魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

23『ギルドにて、買取と薬草の見分け方』

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【回復】の魔法を練りこんだ傷薬は、ハマグリほどの大きさの貝殻に入っている。これが金貨1枚で買取が決まった。
 これを50個。
 アンナリーナにとっては大した量ではないし、第一素材は副産物なのだ。
 内心ホクホク顔を表に出さないようにし、喜んだ。
 そして、ついでに聞いてみる。

「あの~ 実は以前から気になって、聞きたかったんですけど……
 この領都に元々いらっしゃる薬師さんって、えーっと……
 私、商売の邪魔してますよね?」

「あなたは優しいですね」

 ドミニクスが今日初めて暖かな笑みを浮かべた。

「ここは辺境で、領都だと言うのに練金薬師もいない。
 ……たった一人の薬師はもう年で、昔からさほど効果の高い回復薬は作れなかった。
 あなたが気を遣わなくてもよいのですよ」

「では、他の薬は?例えば風邪薬とか」

「あまり効果は高くありませんね」

「じゃあ、この町の人たちはどうしてるんですか?」

 国は違うがモロッタイヤのような端っこの小さな村でも、行商人から常備薬は手に入れていた。
 それなのに、こんな大きな町の薬事情がモロッタイヤ以下だと言うのだろうか。

「風邪ならひきはじめに薬を飲めば。
 あとは民間伝承とか、金を持っているものは王都まで行って購入しているようですね」

 クラン【疾風の凶刃】もポーションを王都で買っていると言っていた。

「ちなみに王都まで行くのはどのくらいかかるのですか?」

「大体ひと月ですね」

「ひと月?」

「ええ」

 ここが辺境だというわけだから、遠いのか近いのかよくわからない。
 だが、薬を買って帰ってくるまで2ヶ月……

「それって、もしかして私が、所謂常備薬を販売してもよい?」

「お持ちですか?」

 ドミニクスの目が光る。

「ええ、ここに来るまでの村でも売ってきたのですが……」

 老薬師直伝の常備薬はよく効く。
 薬草の効果を知り尽くした薬師が調薬し、レシピを残したのだ。
 それをアンナリーナは徹底的に仕込まれた。

「風邪薬や熱冷まし、痛み止め、下痢止め。あとは打ち身などに効く湿布とか、二日酔いの薬なんかもあります」

 ドミニクスが興奮のあまり、腰を浮かせかけたその時、ドアがノックされ受付嬢が声をかけてきた。

「ドミニクスさん、すみません。
 素材の持ち込みがあったので鑑定お願いします」

 ドアを開けて専用のトレーに入れた薬草を持って、いつも受付に座っている最近顔見知りになった受付嬢が入ってきた。
 アンナリーナは軽く会釈する。

「リーナさん、ちょっと失礼しますね」

「オメガ草ですね?」

 チラリとトレーに積まれた薬草に目をやる。
 新鮮で生育もよく、丁寧に採取されている。
 だがどこか違和感を感じたアンナリーナは、ドミニクスに断って薬草を手を取った。

「ああ、これ……」

「リーナさん? 何か?」

「ドミニクスさんの【鑑定】では出ませんか?」

 アンナリーナは数本手に取り、バッグから取り出した布の上に置いた。

「ご存知ないから混同するのかもしれないですね」

 多分、ドミニクスの鑑定レベルでは区別出来ないのだろう。

「これは、薬師なら一番最初に習う事なんですが。
 わかりますか? この切り口に近いところ」

 アンナリーナは見た目同じに見える2本を並べ、その片方を指差した。
 オメガ草の茎は決して太くない。
 むしろ華奢なその茎の、切断面からわずか5㎜、茎の繊維が一本赤い。

「ここが赤いでしょう?
 これは私たちが “ 偽オメガ ”って呼ぶ【インスラサム】って言う雑草です。
 ご存知……なかったようですね?」

 ドミニクスがショックで凍りついている。
 彼の【鑑定】はどうやら、自身の知識を元に機能しているようだ。
 だがこれで、これからは正確に鑑定できるだろう。

「雑草ですから……当然薬効はありません。だからこれを混ぜ込んで回復薬を作っていたのなら」

「そうか!
 効能が低いのも、安定しないのもこれが原因か!」

「ええ、おそらく」

 だが、これだけでアンナリーナと同じものが作れると、思ってもらいたくない。
 彼女の回復薬には魔力がたっぷりと注ぎ込まれていて、たとえオメガ草だけで調薬したとしてもせいぜい回復値70が限度だろう。

「すみません、ちょっと失礼します!」

 バタバタと飛び出していったドミニクスを見送って、アンナリーナは、今日はもうこれ以上話すのは無理だと思った。

「あ~あ、相談したい事があったのにな~」

 形だけ、少し待つ事にして、いつでも飲めるように用意してあるハーブ茶を取り出して、お茶の時間を楽しむ。

「ん~ 心も身体も暖ったまるよ。
 ……待てよ、ひょっとしてこれも、売れる?」

 ハーブの効能を生かしたお茶は何種類もある。
 軽い風邪などに効く薬湯もいいかもしれない。
 そんな事を考えていると突然ドアが開いて、先ほどの受付嬢が顔を出した。

「すみません!
 今、下で騒ぎになっていて、少しお話をお願いしていいですか?」

 慌てて茶器を片付けたアンナリーナは受付嬢に続いて部屋を出る。
 考え事をしていた為気づいていなかったが、外はもう人集りが出来て騒ぎになっていた。

「ワァオ……」
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