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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 “Knight of Fire”
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「これは……今から忙しくなるのぉ!」
佑先輩、なんかええ日払いのバイトあったら紹介して貰えんじゃろうか!?と鈴木先輩はテンションがブチ上がった様子で捲し立てる。
「あ~。そういえばあるよ~?割りがいいけどちょっと遠方だからガックンに紹介出来ないなって思ってた案件があって~」
佑ニーサンと鈴木先輩が何やら話し込み始めた。
なるほど、流石鈴木先輩だな。
判断が早い。この思い切りの良さが人生を切り開くコツなのかもしれないな。
やや感心しながら二人の会話に耳を傾けていると────────遠くから微かに数台のバイクの音が聞こえてくる。
この近辺の走り屋か族だろうか。
かつての時代、25年くらい前の全盛期にはこのエリアにも数十チーム程あったって話だが───────────ここ数年はめっきり数も減って主なチームは2つだけしか残って無いって話だ。
まあ、この限界地方都市では族や走り屋の方も少子高齢化で後継者不足なんだろうな。
「なんスかwwwまだ明るい時間からwww」
時計を見ると、針は17時過ぎを指している。
昼って訳でも無いが、走り回るにはまだ早い時間帯に思えた。
「ん~?なんだか賑やかだねぇ~?」
佑ニーサンが窓の外に目を向ける。
まあ、ちょっと気になるよな。
表にベルファイヤ停まってるし─────────────10円キズとか付けられてもなんか嫌だ。
「あwwオレが見てくるんで二人はそのままハナシを続けて下さいよwww」
概史が立ち上がり、ドアの方に向かって歩き始める。
概史ってのはこういうとこあるんだよな。絶妙なタイミングで気を回したりするんだ。
「待て、俺も行く」
俺も立ち上がり概史の後を追った。
ドアを開けると、山の向こうの空は夕暮れ色に染まっていた。
この季節、この時間帯の空気には少し肌寒さも感じる。
数台のバイクの音は相変わらず周囲に響いているが、姿は見えない。
まだそう近くにはいないんだろう。
「ねぇ、先輩」
概史がやや真剣な面持ちで俺にこう切り出す。
「さっきの鈴木先輩の話───────どう思います?」
どうって、と俺は反射的に聞き返す。
「いや、正直スゲェって思ったよ。一生敵わねぇだろうし────────」
でも、と俺は続けた。
「鈴木先輩みたいになれたらなって思うよな。男が欲しいもん全部手に入れてるじゃねぇか」
ですよね、と概史も頷く。
「滅茶苦茶カッコいいっスよね。確かに、誰にでも出来るって人生設計って訳じゃ無くて────────」
個人の能力値の占める割合が多すぎて再現性無さすぎではあるんでしょうけど、と概史が何やら勿体ぶった言い回しをする。
これもYouTuberとやらの影響なんだろう。
まあな、と俺もそれに同意した。
「鈴木先輩はまず体力と根性がスゲェだろ。あと、社交性が桁違いだ。目上の人には可愛がられて後輩からは慕われてる。器用になんでもこなすスキルがあるし頭の回転も早い」
そっスね、と概史も苦笑いを浮かべた。
「鬼フィジカルと鬼メンタル、最強コミュ力と器用さ、地頭の良さがあって初めて成立するようなトコありますもんね」
でも、と概史は続けた。
「それ以外にも───────なんか痺れるなって思ったトコがあって」
俺はポケットから煙草を取り出してライターで火を点けた。
店の中で吸うと鈴木先輩に怒られそうな気がしたからだ。
「さっき佑ニーサンが話してましたよね。早期に人生リタイヤすることをファイヤーって言うって」
オレ、鈴木先輩もそうなんじゃないかって思ったんです、という概史の言葉に対し、俺は聞き返す。
「え?鈴木先輩が?」
佑ニーサンの話の流れから言うとなんか違うような気がするんだが───────?
