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第四章

137『オッケル村』

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 街道ぞいに点在する村々は、乗り合い馬車の駅にもなっていて、その馬車に乗っている乗客のための宿もあり、辺境の村とは思えないほど拓けていた。
 これは、この街道が南部の港と王都をつなぐ交通の要であった事が重要であり、アンナリーナが今まで旅をしてきた中で、一番充実していた。


 キールストレッド帝国、オッケル村。
 宿が一軒、そこには規模が小さいながらも冒険者ギルドも併設されていた。
 村内には様々な畑が開墾されていて、収穫物もバラエティに富んでいる。
 それを王都に運ぶのは、乗り合い馬車が担っていて、運搬代の節約にもなっていた。

 そんな村に、ある日見慣れない二人組がやって来た。

「こんにちは」

 一応、村の入り口に立つ自警団の男に挨拶したのは、小柄な少女だった。
 そしてその後ろに、少女を守るようにして立つのは、身長2mを超える大男だ。

「ようこそ、オッケル村へ。
 あんたたちは乗り合い馬車に乗るために来たのかい?」

「はい、次はいつになりますか?」

「乗り合い馬車は一日置きに運行しているんだ。
 あんたたちは王都方面に行くのかね?」

「はい」

 アンナリーナは頷いた。

「それなら、馬車は今日の夕方に着くが、出発は明朝だ。
 ただ、満席の場合は待ってもらうことになるので、今日のうちに申し込んでおくことをお勧めするよ。
 駅はあそこだ」

 村の入り口を守る男は、親切に指差して教えてくれた。
 そこには木造だが駅舎があり、屋根付きの停馬車場もある。
 付属の厩もあり、アンナリーナが今まで見てきた乗り合い馬車の駅の中では、大都市に匹敵していた。

「ありがとうございます。早速行ってみますね」


 驚いたことに駅舎には、常駐の係員がいて、アンナリーナたちの予約を取ってくれた。
 ただ、先ほども言われたことだが定員オーバーの場合は次の馬車まで待つことになる旨、念を押された。


「熊さん、今日はここの宿に泊まってゆっくりしようか。
 色々なお店もあるみたいだし、とりあえず宿に行こう?」

「そうだな。リーナの好きな買い物も出来そうだな。
 しかしこの村は……
 この国ではどこの村でもこんななのか?」

 旅慣れた冒険者であるテオドールも驚くほどの、乗り合い馬車駅の充実ぶりだ。

 次にアンナリーナたちがやって来たのは宿屋だった。
 そこは村には見合わない規模の建物で、思わずアンナリーナは二度見したが、それは中に入って納得した。

「ああ、なるほど」

 宿の受付のとなりに別のカウンターがあって、そこには万国共通であるギルドのマークが掲げられている。

「いらっしゃい!
 泊まりかい? それともギルドの方かい?」

 カウンターで書き物をしていた、体格のよい女将が声をかけてくる。

「こんにちは。泊まりでお願いします」

 受付に近づいていったアンナリーナたちは、この宿で一番良い部屋を取り、カモフラージュのための荷物を置いて、村の散策に出る事にした。

 階段を降りながら玄関ホールを見回すと、先ほどは目につかなかった依頼票を貼ったボードが目に入った。

「あれ、熊さん、あんな所に依頼票があるよ。ちょっと見て行こうよ」

 さほど大きなボードではないが、依頼票はそこそこ貼られている。
 そこにはお馴染みのゴブリンの討伐や素材の収集、盗賊の討伐なんてのもある。
 そして素材は随時買取りと、大きく書かれていた。

「ん~、いくつか在庫があるものもあるね。聞いてみようか」

 ギルドの受付の方に行くと、女将がスライドするようにやって来る。

「ようこそ、オッケル村ギルド支部へ。依頼を受けてくれるのかい?」

「あそこにある素材の収集は、討伐も込みですか?」

「いいや、そいつは別だ。
 その素材はどこで採ってきてもいいんだ」

「では、いくつかお助けしましょうか」

 アンナリーナは、受付が古い順から依頼票を剥がしていった。

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