181 / 577
第三章
74『アンナリーナの異常』
しおりを挟む
【疾風の凶刃】のクランハウスの階段を駆け下りてきたのは、本来ならこの場にいるはずのないグレーオーガだ。
その場が混乱する中、ホールの受付に近づいた彼が叫ぶように言う。
「テオドール殿を探している。
火急の要件だ! 一刻も早く連絡をつけたい」
クランの中でも彼の事を知っている数少ないものは瞬時に、彼の主人の小さな薬師絡みだと気づいて近づいてくる。
「テオドールは今ギルドに行っている。すぐに使いを出すから待っていてくれ!」
すでに、その言葉を待たずに飛び出して行ったものもいる。
「何事だ?!」
血相を変えて飛び込んできたテオドールが、イジに向かう。
その場で話すのをためらったイジに目配せされて、2人は階段を駆け上がっていく。
そして、テオドールの部屋に入り、鍵をかける。
「お前がこの部屋から出るなんざ、緊急以外のなにものでもないな。
一体どうした? リーナに何かあったな?」
「師匠、俺ら従魔では、どうしたらいいのかわからない。
どうか手を貸して欲しい」
もちろん、テオドールに否やはない。
「もちろんだ。
だがその前に、何があったのか教えて欲しい」
イジは自分が見聞きした事と、ナビから聞いた事を丁寧に説明した。
するとテオドールの顔つきがどんどん歪んでいく。
以前からリーナより、彼女が想いを寄せる男がいるという事を聞いていた。
そして、今は離れているが春には合流して一緒に暮らすことも。
今回、急に入学することになったが、テントで繋ぐか、転移点を置くなどして、何とかするのだと思っていた。
それが……
「ガキが!」
吐き捨てるように呟いた言葉に、応えるものはいない。
リーナがちらりと漏らしたところによると、相手の男はまだ10代だという。
奴とは、乗り合い馬車の護衛と客として知り合い、お互いに想いを膨らませた。
リーナが初めて冒険者登録をするために、この国に来たとき同行を熱望したそうだが、地盤も何もない状況での同棲は拙いだろうという事で、春まで別行動になったと聞いている。
その僅かな間も耐えられなかったのか……?
同じ男だから、その生理は理解出来る。だが、好いた女がいるのだ。
どうして我慢出来なかったのか。
これが若さだと言うなら、愚か以外の何者でもない。
そしてこれはおそらく、相手の女に誑かされた可能性が高いだろう。
イジが他の従魔から聞いたところによると、リーナは離れて暮らす前、その身を案じてかなりの数の魔導具や、武器や防具を渡していたという。
思うにそれは、ずいぶんな過剰性能だったのだろう。
そんな貴重な品々を持つその男に、すり寄ってくる女も少なからずいただろう。
「本当に馬鹿なガキだ」
リーナとは望めない秘め事を、豊満な身体の女に溺れ、孕ませた。
「最低だ……」
「師匠?」
2人はテントに入り、イジがツリーハウスに向かっていく。
すぐにアンナリーナを抱いて戻ってきて、そっとベッドに降ろした。
「リーナ?」
降ろされたまま、身じろぎもせず座っているアンナリーナ。
その目は虚ろで、目の前の自分を写していない。
「一体、どうした? リーナ??」
その華奢な肩を掴み、力一杯揺さぶっても、アンナリーナはされるがまま揺れていた。
その場が混乱する中、ホールの受付に近づいた彼が叫ぶように言う。
「テオドール殿を探している。
火急の要件だ! 一刻も早く連絡をつけたい」
クランの中でも彼の事を知っている数少ないものは瞬時に、彼の主人の小さな薬師絡みだと気づいて近づいてくる。
「テオドールは今ギルドに行っている。すぐに使いを出すから待っていてくれ!」
すでに、その言葉を待たずに飛び出して行ったものもいる。
「何事だ?!」
血相を変えて飛び込んできたテオドールが、イジに向かう。
その場で話すのをためらったイジに目配せされて、2人は階段を駆け上がっていく。
そして、テオドールの部屋に入り、鍵をかける。
「お前がこの部屋から出るなんざ、緊急以外のなにものでもないな。
一体どうした? リーナに何かあったな?」
「師匠、俺ら従魔では、どうしたらいいのかわからない。
どうか手を貸して欲しい」
もちろん、テオドールに否やはない。
「もちろんだ。
だがその前に、何があったのか教えて欲しい」
イジは自分が見聞きした事と、ナビから聞いた事を丁寧に説明した。
するとテオドールの顔つきがどんどん歪んでいく。
以前からリーナより、彼女が想いを寄せる男がいるという事を聞いていた。
そして、今は離れているが春には合流して一緒に暮らすことも。
今回、急に入学することになったが、テントで繋ぐか、転移点を置くなどして、何とかするのだと思っていた。
それが……
「ガキが!」
吐き捨てるように呟いた言葉に、応えるものはいない。
リーナがちらりと漏らしたところによると、相手の男はまだ10代だという。
奴とは、乗り合い馬車の護衛と客として知り合い、お互いに想いを膨らませた。
リーナが初めて冒険者登録をするために、この国に来たとき同行を熱望したそうだが、地盤も何もない状況での同棲は拙いだろうという事で、春まで別行動になったと聞いている。
その僅かな間も耐えられなかったのか……?
同じ男だから、その生理は理解出来る。だが、好いた女がいるのだ。
どうして我慢出来なかったのか。
これが若さだと言うなら、愚か以外の何者でもない。
そしてこれはおそらく、相手の女に誑かされた可能性が高いだろう。
イジが他の従魔から聞いたところによると、リーナは離れて暮らす前、その身を案じてかなりの数の魔導具や、武器や防具を渡していたという。
思うにそれは、ずいぶんな過剰性能だったのだろう。
そんな貴重な品々を持つその男に、すり寄ってくる女も少なからずいただろう。
「本当に馬鹿なガキだ」
リーナとは望めない秘め事を、豊満な身体の女に溺れ、孕ませた。
「最低だ……」
「師匠?」
2人はテントに入り、イジがツリーハウスに向かっていく。
すぐにアンナリーナを抱いて戻ってきて、そっとベッドに降ろした。
「リーナ?」
降ろされたまま、身じろぎもせず座っているアンナリーナ。
その目は虚ろで、目の前の自分を写していない。
「一体、どうした? リーナ??」
その華奢な肩を掴み、力一杯揺さぶっても、アンナリーナはされるがまま揺れていた。
6
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
留学してたら、愚昧がやらかした件。
庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。
R−15は基本です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる