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第四章
179『焼きそば』
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今まで野営をしてきた場所は、森の中の少し開けた空き地が多かったので、今夜のこの、満天の星空を見る事は無かった。
「ふわぁ、見事だねぇ」
360度の大パノラマを見渡し、手を伸ばせば届くような星々に、しばし今の状況を忘れた。
と、香ばしい匂いとジュージューという音がアンナリーナを現実に引き戻す。さらにお腹がクーと鳴って、ようやく意識が向いた。
「リーナ! 焼けたぞ!!
味見してくれ!」
テオドールが夜店よろしく、2本のヘラを使って焼きそばを焼いていた。
その鉄板と並ぶのは色々な肉を焼く鉄板や、野外用バーベキューコンロだ。
「はーい、今行きまーす」
アンナリーナは現実に戻り、駆け出した。
ミノタウロスの厚切りステーキ、ホロホロ鳥の串無し焼き鳥、オークのピカタ、目玉の骨つきウィンナーを含むウィンナーやチョリソーが、美味しそうな焦げ目をつけて焼かれている。
そして今夜の主食は焼きそばだ。
オーソドックスな、キャベツと玉ねぎ、にんじんに薄切りハムとともに炒められた麺は【異世界買物】で買った、アンナリーナにとっては懐かしい、黄色い麺だ。
焼きそばソースは某お好みソースの姉妹品で、前世でアンナリーナが愛用していたものだ。もちろん鰹節も忘れない。
「みなさーん、お肉も焼きそばも出来上がりましたー!
順番に並んで下さいー!」
アンナリーナの声に、男たちが敏感に反応する。
各自、皿を持って思い思いのところに並んで肉を給餌してもらっている。
早速ステーキに齧りついたダンが言葉にならない嬉声を上げていた。
「焼きそば、最高ー!」
キャベツも玉ねぎも収穫すぐにインベントリに保存してあるため、特に玉ねぎは甘くて美味しい。
キャベツも火が通っていて、それでいてシャキシャキ感が残る絶妙な焼き加減だ。
麺は一度湯をかけてほぐし、完全に水分を切らずに蒸し焼きにした。
本来はそのまま食べるのだが、アンナリーナはそこに、お好み焼きに入れるイカ天を砕いたものを振りかけ、その上にお好みソースとマヨネーズを足して舌鼓を打つ。
完全にカロリーオーバーだが、今世のこの身体は太りにくいようだ。
おそらく魔力が関わっているのだろう。
「みなさーん、じゃんじゃん食べて下さいねー」
今夜は、明日からの士気を高めるためビールを飲むことが許されている。
もちろん常識の範囲内だが、彼らが大に盛り上がったのは言うまでもない。
その夜の見張りは従魔たちが行う事になっていて、一行が眠りについた頃にアンナリーナは結界を強めて眠りについた。
「リーナ?」
ツリーハウスの自室で、入浴をすませたアンナリーナがぐったりしている。
「リーナ、どうした?」
就寝しようと、アンナリーナを抱き上げたテオドールの眉尻が上がる。
「熱いな……これは風呂のせいじゃないだろう? いつものやつか?」
ナビからの報せで駆けつけてきたアラーニェが、作り置きされていた丸薬を用意する。
アンナリーナのこの症状は病気ではないため、薬で熱を下げるのではなく、熱を逃がす方向にもっていく。
「お熱はそれほど高くないようですね。お頭を少し冷やしましょうか」
濡れたタオルで額を冷やし、上掛けをかける。テオドールに冷たい眼差しを向けた後、一度部屋を出ていった。
「俺は今夜はソファーで寝るから、おまえもちゃんと休むんだぞ」
大きくて無骨な手が頬に触れて、そして口づけが降りてくる。
アンナリーナの唇を優しく食むように動いた唇が離れる前に、アラーニェの咳きが聞こえてきた。
「テオドール殿? お控えください」
相変わらず、アンナリーナ至上主義のアラーニェは、テオドールには辛辣だ。
「ふわぁ、見事だねぇ」
360度の大パノラマを見渡し、手を伸ばせば届くような星々に、しばし今の状況を忘れた。
と、香ばしい匂いとジュージューという音がアンナリーナを現実に引き戻す。さらにお腹がクーと鳴って、ようやく意識が向いた。
「リーナ! 焼けたぞ!!
