魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

67『魅了への対策』

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 大公は自分の掌に乗せられた、薄い水晶のような板状の護符とアンナリーナを交互に見比べた。

「魅了もち……?」

 衝撃のあまり言葉の出ない大公に変わって、今までさほど発言をしなかったサバベント侯爵が口を開いた。

「はい、あのカテレイン様?
 魅了のスキルを持ってらっしゃいますね。【鑑定】の上位魔法【解析】で視たので間違いありません」

 我に返った男たちの間から呻き声のようなものが聞こえてくる。
 大公妃も扇で口許を隠しながら、目を瞠いていた。
 さもあらん、この世界では魅了もちは超危険人物なのだ。
 対象の人間の意思に関わりなく、その人間の感情すべてがその魅了もちに向いてしまう。
 その対象が一国の国王で、寵姫が魅了魔法で絡め取っているという事の重要性は、ここに顔を揃えているものたちにも重々承知していた。

「その護符を握り込んで頂き、真名を言っていただければ、解除は成立します。同時に魅了対抗も発動しますので陛下が惑わされる事はなくなるでしょう」

「何という事だ……」

 両手で顔を覆い俯く公爵、そしてこの事の重大さに慄く大公。
 国王とカテレインが知り合ったのは、2人が学院に在学中だった、当時王太子だったライオネルが17才、カテレインが15才の時だ。それから約20年の間、ライオネルは他の女に見向きもせず、カテレインだけを側に置いてきたのだ。

「この護符が発動すれば、すぐに効果が現れます。
 ……どうなるか、ちょっと楽しみです」

 うふふ、と笑うアンナリーナにエレアント公爵などは取りすがりたくなるほどだ。

「そうだ! 公爵様。
 少しお話を聞きたいのでお時間を頂きたいのです。ユングクヴィスト様もご一緒にお願いします」

「ここでは駄目なのかね?」

「ん~ 特定の方の、かなりプライベートなお話になるのです。
 ちょっと、問題が……」

「かまわないよ。
 大公閣下と情報の共有が出来る方が良いからね」

「わかりました。では……」

 アンナリーナはこの夜、ダンスを踊ることは無かった。



 翌日、ユングクヴィストの手から例の護符が国王に渡された。
 新しく開発された、毒の絶対対抗の護符と聞き、国王は目を輝かせる。

「これを掌に握り込んで、真名を仰って下さい。掌に吸い込まれたのちに発動致します」

 早速国王はユングクヴィストの張った、防音結界の中で自分の真名を唱えた。と、同時に掌の中にあったはずの護符の感触が消え、視界が明確になったように感じる。

「何だ、これは?」

「護符の効果が発動致しました。
 これで陛下を長年煩わせていた問題が解決致します」


 そこに突然、何の先触れもなく自ら扉を開けてカテレインが飛び込んできた。
 国王の眉が釣り上がる。

「勝手に後宮を出るのではないと、いつも言っているだろう?!
 王宮にはルールがあるのだ。
 最低限のそれも守れないようなら、私にも考えがあるぞ!」

 良人の、いつになく厳しい様子に驚いたカテレインだが、大公たち臣下の前だから格好をつけていると思ったようだ。

「ライオネル、昨夜の約束を忘れたの? 宝石商はどこかしら」

 国王は目の前のカテレインの姿、声、その言葉すべてに嫌悪感を憶えて、怒りがこみ上げてきた。

「とにかく、ここから出て行け!
 近衛兵!!」

 ピンク色の髪をした、30半ばにもなろうというのにまるで10代のように若作りした女。
 貴婦人としての最低限のマナーも教養もない、年齢による容色劣化の著しいカテレインを、魅了の効果のなくなった国王が寵愛するはずもなく……
 それどころか、学院で初めて顔を合わせた時の嫌悪感が甦る。

「今まで一体……何だったんだ?」

「カテレイン殿は【魅了もち】だったのです」

「左様、実は昨夜の舞踏会で我が弟子リーナが看破致しましてな。
 すぐに対処するための護符を寄越して参りましたのです」

 国王はどうにか、やっと言葉を搾り出す。

「一体、いつから……」

「おそらく学院で知り合われた頃からと」

 大公の言葉に唇を噛み締めた王は、その拳をテーブルに叩きつけた。

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