葉を返して来る。
夢中になったらマシンガントークが止まらないし、得意な分野なら尚更だ。
同じ趣味だったり好きなことが同じ人間だったらさぞかし話が盛り上がるんだろうな、と感じられる場面が多々あった。
だけど。
それが裏目に出ちまった格好になったんだろうか。
水森が何かを相談しようとした時に─────
その“導入”の部分で夢野はいつものようにポンポンと返事を返して、結果として水森の相談を潰してしまう格好になったと─────
そういう事なんだろうか。
「水森はさ、何について悩んでたんだ?」
上野は知ってるのか、と俺が訊くと上野は小さく頷いた。
「多分だけど……家族のコトと進路のコトじゃないのかなって思ったんだよね。けど、泣いてたのはそこじゃ無いっていうか」
上野はやや言葉を濁すようにこう続けた。
「よくわかんないんだけどさ、その後の水森っちの様子を見るにさ、肝心の『悩みごと』みたいなのは解決したっぽいんだよね」
吹っ切れたっていうかさ、そんな感じなんだよね、という上野の言葉にも俺は思い当たる節があった。
確か、水森と話した時に─────
『高校へは行かない』みたいなことは言ってたよな。
多分、水森なりに考えて結論を出したんだろう。
その辺に迷いは無いようにも見受けられた。
けどさ、と上野は続けた。
「多分だけどさ、その『悩みごと』の事で泣いてたってカンジがしなかったんだよね。どっちかってーと“親友”のハズの彼女の態度の方に傷ついてたって言うか?」
それもなんとなく理解できる。
恐らく─────
水森は夢野に『話を聞いて欲しかった』んだろう。
いつも水森は夢野を気にかけていて─────
夢野の為に時間を割き、話を聞いて励ましたり、事あるごとに小さな贈り物も贈っていた。
それは、他でもない夢野を助ける為に良かれと思ってしていたことなんだろう。
だけど、水森に悩みがある時に夢野はそれに気付かなかった─────
相談しようとした出かかりを、いつものようにポンポンとした応答で自分の話題に変えてしまったのかもしれない。
その時点で─────食券事件の前に、既に水森は夢野に対してある種の失望を抱えていた可能性もあるよな。
俺はなんと言っていいかわからなくなってしまった。
最初は上野が何を言ってるんだかさっぱり理解できなかったが─────
なんとなく『いかにも起こりそうな出来事だ』って思っちまったんだな。
信憑性があるというか、上野の言っていることにはスジが通ってる。
多分、上野の言ってることは間違って無いんだろう。
けど、じゃあ俺はどうしたらいいんだ?
上野はハッキリとそう答えた。
え?
「それって……食券の事件より前って事だよな?」
水森の食券が3年に盗られたのは三者面談の日だから7月上旬だ。
待てよ?
って言う事はさ。
「俺はてっきり、二人の間にヒビが入ったのは食券の騒動の後だと思ってたんだが─────」
それだとさ、それ以前から既に雲行きが怪しかったってことなのか、と俺は上野に尋ねた。
「だからさ、あーしさっきからそう言ってるじゃん」
上野はいい加減にしろ、とでも言った風に呆れたような表情を浮かべた。
「そんでさ、水森っちが泣いてたからどうしたのか聞いたワケよ。そしたらさ─────」
上野はその時あった状況を俺に説明した。
それは端的に言えば『珍しく水森が夢野に悩みごとを相談しようとした所、話の全部を聞き終わる前に夢野が話題を変えた』という事らしかった。
そのテの子って居るよね。彼女に限らずさ、と上野は苦々しそうに呟いた。
「人がしてる話題を取っちゃうっていうかさ、話を聞き終わらないうちに被せ気味で答えてくるとかさ。最悪なのが自分の話にすり替えて来るパターンとか」
上野の言っていることはなんとなく理解できた。
確かに─────夢野にはそんな所があるかもしれない。
思い当たる節はあった。
夢野の魅力というか、長所の一つに[頭の回転が早い]っていうのがあると思ってるんだが。
一つの話題からどんどん膨らませてポンポンと言葉を返して来る。
夢中になったらマシンガントークが止まらないし、得意な分野なら尚更だ。
同じ趣味だったり好きなことが同じ人間だったらさぞかし話が盛り上がるんだろうな、と感じられる場面が多々あった。
だけど。
それが裏目に出ちまった格好になったんだろうか。
水森が何かを相談しようとした時に─────
その“導入”の部分で夢野はいつものようにポンポンと返事を返して、結果として水森の相談を潰してしまう格好になったと─────
そういう事なんだろうか。
「水森はさ、何について悩んでたんだ?」
上野は知ってるのか、と俺が訊くと上野は小さく頷いた。
「多分だけど……家族のコトと進路のコトじゃないのかなって思ったんだよね。けど、泣いてたのはそこじゃ無いっていうか」
上野はやや言葉を濁すようにこう続けた。
「よくわかんないんだけどさ、その後の水森っちの様子を見るにさ、肝心の『悩みごと』みたいなのは解決したっぽいんだよね」
吹っ切れたっていうかさ、そんな感じなんだよね、という上野の言葉にも俺は思い当たる節があった。
確か、水森と話した時に─────
『高校へは行かない』みたいなことは言ってたよな。
多分、水森なりに考えて結論を出したんだろう。
その辺に迷いは無いようにも見受けられた。
けどさ、と上野は続けた。
「多分だけどさ、その『悩みごと』の事で泣いてたってカンジがしなかったんだよね。どっちかってーと“親友”のハズの彼女の態度の方に傷ついてたって言うか?」
それもなんとなく理解できる。
恐らく─────
水森は夢野に『話を聞いて欲しかった』んだろう。
いつも水森は夢野を気にかけていて─────
夢野の為に時間を割き、話を聞いて励ましたり、事あるごとに小さな贈り物も贈っていた。
それは、他でもない夢野を助ける為に良かれと思ってしていたことなんだろう。
だけど、水森に悩みがある時に夢野はそれに気付かなかった─────
相談しようとした出かかりを、いつものようにポンポンとした応答で自分の話題に変えてしまったのかもしれない。
その時点で─────食券事件の前に、既に水森は夢野に対してある種の失望を抱えていた可能性もあるよな。
俺はなんと言っていいかわからなくなってしまった。
最初は上野が何を言ってるんだかさっぱり理解できなかったが─────
なんとなく『いかにも起こりそうな出来事だ』って思っちまったんだな。
信憑性があるというか、上野の言っていることにはスジが通ってる。
多分、上野の言ってることは間違って無いんだろう。
けど、じゃあ俺はどうしたらいいんだ?
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