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第三章
69『入学試験 ②』
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サムエルが今回の雇用主である、ビュハル伯爵家第2子カベルヴォの護衛として魔法学院にやってきたのは、本当に偶然でしかなかった。
そこで偶然の再会を果たした、国内でも有名なクラン【疾風の凶刃】のパーティリーダー、テオドールは摩訶不思議な人物の護衛をしていた。
見た目は10を幾らばかりか越しているか……だがローブを着けているところを見ると、準成人は越えているのだろう。
テオドールが薬師だと言ったその少女は今、彼を引っ張って行ってびっくりするほど豪勢な昼食を摂っている。
「サムエル、こんなところにいたのか」
木陰から2人を覗くサムエルの元に、主であるカベルヴォがやってきて声をかける。
「何だ? あの2人……?」
「以前、ハンネケイナに行った時の知り合いなんですがね、何か変わった子の護衛をしているみたいで」
伯爵家のカベルヴォは男爵部屋で受験していたアンナリーナとは初めて会う。
「ローブを着ている、と言うことはすでに職種持ちなのか」
「薬師だそうですよ。
ハンネケイナのクランがガッチリと咥えこんでいるようですがね」
王都でさえも貴重な薬師。
それも、ただの薬師ではあるまい。
午後は魔力の測定と属性の検査、そして面接だ。
今年の受験者数は近年になく少なくて、何組かのグループに分かれて行われたそれは、多少の待ち時間はあるが、行列が出来るほどではない。
アンナリーナはグループの最後尾、4人目だった。
「リーナさん、お待たせしました。
どうぞお入り下さい」
「失礼します」
ちょこんと膝を折る、略式のカーテシーをしてアンナリーナは部屋に入る。
そして勧められるまま面接官の座る机の前の椅子に腰掛けた。
「ずいぶんお待たせしてしまいました。でもそれはあなたと、通常の面接の質問とは違うお話をしたかった、と言う事でもあります」
「はい」
「ではまず、受験者全員に課している事……この水晶玉に触れてもらえますか?」
先ほどから机の上で存在感を醸し出していた水晶玉。
アンナリーナは自分の魔力を極々少量まで絞って手を伸ばす。
ためらいがちに伸ばされた手が触れた、その瞬間。
まばゆい光に目がくらみ、瞑っていた目をゆっくりと開けると、信じられない状況が飛び込んできた。
この学院では今までにも、魔力の高い生徒がこの水晶にヒビを入れたり、割ったりしたものがいた。
だが今回は、見るからに異常な、信じられない事になっている。
「これは……」
机の上の水晶のあった場所には、石英の細粉が山になっている。
アンナリーナは、ヒビを入れるわけでもなく、割るでもなく……砂つぶほどに砕いてしまった。
「ありゃ~ すみません、弁償します」
慌てて立ち上がったアンナリーナに、穏やかな笑みを浮かべ、面接官は席に着くように諭す。
「破損する可能性は予想していましたので、お気遣いなく。
それよりも、早速質問を開始しても?」
アンナリーナは慌てて背筋を伸ばし、頷いた。
「リーナさん。一般入試とはいえ、あなたのケースはとても珍しい。
現役の薬師殿が入学を希望するのは当校始まって以来です」
「受験申し込みの時の書類にも書かせていただきましたが、これからも薬学の研鑽を積みたいのです。
私は深い森の中で、師匠と2人っきりで暮らしてきました。
なので知識に偏りがあるのです」
「隠者の弟子、ですか」
部屋の中がざわついた。
隠者の弟子……賢者の弟子とも呼ばれる、偶に世に出てくる薬師。
彼、彼女らは街中で営業していたり、代々家業として受け継がれている薬師とはまた違う、宝物のような存在だ。
「学院としては……一部にはあなたを無試験で受け入れても良い、という意見もありました。
だが後々その事が露見して問題にならないように受験していただいたのですが、筆記試験の結果も問題なし。
魔力は……予想はしていましたが、かなりの魔力値ですね」
アンナリーナは大人しく面接官の話を聞いている。
「リーナさん、この後の説明を致します。
……今回の受験者は少数だったので、3日後に合格発表があります。
その日のうちに学院の事務所で入学の手続きをして下さい」
その時に持参するものを説明されて、アンナリーナは首を傾げた。
「私……自分の印章を持ってません。
作った方がいいのでしょうか?
