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ep9『夢千夜』 “偽りの花嫁” 第八夜
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係員は他の参加者の対応中で─────────こちらの様子には気付いていないようだった。
とりあえず散乱したパンフレット類を急いで拾うのを手伝う。
「───大丈夫ですか?」
俺は拾った何冊かのパンフレットを女性に手渡した。
「……あ。ありがとう……ございます……」
女性は俯きながらそれを受け取った。
ふと、女性の鞄が目に入る。
そこにはマタニティマークが付けられていた。
この人は妊娠中ってことなのか。
俺は女性が抱えている荷物をチラリと見た。
自分の鞄に加えて、沢山のパンフレット類。それと参加者用に配布された記念品だろうか。
紙袋に入れられたそれらはそこそこのボリュームがあるように見受けられた。
「……あの。もしよかったら荷物、お持ちしましょうか」
咄嗟に俺は奇妙なことを口走っていた。
自分でもビックリだ。
突然の申し出に対し、女性も驚いたように俺の顔を見る。
二十代半ばくらいだろうか。
整った顔立ちは清楚だが、どこか幼さも感じさせられた。
「え……よろしいんですか?」
意外にも、女性は俺を拒絶するような素振りは見せなかった。
恐らく、今日の俺の格好がそうさせたんだろう。
今の俺はどっからどう見てもモブキャラ、真面目な優等生君に見えるからな。
「……ええ。俺は姉の付き添いで来ただけなんです。姉夫婦はあっちでプランナーさんと打ち合わせがあるからって」
俺は女性の持っていた紙袋を少し強引に手繰り寄せた。
「遠慮しないでください」
そう言いつつ紙袋を持った俺は少し戸惑った。まあまあ重い。
由江さんや小泉が持っていた結婚情報誌もそうだが────────ウェディング関連のカタログだのパンフレットだのはどうしてこうも重いんだ?
広辞苑くらいはありそうなボリュームじゃねぇか。
「……ありがとうございます」
控えめに礼を言ってくる女性はとてもチャーミングに感じられた。
「この後、どちらまで移動されるんですか?ご一緒しますよ」
俺がそう言うと女性はおずおずとこう答えた。
「……ご迷惑じゃなければ……大聖堂までお願い出来ますか?」
本当は夫と一緒に来る予定だったんですけど……急な仕事で、という女性の言葉に俺は頷いた。
「そうだったんですか。あ、俺は付き添いで来ただけなんで気にしないでください」
女性の方は既に打ち合わせを終了させたとのことで───────一足先に大聖堂の見学に行く途中だったらしい。
彼女は相内夕貴と名乗った。
俺はダッシュで佑ニーサンのところまで行き、簡単に事情を説明すると夕貴さんのところまで戻った。
俺と夕貴さんはロビーからゆっくりと歩き、大聖堂に向かった。
しかし。
この出会いが───────────後の大事件への序章になるなんてどうして予想できただろうか。
とりあえず散乱したパンフレット類を急いで拾うのを手伝う。
「───大丈夫ですか?」
俺は拾った何冊かのパンフレットを女性に手渡した。
「……あ。ありがとう……ございます……」
女性は俯きながらそれを受け取った。
ふと、女性の鞄が目に入る。
そこにはマタニティマークが付けられていた。
この人は妊娠中ってことなのか。
俺は女性が抱えている荷物をチラリと見た。
自分の鞄に加えて、沢山のパンフレット類。それと参加者用に配布された記念品だろうか。
紙袋に入れられたそれらはそこそこのボリュームがあるように見受けられた。
「……あの。もしよかったら荷物、お持ちしましょうか」
咄嗟に俺は奇妙なことを口走っていた。
自分でもビックリだ。
突然の申し出に対し、女性も驚いたように俺の顔を見る。
二十代半ばくらいだろうか。
整った顔立ちは清楚だが、どこか幼さも感じさせられた。
「え……よろしいんですか?」
意外にも、女性は俺を拒絶するような素振りは見せなかった。
恐らく、今日の俺の格好がそうさせたんだろう。
今の俺はどっからどう見てもモブキャラ、真面目な優等生君に見えるからな。
「……ええ。俺は姉の付き添いで来ただけなんです。姉夫婦はあっちでプランナーさんと打ち合わせがあるからって」
俺は女性の持っていた紙袋を少し強引に手繰り寄せた。
「遠慮しないでください」
そう言いつつ紙袋を持った俺は少し戸惑った。まあまあ重い。
由江さんや小泉が持っていた結婚情報誌もそうだが────────ウェディング関連のカタログだのパンフレットだのはどうしてこうも重いんだ?
広辞苑くらいはありそうなボリュームじゃねぇか。
「……ありがとうございます」
控えめに礼を言ってくる女性はとてもチャーミングに感じられた。
「この後、どちらまで移動されるんですか?ご一緒しますよ」
俺がそう言うと女性はおずおずとこう答えた。
「……ご迷惑じゃなければ……大聖堂までお願い出来ますか?」
本当は夫と一緒に来る予定だったんですけど……急な仕事で、という女性の言葉に俺は頷いた。
「そうだったんですか。あ、俺は付き添いで来ただけなんで気にしないでください」
女性の方は既に打ち合わせを終了させたとのことで───────一足先に大聖堂の見学に行く途中だったらしい。
彼女は相内夕貴と名乗った。
俺はダッシュで佑ニーサンのところまで行き、簡単に事情を説明すると夕貴さんのところまで戻った。
俺と夕貴さんはロビーからゆっくりと歩き、大聖堂に向かった。
しかし。
この出会いが───────────後の大事件への序章になるなんてどうして予想できただろうか。
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