味見してくれ!」
テオドールが夜店よろしく、2本のヘラを使って焼きそばを焼いていた。
その鉄板と並ぶのは色々な肉を焼く鉄板や、野外用バーベキューコンロだ。
「はーい、今行きまーす」
アンナリーナは現実に戻り、駆け出した。
ミノタウロスの厚切りステーキ、ホロホロ鳥の串無し焼き鳥、オークのピカタ、目玉の骨つきウィンナーを含むウィンナーやチョリソーが、美味しそうな焦げ目をつけて焼かれている。
そして今夜の主食は焼きそばだ。
オーソドックスな、キャベツと玉ねぎ、にんじんに薄切りハムとともに炒められた麺は【異世界買物】で買った、アンナリーナにとっては懐かしい、黄色い麺だ。
焼きそばソースは某お好みソースの姉妹品で、前世でアンナリーナが愛用していたものだ。もちろん鰹節も忘れない。
「みなさーん、お肉も焼きそばも出来上がりましたー!
順番に並んで下さいー!」
アンナリーナの声に、男たちが敏感に反応する。
各自、皿を持って思い思いのところに並んで肉を給餌してもらっている。
早速ステーキに齧りついたダンが言葉にならない嬉声を上げていた。
「焼きそば、最高ー!」
キャベツも玉ねぎも収穫すぐにインベントリに保存してあるため、特に玉ねぎは甘くて美味しい。
キャベツも火が通っていて、それでいてシャキシャキ感が残る絶妙な焼き加減だ。
麺は一度湯をかけてほぐし、完全に水分を切らずに蒸し焼きにした。
本来はそのまま食べるのだが、アンナリーナはそこに、お好み焼きに入れるイカ天を砕いたものを振りかけ、その上にお好みソースとマヨネーズを足して舌鼓を打つ。
完全にカロリーオーバーだが、今世のこの身体は太りにくいようだ。
おそらく魔力が関わっているのだろう。
「みなさーん、じゃんじゃん食べて下さいねー」
今夜は、明日からの士気を高めるためビールを飲むことが許されている。
もちろん常識の範囲内だが、彼らが大に盛り上がったのは言うまでもない。
その夜の見張りは従魔たちが行う事になっていて、一行が眠りについた頃にアンナリーナは結界を強めて眠りについた。
「リーナ?」
ツリーハウスの自室で、入浴をすませたアンナリーナがぐったりしている。
「リーナ、どうした?」
就寝しようと、アンナリーナを抱き上げたテオドールの眉尻が上がる。
「熱いな……これは風呂のせいじゃないだろう? いつものやつか?」
ナビからの報せで駆けつけてきたアラーニェが、作り置きされていた丸薬を用意する。
アンナリーナのこの症状は病気ではないため、薬で熱を下げるのではなく、熱を逃がす方向にもっていく。
「お熱はそれほど高くないようですね。お頭を少し冷やしましょうか」
濡れたタオルで額を冷やし、上掛けをかける。テオドールに冷たい眼差しを向けた後、一度部屋を出ていった。
「俺は今夜はソファーで寝るから、おまえもちゃんと休むんだぞ」
大きくて無骨な手が頬に触れて、そして口づけが降りてくる。
アンナリーナの唇を優しく食むように動いた唇が離れる前に、アラーニェの咳きが聞こえてきた。
「テオドール殿? お控えください」
相変わらず、アンナリーナ至上主義のアラーニェは、テオドールには辛辣だ。
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