確か、師匠のものがあったような気がしますが……それじゃあ、ダメですよね?」
「ちょっと待っておくれ!」
そこに、今までいなかった第三者の声がした。
そこで偶然の再会を果たした、国内でも有名なクラン【疾風の凶刃】のパーティリーダー、テオドールは摩訶不思議な人物の護衛をしていた。
見た目は10を幾らばかりか越しているか……だがローブを着けているところを見ると、準成人は越えているのだろう。
テオドールが薬師だと言ったその少女は今、彼を引っ張って行ってびっくりするほど豪勢な昼食を摂っている。
「サムエル、こんなところにいたのか」
木陰から2人を覗くサムエルの元に、主であるカベルヴォがやってきて声をかける。
「何だ? あの2人……?」
「以前、ハンネケイナに行った時の知り合いなんですがね、何か変わった子の護衛をしているみたいで」
伯爵家のカベルヴォは男爵部屋で受験していたアンナリーナとは初めて会う。
「ローブを着ている、と言うことはすでに職種持ちなのか」
「薬師だそうですよ。
ハンネケイナのクランがガッチリと咥えこんでいるようですがね」
王都でさえも貴重な薬師。
それも、ただの薬師ではあるまい。
午後は魔力の測定と属性の検査、そして面接だ。
今年の受験者数は近年になく少なくて、何組かのグループに分かれて行われたそれは、多少の待ち時間はあるが、行列が出来るほどではない。
アンナリーナはグループの最後尾、4人目だった。
「リーナさん、お待たせしました。
どうぞお入り下さい」
「失礼します」
ちょこんと膝を折る、略式のカーテシーをしてアンナリーナは部屋に入る。
そして勧められるまま面接官の座る机の前の椅子に腰掛けた。
「ずいぶんお待たせしてしまいました。でもそれはあなたと、通常の面接の質問とは違うお話をしたかった、と言う事でもあります」
「はい」
「ではまず、受験者全員に課している事……この水晶玉に触れてもらえますか?」
先ほどから机の上で存在感を醸し出していた水晶玉。
アンナリーナは自分の魔力を極々少量まで絞って手を伸ばす。
ためらいがちに伸ばされた手が触れた、その瞬間。
まばゆい光に目がくらみ、瞑っていた目をゆっくりと開けると、信じられない状況が飛び込んできた。
この学院では今までにも、魔力の高い生徒がこの水晶にヒビを入れたり、割ったりしたものがいた。
だが今回は、見るからに異常な、信じられない事になっている。
「これは……」
机の上の水晶のあった場所には、石英の細粉が山になっている。
アンナリーナは、ヒビを入れるわけでもなく、割るでもなく……砂つぶほどに砕いてしまった。
「ありゃ~ すみません、弁償します」
慌てて立ち上がったアンナリーナに、穏やかな笑みを浮かべ、面接官は席に着くように諭す。
「破損する可能性は予想していましたので、お気遣いなく。
それよりも、早速質問を開始しても?」
アンナリーナは慌てて背筋を伸ばし、頷いた。
「リーナさん。一般入試とはいえ、あなたのケースはとても珍しい。
現役の薬師殿が入学を希望するのは当校始まって以来です」
「受験申し込みの時の書類にも書かせていただきましたが、これからも薬学の研鑽を積みたいのです。
私は深い森の中で、師匠と2人っきりで暮らしてきました。
なので知識に偏りがあるのです」
「隠者の弟子、ですか」
部屋の中がざわついた。
隠者の弟子……賢者の弟子とも呼ばれる、偶に世に出てくる薬師。
彼、彼女らは街中で営業していたり、代々家業として受け継がれている薬師とはまた違う、宝物のような存在だ。
「学院としては……一部にはあなたを無試験で受け入れても良い、という意見もありました。
だが後々その事が露見して問題にならないように受験していただいたのですが、筆記試験の結果も問題なし。
魔力は……予想はしていましたが、かなりの魔力値ですね」
アンナリーナは大人しく面接官の話を聞いている。
「リーナさん、この後の説明を致します。
……今回の受験者は少数だったので、3日後に合格発表があります。
その日のうちに学院の事務所で入学の手続きをして下さい」
その時に持参するものを説明されて、アンナリーナは首を傾げた。
「私……自分の印章を持ってません。
作った方がいいのでしょうか?
確か、師匠のものがあったような気がしますが……それじゃあ、ダメですよね?」
「ちょっと待っておくれ!」
そこに、今までいなかった第三者の声がした。
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