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第四章
155『冒険者 ジル・アルバスタ』
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アンナリーナは、傷つき横たわる者たちの中から一番傷が浅い、見た目冒険者の彼の傍に座り込み【回復】を唱えた。
当初、彼らが目覚めるのを待ち、それぞれの希望を聞いてから治療の方針を立てる予定であったが、こうなれば仕方がない。
一体、ここで何があったのか。
恐らく、丸一日ほど時間が経っているだろう襲撃の様子を聞いて、対策を立てねばならない。
「うぅ……」
しばし、考えを飛ばしていたアンナリーナの前で、冒険者らしい男が目を覚ましつつある。
「もうし、もう大丈夫ですよ」
冷たい水で濡らし固く絞ったタオルで額を拭う。
診察に邪魔だった皮鎧は外され、衣服は緩められている。
「あ……あぁ?
ここは……? 俺は一体……はっ!」
いきなり身を起こした男が警戒の態勢をとる。
自身の得物である長剣を探して目を彷徨わせている。
「お兄さん、落ち着いて。
私は、たまたま通りかかった旅人でアンナリーナと言います。
お兄さん……一体ここで何があったのです?」
一瞬放心した表情が見る見る強張っていき、蒼白になった男の体が震えている。
「お兄さん……もう大丈夫だよ。
さあ、これを飲んで」
アラーニェから渡された紅茶にはたっぷりと砂糖が入っている。
湯気の立つカップを手渡され、体が欲する本能から口をつけた男は、血を失い冷え切った体に沁み入る紅茶にため息をついた。
「もし、食べられそうなら持って来させるよ。どう? 何が食べたい?
お兄さんは血を失っているから、食べた方がいいのだけど」
男はここで、初めて目の前の少女を見た。
まだ、成人しているかどうか、かなり幼い少女で、特別美形ではないが、不思議な雰囲気の少女だ。
その少女がゆっくりと、そして一言一言をはっきりと、男に話しかけてくる。
不思議と不安を感じさせないその言葉は、男の心に優しく響いてきた。
「いや、今はこれで十分だ。
かたじけない」
「そう、ではお聞きしたい事があるの。
……ここで、何があったの?」
怪我のショックで一時的な記憶の混濁があったのだろう。
ひくりと震えた体が瘧の発作のように痙攣し、頭を抱えて俯いてしまった。
恐らく、相当ショックな出来事だったのだろう。
アンナリーナは、ここは無理に聞き出そうとせずに一旦時間を置くことにした。
そして今度はブランデーがたっぷりと入った紅茶を飲むように促した。
酒精が体に回って血液の循環が良くなったのだろう。
先程からの震えは収まり、恐怖に見開かれた目も落ち着いてきている。
酩酊状態ではないがアルコールがリラックスを促したのだろう。
幾分落ち着いた男の手が、それでも震えていた。
そこはやはり冒険者だと言う事なのか。
しばらくすると目に見えて落ち着いてきた男が、カップに残っていた紅茶を一気飲みして、アンナリーナに向き合った。
「助けてくれてありがとう。
俺は【アルゲオン王国】の冒険者ギルド所属、ジル・アルバスタだ」
「私は【ハルメトリア国立魔法学院】の学生でリーナと言います。
ここにいるのは召喚獣のアラーニェ、外には仲間である冒険者と召喚獣たちがいます」
「重ね重ね、助けてくれてありがとう。恩に着る」
「……あなたを含めて5人しか助けられなかったの。
ねぇ、何があったの?」
途端に口が重くなったジルだが、何度も口を開けては閉じ、口を開けては閉じて、ようやく話し始めた。
「俺たちは南部の港湾都市アシードから隊商の護衛としてここまでやってきた。
そしたらこの先のどこかで街道が封鎖されていて、ここらの村はどこも旅人でいっぱいで……うちの一行はあそこで野営するしかなかったんだ」
「それはいつ?恐らく昨夜だよね?」
アンナリーナはこの世界で言う月と曜日を引用して今日が何日なのか言ってみた。
「ああ、昨夜……になるんだな」
「それで?」
「盗賊団に襲われた」
当初、彼らが目覚めるのを待ち、それぞれの希望を聞いてから治療の方針を立てる予定であったが、こうなれば仕方がない。
一体、ここで何があったのか。
恐らく、丸一日ほど時間が経っているだろう襲撃の様子を聞いて、対策を立てねばならない。
「うぅ……」
しばし、考えを飛ばしていたアンナリーナの前で、冒険者らしい男が目を覚ましつつある。
「もうし、もう大丈夫ですよ」
冷たい水で濡らし固く絞ったタオルで額を拭う。
診察に邪魔だった皮鎧は外され、衣服は緩められている。
「あ……あぁ?
