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ep7.
ep7『ドッペルゲンガーと14歳の父』 コピー・アンド・ペースト
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「……あ、その、折角なんだけどまた日を改めさせて貰おうかと──────」
テンパり気味の小泉に代わり、俺は適当に誤魔化す。
「……あら。残念ですわ」
でも、お二人でまた遊びにいらしてくださいね、と花園リセは柔らかく微笑んだ。
「あ、ああ。ちょっと俺ら、野暮用があるんでそれじゃ……」
それらしく急いでいるフリをしながら俺はその場を離れようとする。
ボーッとしているのか固まっている状態の小泉のジャージの裾を引っ張り、さりげなく場所を移動するよう促した。
「そういう訳だから……リセさん、また今度──────」
花園リセは微笑んだまま、俺たちを見送り手を振ってくれている。
俺は小泉を引っ張りながら逃げるように反対方向に向かった。
「……おい。いい加減に離してくれないか」
小泉が低いトーンの声でボソリと呟く。
「え?ああ、すまん……」
俺が掴んでいたジャージの裾を離すと、小泉は不機嫌そうにプイと視線を逸らした。
やっぱ怒ってんじゃん。キレてる?
さっきのエロ本がそんなにダメだったんだろうか。
俺はどうしたらいいか分からず、ただその場に立ちすくんでいた。
「とりあえずさ、あと回ってないのは公園の方面だけだし─────そっち行って最後にするか」
今日はもう遅いし学校に戻ろうぜ、とオレが提案すると小泉は黙ったまま頷いた。
あちこちでドッペルゲンガーにエンカウントした人物に会いはするんだが肝心の本体には一向に辿り着かない。
辺りはすっかり日が暮れている。
この調子だと今日のところはもう無理かもしれないな、と俺はなんとなく思った。
公園に差し掛かった所で自販機を見つける。
「なあ、センセェ。疲れただろ?なんか飲むか?」
俺、買ってくるからさ、と振り返った瞬間だった。
小泉が目を見開いてこちらを見ていた。
「ん?どうしたんだよセンセェ?なんかあったか?」
俺がそう訊くと小泉は震える手でこちらを指差した。
「……おい、佐藤。そこに居るの───────」
「え?」
小泉が指差した方向に視線を移す。
そこに居たのは───────────よちよち歩きの幼児だった。
『!?』
────────何処かで見たような風貌。
「……なあ、この子ども───────気のせいかお前に似てないか?」
小泉がやや震える声でそう呟く。
「……」
幼児は何も言わず、こちらを見ていた。
「………」
1歳か2歳くらいの男児。
尻の辺りはこんもりとしている。まだオムツが取れない年齢なんだろう。
小泉はゆっくりと男児に歩み寄った。
「────こんにちは。ぼく、お名前言えるかな?」
「…………?」
男児はキョトンとした顔で小泉を見上げている。
「よう、ガキんちょ。一人か?」
俺はしゃがんで男児の目線で話し掛けた。
「……?」
しかし、男児は相変わらずキョトンとした表情で俺を見たまま、黙っている。
「お前のにーちゃん、ドコ行ったんだよ?」
俺がそう問いかけると、やっとのことで男児は口を開いた。
「……だれ?」
誰って言われてもな。
俺だってコイツの兄貴─────ドッペルゲンガーのことなんか何も知らねぇし。
「坊主、名前はなんてんだ?歳はいくつだ?」
「……」
男児は黙ったまま小さな手でピースサインを俺に見せる。
「ん?2歳って意味か?」
コクン、と男児は頷いた。
そうか、2歳なんだな。
「……しかし見れば見るほど─────この子はお前にそっくりだな」
小泉は感心したようにしげしげと俺と男児の顔を見比べている。
「まるで縮小コピーしたみたいじゃないか」
コピーアンドペースト。それから縮小。
俺も男児の顔をもう一度見る。
そう言われてみれば俺に似ているのかもしれないが────────
もしかして、俺の母親が生きているうちに産んでた生き別れの弟?
だとしたら。
今現在、生きている俺の唯一の血縁、家族ということになるんだろうか?
