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第四章
38『焼肉丼っ!』
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ノームと言う魔獣は、場所によっては亜人(この世界ではドアーフやエルフがそれにあたる)に分類される生物で、元々は土霊から派生したと言われている。
彼らも人に混じって暮らす事がないわけではないが、元々戦闘能力を持たない弱い種族のため、滅多に見ない存在だった。
それはノームのあまりにも脆弱な見た目からもわかる通り、身長はアンナリーナよりも低い1mそこそこ、手足はひょろりと細長く、とても得物を持てるとは思えないが、アンソニーは包丁の使い方だけは絶品であった。
そのアンソニーがアンナリーナの前に姿を現した。
以前はノームらしく、黒髪黒目でベージュの肌だったのが、今は身長からして2m近く、鈍色の髪に山鳩色の瞳、褐色の肌をコックコートで包み、髪は綺麗に撫で付けられて首の後ろでまとめられている。
アンソニー……彼はアンナリーナに体力値、魔力値共に供与され【トロール】に進化していたのだ。
「主人様の差配通り、漬け込んでおいたミノタウロス肉、持って参りました。あと、塩胡椒で食べられるよう、ロースの霜降りの按配のよい部位を取り分けてあります」
「ありがとう。
皆で焼いて食べようか」
小さな村の宿屋だが土地だけはたっぷりある。
厩と隣り合った駐馬車場に、今宵は2台……いや3台の馬車が停められていた。
その前で今、焼肉パーティが行われている。
今日の肉はミノタウロス、それとアンナリーナの秘蔵のエイケナール産ウインナーだ。
焼き上がった肉を、ふんだんに用意されたサニーレタスに包み、食べる。
今夜は【異世界買物】で買ったキムチも共に包んで、アンナリーナは舌鼓を打った。
「キムチ久しぶり~ 美味いっ!!」
「ご主人様、これは何と言うか……辛いのに癖になる味ですな」
「白ご飯が欲しい……」
「そう思って用意してあります。
多分 “ ドンブリ ”にして食されると思って炊いておきました」
素早く動いたアンソニーが、魔導炊飯器のまま、丼鉢や焼肉のタレなどと一緒に持ってきた。
まずはご飯、炊きたてのご飯をよそってアンナリーナに渡した。
「う~ 夢にまで見た、キムチとご飯。いっただきま~す!」
スーパーなどで売っている、有名メーカーのキムチ。
アンナリーナはこの辛さの中に甘さがあるキムチが大好きだった。
まさか今世でまた味わえるとは……目尻に涙が滲む。
「さて、今度は焼肉ものせるよ」
程よく焼けたカルビ部位をご飯にのせて、タレをかける。
そしてキムチをのせ、白髪ねぎをのせて出来上がり。
「あああ! 野菜のっけるの、忘れた~ もう、いいか」
アイテムバッグから、マイ箸を取り出して、食べる。
「あ~ 幸せ……」
セトやイジも真似をして焼肉丼に舌鼓を打ち、テオドールを除いた家族全員がなごんでいた時、それを邪魔するものが現れた。
「何と香ばしい匂いなんだ」
宿屋の母屋の方から現れたのは、タイニスと従者の男だ。
「タイニスさん、どうかなさいました?」
それとなくアンナリーナを庇うように立つのはアラーニェだ。
「いや、あなたと少々お話したいことがあって」
「申し訳ないですが、一応テオドールを通してもらえませんか?」
食事を邪魔されて、アンナリーナは機嫌が悪い。
彼らも人に混じって暮らす事がないわけではないが、元々戦闘能力を持たない弱い種族のため、滅多に見ない存在だった。
それはノームのあまりにも脆弱な見た目からもわかる通り、身長はアンナリーナよりも低い1mそこそこ、手足はひょろりと細長く、とても得物を持てるとは思えないが、アンソニーは包丁の使い方だけは絶品であった。
そのアンソニーがアンナリーナの前に姿を現した。
以前はノームらしく、黒髪黒目でベージュの肌だったのが、今は身長からして2m近く、鈍色の髪に山鳩色の瞳、褐色の肌をコックコートで包み、髪は綺麗に撫で付けられて首の後ろでまとめられている。
アンソニー……彼はアンナリーナに体力値、魔力値共に供与され【トロール】に進化していたのだ。
「主人様の差配通り、漬け込んでおいたミノタウロス肉、持って参りました。あと、塩胡椒で食べられるよう、ロースの霜降りの按配のよい部位を取り分けてあります」
「ありがとう。
皆で焼いて食べようか」
小さな村の宿屋だが土地だけはたっぷりある。
厩と隣り合った駐馬車場に、今宵は2台……いや3台の馬車が停められていた。
その前で今、焼肉パーティが行われている。
今日の肉はミノタウロス、それとアンナリーナの秘蔵のエイケナール産ウインナーだ。
焼き上がった肉を、ふんだんに用意されたサニーレタスに包み、食べる。
今夜は【異世界買物】で買ったキムチも共に包んで、アンナリーナは舌鼓を打った。
「キムチ久しぶり~ 美味いっ!!」
「ご主人様、これは何と言うか……辛いのに癖になる味ですな」
「白ご飯が欲しい……」
「そう思って用意してあります。
多分 “ ドンブリ ”にして食されると思って炊いておきました」
素早く動いたアンソニーが、魔導炊飯器のまま、丼鉢や焼肉のタレなどと一緒に持ってきた。
まずはご飯、炊きたてのご飯をよそってアンナリーナに渡した。
「う~ 夢にまで見た、キムチとご飯。いっただきま~す!」
スーパーなどで売っている、有名メーカーのキムチ。
アンナリーナはこの辛さの中に甘さがあるキムチが大好きだった。
まさか今世でまた味わえるとは……目尻に涙が滲む。
「さて、今度は焼肉ものせるよ」
程よく焼けたカルビ部位をご飯にのせて、タレをかける。
そしてキムチをのせ、白髪ねぎをのせて出来上がり。
「あああ! 野菜のっけるの、忘れた~ もう、いいか」
アイテムバッグから、マイ箸を取り出して、食べる。
「あ~ 幸せ……」
セトやイジも真似をして焼肉丼に舌鼓を打ち、テオドールを除いた家族全員がなごんでいた時、それを邪魔するものが現れた。
「何と香ばしい匂いなんだ」
宿屋の母屋の方から現れたのは、タイニスと従者の男だ。
「タイニスさん、どうかなさいました?」
それとなくアンナリーナを庇うように立つのはアラーニェだ。
「いや、あなたと少々お話したいことがあって」
「申し訳ないですが、一応テオドールを通してもらえませんか?」
食事を邪魔されて、アンナリーナは機嫌が悪い。
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