魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

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第四章

212『出航』

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 デッキに出ているアンナリーナたちは、今出航の時を迎えていた。
 重々しい合図の鐘が鳴らされ、船が動き出す。
 この船は魔導船なので、前世のような化石燃料もましてや人力も必要としない。
 まるで風を受けたようにスルリと動き出した船は、一切の抵抗も受けず岸壁から離れていった。

「リーナ、部屋に戻ろう。
 すぐに風が強くなる……ここにいても面白い事はないぞ?」

「うん、もうちょっと」

 アンナリーナは今世はもちろん前世でも船に乗った事がない。
 公園の池にあるようなボートすらないのだ。態度には表していないが、今現在かなりはしゃいでいたのだ。
 前世でテレビなどで見た海と違って、その色は特徴的な淡藤色だ。
 これが深度を増すと紫が強くなると言う。

「不思議な色だね」

「そうか?
 俺らは、海はこんなもんだと思っているから、何とも感じないがな」

 ふたりで並んで腰掛けていて、早朝の清々しい空気の中、海の匂いが混ざっている。

「それにもっと外洋に出たら、びっくりするくらい海の色が濃くなるそうだぞ。
 俺は見たことないがな」

 テオドールの腕が腰に回され、あっという間に膝の上に持ち上げられてしまった。
 そのまま座らされ、マントで包まれる。

「海の風は冷える。
 まだしばらく見ていたいなら、このままにしていろ」

 マントの上からそろりと撫でられてビクリと震えると、テオドールが喉で笑った。


「ん?」

 テオドールに身体を凭れさせていたアンナリーナが顔を持ち上げた。

「どうした?」

 ふたりはまったりと、潮風に吹かれて寛いでいた。
 そんななかの、アンナリーナの異変だ。

「んん……誰かが私の結界に触れたね」

「船員か、メイドではないのか?」

「違うね……」

 アンナリーナはまるでもの思いにふけるように虚空を見つめ、その目に怒りを浮かべた。

「悪意のあるものが解錠しようとした。船員ならノックするはずだし、メイドなら鍵を持ってるでしょ。
 それにうちはクリーニングは要らないと言ってあるもの」

「主人、様子を見に行ってこようか?」

 アンナリーナたちの後ろに控えていたセトが初めて口を開いた。
 彼は自分たちの部屋だけでなく、もっと広い範囲で異常を感じているようだ。

「いいえ、後で何かトラブルがあった時のアリバイのために、あなたたちはここを動かないで。
 どうせ私の結界は破れないんだし……
 諦めて動き出したようね」

 アンナリーナは脳内パネルのマップ機能で、対象の動きを監視している。
 そしてセトはその他の気配を探っていた。

「ふうん、この不審者は一度二等客室に戻って、それからまたどこかに行くようね……
 ほら、動きだした」

 アンナリーナの言葉をセトが補完する。

「同じように動いているのが9人?
 いや11人か?
 ほとんどが部屋に入るのに成功しているな。そして出てきて……皆、二等客室に向かっている」

「そうね。私たちの部屋に入ろうとした不審者は、一階上の一等客室の一室に入っていったわ。
 中には……3人いるわね。
 皆、真っ赤っかよ」

 アンナリーナの悪意察知能力では対象は赤く表示される。
 これは魔獣と同じである。

「これって、ひょっとして強盗団?
 まずいんじゃない?」

 閉鎖空間での犯罪をどうすれば良いのか、アンナリーナには考えつかない。
 ただ、今アンナリーナが騒ぎ立てるのは問題あるだろう。

「今、鉢合わせするのもまずいわ。
 もう少し様子を見て、皆で船長のところに行きましょう」

 そしてアンナリーナはまた、マップに戻っていった。

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