魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第三章

88『洞窟の骸骨』

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 何十年、いや何百年経っているのだろう……

「たったひとりで、こんなところにずっと……寂しかったでしょうね」

 俯いた骸骨が頷いたように感じた。

「ひとりっきりで最期を迎えた?
 それとも誰か看取る人がいたのかしら……?」

 アンナリーナは傍に跪いた。
 側に残る遺品は、その年月の長さを表すようにボロボロなものが多い。
 たったひとつ、往時の姿を遺していたのはミスリル製の剣とその鞘だけだ。
 あとの衣類はもう原型を留めず糸屑の塊のようになっているし、アイテムバッグだったらしきものもあるが、はっきり言って触れるのをためらう状態だ。
 そんななかアンナリーナは、わずかに布を纏った腕の骨に触れる。

「安らかに眠っているあなたを起こしてしまったら……怒るかしら?
 でも、お友だちになって欲しいな」

 アンナリーナは、どうするつもりか?と目で問いかけてくるセトとイジに何も言わず、アイテムバッグから大きな布を取り出した。

「イジ、この人を連れて帰ります。
 壊さないように、そっとこの布に横たえてあげて」

 イジが、これ以上ないくらいに丁寧な手つきで布に移し、抱えやすいように包む。
 アンナリーナは、骸骨を取り除いた場所から、何ひとつ漏らさないように遺品を取り上げた。
 最後に剣を持ち、立ち上がる。

「ここに転移点を置いて、ツリーハウスに転移します」



「主人様、この骸骨さんをどうなさるおつもりですか?」

 ナビが心配そうに聞いてくる。
 だが半ば、答えを予想しているようだが。

「うん、今まで手をつけていなかった【死霊魔法】を使ってみようと思うの。倫理的に忌避されるかもしれない……本人にも嫌がられるかもしれないけど」

「わかりました。
 私も出来る限りお手伝いします」


 採取を途中で切り上げてきたので、午後いっぱい時間がある。
 骸骨……何百年も前の人の遺骸を、アンナリーナは調薬室の奥の大テーブルに置いた。
 そして書庫に向かう。
【死霊魔法】のスキルがあるので、漠然とだがスケルトンに命……人の手による仮初めの命だが、与え方は分かっている。
 だがアンナリーナは万全を期し、加えてオプションもつけたいと思っていた。

 書棚から【死霊魔法】について記された本を数冊抜き出し、机に向かう。
 禁忌とされた【死霊魔法】について書かれた本は少ない。
 その数少ないものを確かめるようにページをめくり、所々の呪文を書き写していった。

「やっぱり肉体を再生するのは難しいみたいね……
 ん~せっかく蘇るのだから飲食出来るようにしてあげたいし」

「元々【死霊魔法】は命失ったものを使役するための魔法です。
 それらは意思を持たず、主人の意のままに動く傀儡に過ぎません」

「そんなのは嫌なのよ。
 私はあの骸骨さんと、みんなと同じように接したい」

「主人様には、何かお考えがあるのですね?」

「そうだけどね」

 すべてが上手くいくとは限らない。
 これは賭けなのだ。

「うん、これでなんとかなるかもしれない。ナビ、やるよ」


 もしもの時の為にイジだけを残して、あとの者はすべて室外へ。
 そして鍵をかける。
 結界も念入りにかけた。

 座った姿勢のまま、横臥した骸骨からはわずかに残っていた衣類の残骸も取り払われ、汚れもきれいに払われていた。

「では、いくよ」

 ゆっくりと唱えられていく呪文。
 それと共に込められていく魔力は、ツリーハウス自体が震えるほどの濃さだった。
 アンナリーナの額から汗が滴り落ちる。

 永遠とも思われるような時が過ぎ去り、淡く光った後、骸骨……スケルトンが動きだした。
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