ここは……? 俺は一体……はっ!」
いきなり身を起こした男が警戒の態勢をとる。
自身の得物である長剣を探して目を彷徨わせている。
「お兄さん、落ち着いて。
私は、たまたま通りかかった旅人でアンナリーナと言います。
お兄さん……一体ここで何があったのです?」
一瞬放心した表情が見る見る強張っていき、蒼白になった男の体が震えている。
「お兄さん……もう大丈夫だよ。
さあ、これを飲んで」
アラーニェから渡された紅茶にはたっぷりと砂糖が入っている。
湯気の立つカップを手渡され、体が欲する本能から口をつけた男は、血を失い冷え切った体に沁み入る紅茶にため息をついた。
「もし、食べられそうなら持って来させるよ。どう? 何が食べたい?
お兄さんは血を失っているから、食べた方がいいのだけど」
男はここで、初めて目の前の少女を見た。
まだ、成人しているかどうか、かなり幼い少女で、特別美形ではないが、不思議な雰囲気の少女だ。
その少女がゆっくりと、そして一言一言をはっきりと、男に話しかけてくる。
不思議と不安を感じさせないその言葉は、男の心に優しく響いてきた。
「いや、今はこれで十分だ。
かたじけない」
「そう、ではお聞きしたい事があるの。
……ここで、何があったの?」
怪我のショックで一時的な記憶の混濁があったのだろう。
ひくりと震えた体が瘧の発作のように痙攣し、頭を抱えて俯いてしまった。
恐らく、相当ショックな出来事だったのだろう。
アンナリーナは、ここは無理に聞き出そうとせずに一旦時間を置くことにした。
そして今度はブランデーがたっぷりと入った紅茶を飲むように促した。
酒精が体に回って血液の循環が良くなったのだろう。
先程からの震えは収まり、恐怖に見開かれた目も落ち着いてきている。
酩酊状態ではないがアルコールがリラックスを促したのだろう。
幾分落ち着いた男の手が、それでも震えていた。
そこはやはり冒険者だと言う事なのか。
しばらくすると目に見えて落ち着いてきた男が、カップに残っていた紅茶を一気飲みして、アンナリーナに向き合った。
「助けてくれてありがとう。
俺は【アルゲオン王国】の冒険者ギルド所属、ジル・アルバスタだ」
「私は【ハルメトリア国立魔法学院】の学生でリーナと言います。
ここにいるのは召喚獣のアラーニェ、外には仲間である冒険者と召喚獣たちがいます」
「重ね重ね、助けてくれてありがとう。恩に着る」
「……あなたを含めて5人しか助けられなかったの。
ねぇ、何があったの?」
途端に口が重くなったジルだが、何度も口を開けては閉じ、口を開けては閉じて、ようやく話し始めた。
「俺たちは南部の港湾都市アシードから隊商の護衛としてここまでやってきた。
そしたらこの先のどこかで街道が封鎖されていて、ここらの村はどこも旅人でいっぱいで……うちの一行はあそこで野営するしかなかったんだ」
「それはいつ?恐らく昨夜だよね?」
アンナリーナはこの世界で言う月と曜日を引用して今日が何日なのか言ってみた。
「ああ、昨夜……になるんだな」
「それで?」
「盗賊団に襲われた」
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