魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

74『アンナリーナの異常』

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【疾風の凶刃】のクランハウスの階段を駆け下りてきたのは、本来ならこの場にいるはずのないグレーオーガだ。
 その場が混乱する中、ホールの受付に近づいた彼が叫ぶように言う。

「テオドール殿を探している。
 火急の要件だ! 一刻も早く連絡をつけたい」

 クランの中でも彼の事を知っている数少ないものは瞬時に、彼の主人の小さな薬師絡みだと気づいて近づいてくる。

「テオドールは今ギルドに行っている。すぐに使いを出すから待っていてくれ!」

 すでに、その言葉を待たずに飛び出して行ったものもいる。


「何事だ?!」

 血相を変えて飛び込んできたテオドールが、イジに向かう。
 その場で話すのをためらったイジに目配せされて、2人は階段を駆け上がっていく。
 そして、テオドールの部屋に入り、鍵をかける。

「お前がこの部屋から出るなんざ、緊急以外のなにものでもないな。
 一体どうした? リーナに何かあったな?」

「師匠、俺ら従魔では、どうしたらいいのかわからない。
 どうか手を貸して欲しい」

 もちろん、テオドールに否やはない。

「もちろんだ。
 だがその前に、何があったのか教えて欲しい」

 イジは自分が見聞きした事と、ナビから聞いた事を丁寧に説明した。
 するとテオドールの顔つきがどんどん歪んでいく。

 以前からリーナより、彼女が想いを寄せる男がいるという事を聞いていた。
 そして、今は離れているが春には合流して一緒に暮らすことも。
 今回、急に入学することになったが、テントで繋ぐか、転移点を置くなどして、何とかするのだと思っていた。
 それが……

「ガキが!」

 吐き捨てるように呟いた言葉に、応えるものはいない。

 リーナがちらりと漏らしたところによると、相手の男はまだ10代だという。
 奴とは、乗り合い馬車の護衛と客として知り合い、お互いに想いを膨らませた。
 リーナが初めて冒険者登録をするために、この国に来たとき同行を熱望したそうだが、地盤も何もない状況での同棲は拙いだろうという事で、春まで別行動になったと聞いている。

 その僅かな間も耐えられなかったのか……?
 同じ男だから、その生理は理解出来る。だが、好いた女がいるのだ。
 どうして我慢出来なかったのか。
 これが若さだと言うなら、愚か以外の何者でもない。
 そしてこれはおそらく、相手の女に誑かされた可能性が高いだろう。
 イジが他の従魔から聞いたところによると、リーナは離れて暮らす前、その身を案じてかなりの数の魔導具や、武器や防具を渡していたという。
 思うにそれは、ずいぶんな過剰性能だったのだろう。
 そんな貴重な品々を持つその男に、すり寄ってくる女も少なからずいただろう。

「本当に馬鹿なガキだ」

 リーナとは望めない秘め事を、豊満な身体の女に溺れ、孕ませた。

「最低だ……」

「師匠?」

 2人はテントに入り、イジがツリーハウスに向かっていく。
 すぐにアンナリーナを抱いて戻ってきて、そっとベッドに降ろした。

「リーナ?」

 降ろされたまま、身じろぎもせず座っているアンナリーナ。
 その目は虚ろで、目の前の自分を写していない。

「一体、どうした? リーナ??」

 その華奢な肩を掴み、力一杯揺さぶっても、アンナリーナはされるがまま揺れていた。
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