魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

文字の大きさ
228 / 577
第三章

121『串カツ』

しおりを挟む
 ボリスが手綱を引いて、ようやく止まった時には、男は素早く馬車の方に回り込んできて、戸を激しくノックしてきた。

「また君か。いい加減にしてくれたまえ」

 改めて戸に鍵をかけ、窓から頭だけ出して迷惑そうな顔を見せているのはダージェ、アンナリーナはその後ろに控えていた。

「改めて、昨日も言ったが俺はお買い得だぜ。
 是非、是非連れて行ってくれ」

 昨日とは違って、外套の下には軽鎧と剣帯、そして肩には荷物袋を担いでいる。

「昨日も言ったろう?私には君を雇う気は無いのだと。
 そもそも大前提なのだが、どこの誰かわからない君をこのチームに入れる気はない。
 それに君はわかっているのかね?
 町の外でこのように馬車を止めると言う事は、盗賊ととられて……一閃に斬り捨てられても文句は言えないのだぞ。
 ボリス、出してくれ」

 御者台で馬に鞭を入れる音がして、馬車が動き出す。
 今度は邪魔されないようにテオドールとイジが殺気のこもった視線で制して、アルゴを置き去りにし、走り去って行く。

「くそっ、覚えてろよ」

 虚しい言葉が車輪の音に消えていく。


「もう一回くらい……ありそうですね」

 むっつりと、腕組みをして前を睨みつけるダージェに、アンナリーナが話しかける。

「今夜は山中での野営ですね?
 少し気をつけた方がいいかも……ですね」

「リーナちゃん?」

「今夜からは少し派手に野営しましょうか。


 今更だが、結界内からは意識しない限り音や臭いは漏れない。
 隠蔽しない限りは中は丸見えだが声は聞こえないのだ。
 だが中からは外の音が聞こえる。
 さらにアンナリーナの探査で外の動きはお見通しなのだ。

 このあたりの中継地は、隣接する森を切り開いて空き地を作り、野外用の竃や、馬繋場が設置されている程度の小規模な場所だ。
 そこでいつものように馬車から馬たちを外し、ボリスとテオドールが世話を始める。
 イジはまた今夜見張りについてもらうので、一旦休ませるためにツリーハウスに返した。
 馬車を囲むようにテント2つと食事の為のテーブルセットを設置して、大きめの結界を張った。
 所々に携帯用魔導ストーブを置いて暖をとり、ボードゲーム用のテーブルも出した。
 今はそこでダージェがいつものパズルをしている。
 アンナリーナはテントを出入りしながら夕食の準備を始めていた。

「今日は串カツです!」

 ツリーハウスのキッチンで揚げたものを運んで来るだけ。
 スープはシンプルなコンソメスープを簡易魔導コンロにかけてある。
 サラダはたっぷりのスプラウトにオレンジ仕立てのドレッシング。
 それと、アボカドとオニオンスライスのサラダ。
 パンは今夜はベーグルを用意した。

「今夜は【串カツ】ですよ。
 お肉はたっぷり用意しました」

 オークの肉と玉ねぎを交互に刺したもの。ミノタウロスと玉ねぎのもの。
 その他の海老や野菜は【異世界買物】で串カツセットを購入した。

 まるで宴会のようなノリで、さも見せつけるように夕食が始まり、ビールがどんどん開けられていく。

「で、リーナ……奴らは寄ってきてるのか?」

「ん~ かなり遠くで動いているようなんだけど、今はあのアルゴってひとがのぞいてるだけ」

 アンナリーナたちは、獲物をおびき寄せるために普段より明るく振舞っていた。

しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ連載中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

婚約者を姉に奪われ、婚約破棄されたエリーゼは、王子殿下に国外追放されて捨てられた先は、なんと魔獣がいる森。そこから大逆転するしかない?怒りの

山田 バルス
ファンタジー
王宮の広間は、冷え切った空気に満ちていた。  玉座の前にひとり、少女が|跪い《ひざまず》ていた。  エリーゼ=アルセリア。  目の前に立つのは、王国第一王子、シャルル=レインハルト。 「─エリーゼ=アルセリア。貴様との婚約は、ここに破棄する」 「……なぜ、ですか……?」  声が震える。  彼女の問いに、王子は冷然と答えた。 「貴様が、カリーナ嬢をいじめたからだ」 「そ、そんな……! 私が、姉様を、いじめた……?」 「カリーナ嬢からすべて聞いている。お前は陰湿な手段で彼女を苦しめ、王家の威信をも|貶めた《おとし》さらに、王家に対する謀反を企てているとか」  広間にざわめきが広がる。  ──すべて、仕組まれていたのだ。 「私は、姉様にも王家にも……そんなこと……していません……!」  必死に訴えるエリーゼの声は、虚しく広間に消えた。 「黙れ!」  シャルルの一喝が、広間に響き渡る。 「貴様のような下劣な女を、王家に迎え入れるわけにはいかぬ」  広間は、再び深い静寂に沈んだ。 「よって、貴様との婚約は破棄。さらに──」  王子は、無慈悲に言葉を重ねた。 「国外追放を命じる」  その宣告に、エリーゼの膝が崩れた。 「そ、そんな……!」  桃色の髪が広間に広がる。  必死にすがろうとするも、誰も助けようとはしなかった。 「王の不在時に|謀反《むほん》を企てる不届き者など不要。王国のためにもな」  シャルルの隣で、カリーナがくすりと笑った。  まるで、エリーゼの絶望を甘美な蜜のように味わうかのように。  なぜ。  なぜ、こんなことに──。  エリーゼは、震える指で自らの胸を掴む。  彼女はただ、幼い頃から姉に憧れ、姉に尽くし、姉を支えようとしていただけだったのに。  それが裏切りで返され、今、すべてを失おうとしている。 兵士たちが進み出る。  無骨な手で、エリーゼの両手を後ろ手に縛り上げた。 「離して、ください……っ」  必死に抵抗するも、力は弱い。。  誰も助けない。エリーゼは、見た。  カリーナが、微笑みながらシャルルに腕を絡め、勝者の顔でこちらを見下ろしているのを。  ──すべては、最初から、こうなるよう仕組まれていたのだ。  重い扉が開かれる。

留学してたら、愚昧がやらかした件。

庭にハニワ
ファンタジー
バカだアホだ、と思っちゃいたが、本当に愚かしい妹。老害と化した祖父母に甘やかし放題されて、聖女気取りで日々暮らしてるらしい。どうしてくれよう……。 R−15は基本です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...