俺が怪訝そうな表情を浮かべていたからか、概史が補足するようにこう付け加える。
「昔からよく、結婚して仕事を辞めることを『家庭に入る』って言い回しで表現するじゃないですか?まあ、主に女性に対して使う言葉だったんだろうと思いますけど」
なんか上手く言えないんスけど、鈴木先輩にもそんな印象を受けたんですよね、という概史の話はますます俺には解らない。
「鈴木先輩、仕事辞めてなく無いか?逆にバイト増やしてるまであるじゃん?」
俺がそう言うと、概史も頷く。
「そうなんスよね。逆なんスよ」
けど、と概史は続けた。
「なんかわかんないんですけど、人生の優先順位がガラって変わったって印象を受けたんスよね。今までの自分を全部捨てて奥さんと子ども第一の人生に舵を切った感ていうか」
なるほど。
そういう意味で言ったならなんかわからないでもない気もするが──────────
「奥さん、とんでもない美少女だったじゃないスか。横に並んで立ってる鈴木先輩も滅茶苦茶カッコよくて」
そん時オレ、思ったんすよね、という概史の次の言葉に俺はなんだか衝撃を受けてしまう。
「鈴木先輩がまるでプリンセスを守る騎士(ナイト)に思えて───────────なんか、“騎士(ナイト) オブ ファイヤー”って感じしましたね」
佑先輩、なんかええ日払いのバイトあったら紹介して貰えんじゃろうか!?と鈴木先輩はテンションがブチ上がった様子で捲し立てる。
「あ~。そういえばあるよ~?割りがいいけどちょっと遠方だからガックンに紹介出来ないなって思ってた案件があって~」
佑ニーサンと鈴木先輩が何やら話し込み始めた。
なるほど、流石鈴木先輩だな。
判断が早い。この思い切りの良さが人生を切り開くコツなのかもしれないな。
やや感心しながら二人の会話に耳を傾けていると────────遠くから微かに数台のバイクの音が聞こえてくる。
この近辺の走り屋か族だろうか。
かつての時代、25年くらい前の全盛期にはこのエリアにも数十チーム程あったって話だが───────────ここ数年はめっきり数も減って主なチームは2つだけしか残って無いって話だ。
まあ、この限界地方都市では族や走り屋の方も少子高齢化で後継者不足なんだろうな。
「なんスかwwwまだ明るい時間からwww」
時計を見ると、針は17時過ぎを指している。
昼って訳でも無いが、走り回るにはまだ早い時間帯に思えた。
「ん~?なんだか賑やかだねぇ~?」
佑ニーサンが窓の外に目を向ける。
まあ、ちょっと気になるよな。
表にベルファイヤ停まってるし─────────────10円キズとか付けられてもなんか嫌だ。
「あwwオレが見てくるんで二人はそのままハナシを続けて下さいよwww」
概史が立ち上がり、ドアの方に向かって歩き始める。
概史ってのはこういうとこあるんだよな。絶妙なタイミングで気を回したりするんだ。
「待て、俺も行く」
俺も立ち上がり概史の後を追った。
ドアを開けると、山の向こうの空は夕暮れ色に染まっていた。
この季節、この時間帯の空気には少し肌寒さも感じる。
数台のバイクの音は相変わらず周囲に響いているが、姿は見えない。
まだそう近くにはいないんだろう。
「ねぇ、先輩」
概史がやや真剣な面持ちで俺にこう切り出す。
「さっきの鈴木先輩の話───────どう思います?」
どうって、と俺は反射的に聞き返す。
「いや、正直スゲェって思ったよ。一生敵わねぇだろうし────────」
でも、と俺は続けた。
「鈴木先輩みたいになれたらなって思うよな。男が欲しいもん全部手に入れてるじゃねぇか」
ですよね、と概史も頷く。
「滅茶苦茶カッコいいっスよね。確かに、誰にでも出来るって人生設計って訳じゃ無くて────────」
個人の能力値の占める割合が多すぎて再現性無さすぎではあるんでしょうけど、と概史が何やら勿体ぶった言い回しをする。
これもYouTuberとやらの影響なんだろう。
まあな、と俺もそれに同意した。
「鈴木先輩はまず体力と根性がスゲェだろ。あと、社交性が桁違いだ。目上の人には可愛がられて後輩からは慕われてる。器用になんでもこなすスキルがあるし頭の回転も早い」
そっスね、と概史も苦笑いを浮かべた。
「鬼フィジカルと鬼メンタル、最強コミュ力と器用さ、地頭の良さがあって初めて成立するようなトコありますもんね」
でも、と概史は続けた。
「それ以外にも───────なんか痺れるなって思ったトコがあって」
俺はポケットから煙草を取り出してライターで火を点けた。
店の中で吸うと鈴木先輩に怒られそうな気がしたからだ。
「さっき佑ニーサンが話してましたよね。早期に人生リタイヤすることをファイヤーって言うって」
オレ、鈴木先輩もそうなんじゃないかって思ったんです、という概史の言葉に対し、俺は聞き返す。
「え?鈴木先輩が?」
佑ニーサンの話の流れから言うとなんか違うような気がするんだが───────?
俺が怪訝そうな表情を浮かべていたからか、概史が補足するようにこう付け加える。
「昔からよく、結婚して仕事を辞めることを『家庭に入る』って言い回しで表現するじゃないですか?まあ、主に女性に対して使う言葉だったんだろうと思いますけど」
なんか上手く言えないんスけど、鈴木先輩にもそんな印象を受けたんですよね、という概史の話はますます俺には解らない。
「鈴木先輩、仕事辞めてなく無いか?逆にバイト増やしてるまであるじゃん?」
俺がそう言うと、概史も頷く。
「そうなんスよね。逆なんスよ」
けど、と概史は続けた。
「なんかわかんないんですけど、人生の優先順位がガラって変わったって印象を受けたんスよね。今までの自分を全部捨てて奥さんと子ども第一の人生に舵を切った感ていうか」
なるほど。
そういう意味で言ったならなんかわからないでもない気もするが──────────
「奥さん、とんでもない美少女だったじゃないスか。横に並んで立ってる鈴木先輩も滅茶苦茶カッコよくて」
そん時オレ、思ったんすよね、という概史の次の言葉に俺はなんだか衝撃を受けてしまう。
「鈴木先輩がまるでプリンセスを守る騎士(ナイト)に思えて───────────なんか、“騎士(ナイト) オブ ファイヤー”って感じしましたね」
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