俺は御月から貰った紙袋からアンパンマンのトランク缶を取り出した。
「坊主。こういうのは好きか?」
俺がアンパンマンを取り出すや否や、男児の目がサッと輝いた。
「……あんぱんまん!!!」
ほら、お前にやっからさ、と言いながら俺が男児にアンパンマンを渡そうとした瞬間だった。
男児が何かを見つけ、一目散に走り出した。
「え!?おい、ちょっとどうした───────」
俺は慌てて走り去る男児を視線で追う。
男児は公園入り口に佇む人影に向かいながらこう叫んだ。
「……とうちゃん!!!」
テンパり気味の小泉に代わり、俺は適当に誤魔化す。
「……あら。残念ですわ」
でも、お二人でまた遊びにいらしてくださいね、と花園リセは柔らかく微笑んだ。
「あ、ああ。ちょっと俺ら、野暮用があるんでそれじゃ……」
それらしく急いでいるフリをしながら俺はその場を離れようとする。
ボーッとしているのか固まっている状態の小泉のジャージの裾を引っ張り、さりげなく場所を移動するよう促した。
「そういう訳だから……リセさん、また今度──────」
花園リセは微笑んだまま、俺たちを見送り手を振ってくれている。
俺は小泉を引っ張りながら逃げるように反対方向に向かった。
「……おい。いい加減に離してくれないか」
小泉が低いトーンの声でボソリと呟く。
「え?ああ、すまん……」
俺が掴んでいたジャージの裾を離すと、小泉は不機嫌そうにプイと視線を逸らした。
やっぱ怒ってんじゃん。キレてる?
さっきのエロ本がそんなにダメだったんだろうか。
俺はどうしたらいいか分からず、ただその場に立ちすくんでいた。
「とりあえずさ、あと回ってないのは公園の方面だけだし─────そっち行って最後にするか」
今日はもう遅いし学校に戻ろうぜ、とオレが提案すると小泉は黙ったまま頷いた。
あちこちでドッペルゲンガーにエンカウントした人物に会いはするんだが肝心の本体には一向に辿り着かない。
辺りはすっかり日が暮れている。
この調子だと今日のところはもう無理かもしれないな、と俺はなんとなく思った。
公園に差し掛かった所で自販機を見つける。
「なあ、センセェ。疲れただろ?なんか飲むか?」
俺、買ってくるからさ、と振り返った瞬間だった。
小泉が目を見開いてこちらを見ていた。
「ん?どうしたんだよセンセェ?なんかあったか?」
俺がそう訊くと小泉は震える手でこちらを指差した。
「……おい、佐藤。そこに居るの───────」
「え?」
小泉が指差した方向に視線を移す。
そこに居たのは───────────よちよち歩きの幼児だった。
『!?』
────────何処かで見たような風貌。
「……なあ、この子ども───────気のせいかお前に似てないか?」
小泉がやや震える声でそう呟く。
「……」
幼児は何も言わず、こちらを見ていた。
「………」
1歳か2歳くらいの男児。
尻の辺りはこんもりとしている。まだオムツが取れない年齢なんだろう。
小泉はゆっくりと男児に歩み寄った。
「────こんにちは。ぼく、お名前言えるかな?」
「…………?」
男児はキョトンとした顔で小泉を見上げている。
「よう、ガキんちょ。一人か?」
俺はしゃがんで男児の目線で話し掛けた。
「……?」
しかし、男児は相変わらずキョトンとした表情で俺を見たまま、黙っている。
「お前のにーちゃん、ドコ行ったんだよ?」
俺がそう問いかけると、やっとのことで男児は口を開いた。
「……だれ?」
誰って言われてもな。
俺だってコイツの兄貴─────ドッペルゲンガーのことなんか何も知らねぇし。
「坊主、名前はなんてんだ?歳はいくつだ?」
「……」
男児は黙ったまま小さな手でピースサインを俺に見せる。
「ん?2歳って意味か?」
コクン、と男児は頷いた。
そうか、2歳なんだな。
「……しかし見れば見るほど─────この子はお前にそっくりだな」
小泉は感心したようにしげしげと俺と男児の顔を見比べている。
「まるで縮小コピーしたみたいじゃないか」
コピーアンドペースト。それから縮小。
俺も男児の顔をもう一度見る。
そう言われてみれば俺に似ているのかもしれないが────────
もしかして、俺の母親が生きているうちに産んでた生き別れの弟?
だとしたら。
今現在、生きている俺の唯一の血縁、家族ということになるんだろうか?
俺は御月から貰った紙袋からアンパンマンのトランク缶を取り出した。
「坊主。こういうのは好きか?」
俺がアンパンマンを取り出すや否や、男児の目がサッと輝いた。
「……あんぱんまん!!!」
ほら、お前にやっからさ、と言いながら俺が男児にアンパンマンを渡そうとした瞬間だった。
男児が何かを見つけ、一目散に走り出した。
「え!?おい、ちょっとどうした───────」
俺は慌てて走り去る男児を視線で追う。
男児は公園入り口に佇む人影に向かいながらこう叫んだ。
「……とうちゃん!!!」
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